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執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?  作者: Gai


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第53話 評価者たち

初めて社交界に参加してから約三か月間……バトムスはこれまで通りの生活を送っていた。


戦闘訓練を行い、錬金術や鍛冶師としての知識や技術を深め、料理長であるクローゼルと新しい料理について語り合う。


バトムスとしては、ギデオンは大丈夫だと言っていたが、本当はバカガキ三人の親から何かしらの嫌がらせ……もしくは報復されるのかと思っていたが、全くもってそんなことはなかった。


ただ、約三か月後に、アブルシオ辺境伯家に来客が訪れた。


「この間ぶりだね、バトムス」


「……そうだな、アル」


その来客とは、レドローザ王国の第五王子であり、バトムスの友人であるアルフォンスだった。


現在、アルフォンスは既にアルフォンスの家の中にいる。

そこまで状況が進んでいても……何故? という疑問が浮かんでしまう。


「なぁ、アル。そのさ、お前の立場を考えたら、そう簡単にここまでほいほい来れるものじゃないんじゃないか?」


「どうだろうね。頑張って覚えたりしなければならない事を覚えてきたから、ある程度の休みを貰えたって感じかな」


バトムスと違い、アルフォンスはこの先の未来を見据え、覚えなければならないことが多い。

戦闘訓練は勿論だが、知識や学力的な面でも覚えなければならない事が多く、そう簡単に先取りすることは出来ないのだが……見事、アルフォンスはアブルシオ辺境伯家まで来れるだけの纏まった休息日を確保した。


「それに、友達に会いに来るのに大した理由は必要ないだろう」


「……それはそうかもな」


それは間違いなくアルフォンスの本音である。

ただ、わざわざアブルシオ辺境伯家に来たのは、一応他の理由があった。


「ただね、ある人からこれをバトムスに渡してほしいって頼まれたんだ」


「? 手紙……だよな?」


手紙である。

封筒には封がされているものの、貴族の家紋などに詳しくないバトムスは、当然詳しくないため解らない。


(名前も書いてるけど……聞いたことないな)


封筒にはきっちり差出人の名前まで記されていたが、そこら辺の知識が全くないため、ひとまずその場で封を開けることにした。


「えっと…………? ………………………………なんだこれ」


文字が読めるバトムスは端から端まで手紙に記されている内容を読んでいったが、それでも零れた感想はなんだこれ、というものだった。


「簡単に言ってしまうと推薦、だね」


「それは解るんだけどさ…………なんで俺に?」


王都……ではない別の都市だが、賑わいや規模でも負けていない都市に、執事やメイドを育成するための専門学校が存在する。


その学園から、是非とも君の入学を推薦したいという内容が記されていた。


「バトムスの行動が広まっているからだよ」


アルフォンスの説明を聞いて、苦虫を嚙み潰したよう顔を浮かべるバトムス。

チラッと初老執事であるゴルドの方に視線を向けると、小さく頷いた。


決して、アルフォンスが手動となってそうなるように動いた訳ではない。

寧ろ、彼は他の貴族令息や令嬢たちと話す際は、自分からその話をしないようにしていた。


ただ……インパクトがある話題であることに違いはなく、アルフォンスが話さずとも他の子供たちが会話の種にしてしまう。


「……やっぱ、色々と言われてる感じなのか?」


「あまりバトムスが心配するような事にはなってないよ。侯爵家や公爵家の中に、ルチア嬢たちと同じく将来騎士の道に進むと決めている人たちがいるんだけど、見事な姿だったと褒めるからね」


王子という立場のアルフォンスを除けば、立場的には公爵家……侯爵家の子供たちが、キッズ社交界のヒエラルキー上位に位置する。


そのため、彼らがいない場所であればまだしも、彼らがいる場所ではその意見に反論することが出来ず、そこまで深く考えてなかった子供たちも……彼らがそう言うならばと、その考えに賛同する傾向にあった。


「それにね、お父様もバトムスの行動を褒めてたよ」


「っ!!!!!?????」


アルフォンスのお父様……つまり、レドローザ王国の現国王である。

そんな人物が、自分のことを褒めていたと知り、バトムスは…………驚き過ぎて本気で固まってしまった。


「? 大丈夫かい、バトムス」


「っ、お、おぅ……な、なんとか」


声を掛けられ、なんとか戻ってこれたバトムス。

それでも、衝撃的過ぎる内容を聞かされ、まだ少し混乱が残っていた。


(……どうやら、バトムス君は自身がどれだけ見事な行動を取ったのか、理解してない様だな)


令息や令嬢たちの中にもバトムスの行動を支持する者がいる……だけではなく、あのパーティーでバトムスが取った行動は国王陛下のように大人も見事だと褒める者が多くいた。


ギデオンが予想していた、物理的に黙らせる、恥をかかせるといった展開になった場合は、騎士団の関係者などがバトムスを評価することになっていた。

しかし、そんなギデオンの予想を上回り、バトムスは決してバカガキ三人に手を出すことはなく、見事な手法と言葉選び……ルチアとの連携もあって、三人に恥どころか大恥をかかすことに成功した。


まだ七歳の子供が……貴族や豪商の子供たちの様な教育を受けている訳ではない平民の子が行った。

その事実も相まって、バトムスが取った行動は多くの者たちに評価されていた。

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