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執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?  作者: Gai


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55/60

第55話 発揮出来なくて当然

「ッ!!!!!」


(ぅお!! っと。今、動きを読まれた、か?)


模擬戦を始めてから約三十分が経過。

その間、バトムスとアルフォンスは十回の模擬戦を行い、現在十一回目の模擬戦を行っている。


結果は……バトムスの十戦十勝。


王家の血筋を持つ第五王子が、領地内では一応騎士家系の近い身分を持っているとはいえ、平民の子供に全敗。

まさかの内容……ではあるものの、訓練場にいるアブルシオ辺境伯家の騎士たちは、特に驚いていなかった。


現在アルフォンスの保護者、観察者としての立場である初老執事、ゴルドも……十連敗という結果に関しては少々驚かされたものの、バトムスがアルフォンスに模擬戦で勝つ光景には大して驚いていなかった。


(普通じゃない子だとは思ってたけど、まさか……本当にここまで普通じゃないなんて)


前回アルフォンスが辺境伯家を訪れた際に同行していた女騎士、ジェナは事前にゴルドからそういう結果になると聞かされてはいたものの、実際にその光景を目のあたりにし、驚きを隠せなかった。


だが、アルフォンスも負けっぱなしでは終われず、徐々にバトムスの動きを読み始めていた。


(じゃあ、変えてみるか)


王道な動きと小手先の技術を混ぜ合わせた動きから、フットワークを多用した動きへと変化。


「よッ!!」


「っ!? くっ!!!」


戦闘スタイルの変化。

アルフォンスはアルフォンスで同世代の子供たちと比べて頭一つか二つ抜けた実力を有しているが、それでもまだ経験といった意味では色々と足りていない。


(戦闘スタイルを変えたか……本当に恐ろしい子だ。アルフォンス様と比べて、圧倒的に経験数が違う)


七歳の子供同士で、圧倒的に経験数が違うとはどういう事なのか? という疑問が湧きおこる。

だが、実際問題そうとしか答えられない。


「シッ!!」


「っ!!!!! っ……ふぅーーーー、参ったよ」


細剣でガードしなければならない状態に追い込まれ、アルフォンスが弾かれている間にバトムスは流れるように追撃を行い、心臓部に剣先を添えた。


これで、バトムスの十一戦十一勝。


「お二人とも、そろそろしっかりと休息を取った方がよろしいかと」


「解ったよ、ゴルド」


「ういっす」


水分補給を行いながら、二人はこれまでの模擬戦を振り返る。


「強いのは解ってたけど、本当に強いね」


「ありがとう。でも、それは……多分、俺が既にモンスターと戦ってるっていうのがあると思うぞ」


人間はモンスターを……もしくはある程度の戦闘力を持った人間を倒すことで、肉体や魔力量の上限を上げることが出来る。


これまでバトムスはゴブリンやホーンラビットなどの低ランクモンスターとはいえ、それなりに多くのモンスターを討伐してきた。


「モンスターとの実戦か。やっぱりというか、僕も早く経験しないとだね」


アルフォンスの言葉にゴルドとジェナは不安を含む汗が流れる。


現在のバトムスに追い付くには、それが一番であることに変わりはない。

だが、アルフォンスは第五王子。

二人がその身を心配するのも無理はない。


「既にモンスターとの戦闘経験があるバトムスから、何かアドバイスとかあるかい?」


「アドバイスかぁ……訊けばゴルドさんとかが教えてくれるとは思うけど……ん~~~~~~~」


尋ねれば、ゴルドはアルフォンスのために大抵の事は答える。

しかし、それでもアルフォンスは自分に尋ねたのだから、自分の考えを伝えなければならないと、頭をフル回転させるバトムス。


「…………俺の場合は、これまで面倒を見てくれてる騎士のジーニスさんたちに教わった事を、半分も引き出せなかった」


「そう、なのかい?」


「うん」


ほんの少し、信じられないと感じた。


友人はその通りだと頷くも、アルフォンスは今しがた自分に全戦全勝した男が、実力の半分も引き出せなかったとは思えない。


「本当に、ただただ必死だった。殺されないように……そして、殺す為に必死だった。もう倒した筈のゴブリンの頭を、何度も踏みつけた」


ただの戦闘内容ではなく、友人はこういう話が聞きたいはず。

そう思ったバトムスは本当に包み隠さず伝えた。


「そういう倒し方を、したかったわけではないんだよね」


「勿論。でも……というか当たり前なんだけど、本当に自分を殺そうと襲ってくる相手と初めて向かい合って戦ったから、全く余裕がなかったんだよ。だから、倒した

筈のゴブリンに何度も追撃した…………んで、朝食が全部零れた」


最後の内容は必要だったのか? というツッコミは、誰からも入ってこなかった。


自分を殺そうと襲い掛かって来る相手。

ここに関しては、周囲の環境次第ではモンスターと戦ったことがなくとも、経験する場合があるため、慣れている者は慣れている。


ただ、最後の点に関してはゴルドやジェナも同意するように頷いており、騎士たちも同じような経験をしていた。


「人によっては違うと思うけど、多分そんな感じだから、逆に下手にこれまで習って覚えてきた内容を全て発揮しようと張り切らない方が良いんじゃないかって思うかな」


「なるほど……他にも聞いて言いかい」


「俺に答えられる事ならな」


その後、アルフォンスは本当にその他諸々について尋ね、バトムスはちらちらとゴルドの方に視線を送りながら答えるのだった。




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