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執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?  作者: Gai


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第59話 行ってしまうのか……

「じゃあ、またね。バトムス」


「おぅ、またな。アル」


初めての実戦を終えてから更に三日後、アルフォンスは充実した休日を凄し……それでもバトムスとの別れを惜しみつつも、王都へと戻って行った。


「…………」


「なんだよ、お嬢。そんなに睨みつけてよ」


家に戻ってくると、ギデオン伯爵の娘であるルチアが待っていた。


「……あんた、アルフォンス様から……す、スカウトされたり、したんじゃないの」


ここ最近、ルチアは戦闘訓練以外の学び事を圧倒的な集中力で終わらせ、バトムスとアルフォンスの戦闘訓練に参加していた。


その間、ルチアは何度かだけアルフォンスから勝利を得ることが出来たが、大半は負けてしまい……そのアルフォンスに、バトムスは全戦全勝していた。


特別なルールなど関係無い。

やはり、目の前の男は本当に強いのだと、再認識させられた。


だからこそ、思い浮かべてしまう事がある。

バトムスは……従者候補として、スカウトされるだけの力があると。


(パーティーじゃあ、本当に……執事候補として、挨拶出来てたし)


普段から執事になる為の授業などを受けていないことは知っている。


それでも、初めて参加した社交界で見事な対応を取った。

影で努力していたのか、それともセンスだけで対応したのか……それは解らない。

ただ、あれは執事候補として合格ラインに達している対応だったと認められない程、ルチアは愚かではなかった。


「なんでそんな事を訊くんだ?」


「良いから答えなさいよ」


「ったく……別にそういうのはねぇよ」


「……嘘付いてるんじゃ、ないでしょうね」


「付いてないっての。もしかしたら、そういう気持ちがあいつにあるのかもしれねぇけど、最初にそういうつもりはないんだよなって話をしてたからな」


俺の意図を汲み取り、思っても口にしないようにしてくれている……と、バトムスは勝手に思っていた。


「…………それでも、アルフォンス様の隣にいるなら、別に良いかもって思ったんじゃないの」


何故、こんな事を訊いているのか、ルチアは自分でも解らない。

それでも……どうしてか、最後までバトムスの意見を訊こうとしていた。


「ねぇな、絶対にあり得ね。凄い光栄な事だってのは俺も解るけど、それでも王城でたかが平民の俺がアルの従者候補にでもなってみろ……アルの目が届かないところで狙われるのがオチだろ」


それはバトムスの妄想が過ぎる、とはいえない。


実際に王家が、貴族が家の中で起きた不祥事などを闇に葬ったことは何度もある。

幸いにも……現在のアブルシオ辺境伯家ではそういった争いは起きていないものの、過去には血族同士が血を流す争いが行われた。


「それに、従者候補になったらのんびり自分がやりたい事をやるって俺の夢の生活が叶えられねぇだろ」


「………………ふん、あんたらしいわね」


「そりゃどうもっておい、なんでそんな聞いたか説明ぐらい…………マジかよ。本当に何も言わず行きやがった」


バトムスとしては本当に突然の質問だったこともあり、ルチアが何故その様な質問を自分にしたのか、理由ぐらい知りたかった。


だが、ルチアは本当に理由を口にすることなく、屋敷へと戻って行ってしまった。


「バゥ?」


「よく解んね奴だよな~~~」


無理矢理訊くほどの事でもないと思い、バトムスはパーズに愚痴を零しながら家へと戻って行った。







「………………」


アルフォンスがアブルシオ辺境伯家に二度目の訪問をしてから約半年後、バトムスは八歳となり……現在非常に真剣な表情でポーションを製作していた。


そんなバトムスを見守る? 人物が二人。


一人はバトムスの錬金術に関する師である人物、エルリック・ハルタード。

見た目は非常におおらかである、優しいおじいちゃん。

種族は人族であり、既に年齢は六十を越えているものの、今も現役の錬金術師として店を構えている。


そしてもう一人の人物は、そんなエルリックの弟子であるファエリナ。

彼女の種族はエルフであり、長い耳と翡翠色の長髪と、非常に整った顔を持つ。

年齢に関しては……若い見た目を持ちながら、実はエルリックよりも上。

しかし、エルフという種族の特徴上、年齢は人族よりも圧倒的に長く、ファエリナはまだ人族でいうところの十代後半の精神年齢。


それでも、バトムスからすれば完全にお姉さんであり、姉弟子でもある。


そんな二人が見守る中……バトムスは額に大量の汗を流しながらも、一つのポーションの製作を終えた。


「ふぅーーーーーーーー……エルリック師匠。どうでしょうか」


「視させてもらうね…………うん…………うんうん。凄く良いよ、バトムス君。初級ポーションの中でも、間違いなく上位に入る質を持ってるよ」


「ぃよっしゃ!!!!!


傷を癒す液体、ポーション。

それは基本的に初級、中級、上級とランク別けされており、更にその中でも質に段階がある。


錬金術のスキルを会得すれば、大体誰でも初級のポーションを造ることは出来るが、地道に経験を重ねなければ初級の中でも質の低いポーションしか造れない。


そんな中、まだこれから絶対に連続で造れるという保証はないが、バトムスは初球の中でも上位のポーションを造ることに成功した。

それは、ここ最近久しぶりに感じた自身の成長の証でもあった。

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