歓迎
「あ~……キツイ」
竜一はセリュアル王国の首都グランシャリオに来ていた。
まあ、そのあたりの名称に大した意味はないので忘れてもらっても大丈夫である。
さて、最親日国ということもあって、日本語が公用語の一つでもあるわけだが、見た感じはヨーロッパ系の人も多く、別に黒髪と言うわけではないが、まあ、日本語が通じるし、通じない場合でも自動翻訳があるわけだが、当然、飛行機に乗る必要はある。
現代の飛行機はコストパフォーマンスもすごいうえに、最親日国&日本人であるリオが稼ぎまくって影響力が多い位と言うこともあり、直通で来ることはできた。
ただし、ジムに通っているとはいえ(実は通っていました。あれ?言ったことあるかな?)、普段はゲームであり、さらに言えば、そのゲームでも、長距離移動のほとんどを転移で済ませているので、『目的地までの移動でかなりの時間を使う』と言うことになれていないので、妙な気分だ。
さすがに飛行機の中では、VRでもできることに制限がある。
セキュリティ技術も、発展と言うより進化しているが、その分ハッキングやクラッキングの技術も進んでいるからだ。
それはそれで仕方がないとしても、やはり、距離は長い。
「ええと……ホテルはあっちか」
滞在費はあらかじめもらっているので(無論現金ではない)、タクシーを拾おうとした。
……言い間違えではない。
拾おうとしたのだ。
「……高級車が止まってる……」
ていうかリムジンなんだけどね!
すると、中からスキンヘッド&サングラスでスーツ姿の男が出てきた。
「糸瀬竜一様ですね」
「キャストに問題があると俺はいいたい」
スーツはいい。
だが、サングラスはいらん。あと髪もあった方がいい。少なくとも今回の状況的には。
まあ、仕方がないといえば仕方がない。
今回の場合は……。
「どうでもいいけどさ。舐めるなよ」
「!」
俺を威圧することも必要だから。
「竜一さん!こっちです」
振りむくと、セトナが慌てた様子でこちらを見ていた。
お前もリムジンかよ!
とりあえずスキンヘッドの男が伸ばしてきた手を弾いて、胸ポケットに入れている拳銃をパッと取り出して地面に落として靴で踏み抜いておいて、オマケで鳩尾に一発叩き込んでおいた。
そして、セトナのところに全力ダッシュ。
リムジンの中に駆け込んだ。
その間で銃弾を一発避けておいた。当たると痛いので。
「……」
セトナが変なものを見るような目で竜一を見ていた。
「どうした」
「いえ、まあ、その。予測できなかった私たちも悪いですけど、対応しきったあなたも十分変人ですよ」
「だろうな」
見ると、セトナのボディガードが賊?を制圧していた。
「分かっていたことではあるが、アイツら弱いな」
「分かっていたのですか?」
「人を見る目はあるからな。しかし……こんな人の多いところで何やってんだか……」
「いえ、そう言う話ではありません。仮に普通に付いて行った場合、私たちに手出しができませんから。ところで、何故分かったのですか?」
「彼女からメールが来た。『一番最初のリムジンには気を付けた方がいい気がする』ってな」
「それだけですか?」
「それだけだ。俺は桜が言ったことは絶対に疑わない」
全ての学者の意見よりも、全ての占い師の言葉よりも、竜一は桜の勘を信じているのだ。
未来で必要なことを勘と言う形で予測する。
運がいいリオも、これと同じことができないわけではない。
だがまあ、リオの方は『節理の中心地点』という、条件がそろえば必ず勝利が確定するという運命すらも味方にするエッセンススキルがあるので、これだけならリオの方が上だ。
だが、桜も予測と言う意味ではすさまじいことは事実。
というか、適当でもいいと言うのが訳の分からないところだ。
まあそれはいいか。
「……愛ですか?」
「それは八割だ」
「残りの二割は一体……」
「それは自分で考えるんだな」
そこまで教える義理はない。
まあ、そんなこともあったがホテルに到着。
「VIPルームを予約していますから、問題はないと思いますが……」
「言いたいことは分かったから言わなくていいぞ」
で、入って……。
……さすがに、王女が手配したといったホテルのVIPルームで、『自分で作った方がよさそうだ』とは言わない竜一だった。
セトナが、ホテルの設備を自慢し始めたホテルのオーナーを止めていた。
わざわざエッセンススキルを使って。
「まあとにかく……ベッドにはギアもあるし、セキュリティは保証するから」
「……」
そのギアとセキュリティすらも、と竜一は言えなくはないが、もうこれ以上言うとキリがないので何も言わないで置くことにした。
「それでは、中で待っていてください。アバターその物の外見は同じですから」
「わかった」
竜一は靴を脱いでベッドに上がる。
そして、ギアを被った。
「さて、入るとするか『ダイブイン』」
竜一はゼツヤとして、『プレシャス・コード』に入った。




