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執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?  作者: Gai


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第45話 連れ戻してくれる

「そういえば、改めてだけど……よく、今回のパーティーに参加することにしたね」


「当主様からの頼み……頼み? だからな。一応報酬も貰ったわけだし」


当主がわざわざ報酬を用意して頼み込む。

その話を聞き、従者の二人はほんの少し首を傾げた。


「報酬かぁ…………もしかして、鍛冶や錬金術に使える素材かい?」


「あぁ。良く解ったな、アル」


「バトムスが受け入れる報酬となると、そういった素材かと思ってね」


報酬が現金ではなく、鍛冶や錬金術に使える素材と聞き、二人は増々バトムスがどういった存在なのか解らなくなる。


「そちらの方は、順調なのかい?」


「いやいや、まだまだこう……基礎も出来てないよ。まだ体の大きさや力的にも出来ないことが殆どだから。ただ、鍛冶場で見学させてもらったり、短剣を研いだりすることはあるよ」


「研ぐ…………それもまた、繋がってくるんだね」


「一応最後の仕上げでもあるからな。錬金術の方は……監視? 付きでポーションは造らせてもらってるよ」


「そうなんだね。そちらも……まだまだ道のりは長いといったところかな」


「だな。ちゃんと傷を癒す効果が付与されてるのならまだしも、ちゃんと必要な薬草を使っても失敗することもあるよ」


七歳の子供が一応ポーションを造れる……あまり錬金術の世界を知らない従者二人は、勝手にその実績を過大評価し、心の内に焦りが生まれていた。


(ポーションを造れているとは…………いやはや、本当に個人的に楽しみな子だ)


初老の執事はバトムスの成長に感心し、改めてこれから先が楽しみだと思った。


「バトムスは、いずれこういう物を造りたいという物があるのかい」


「……ぼんやりとだけどな。でも、いつになったら造れるかは解らないけどな」


「僕は、バトムスなら時間は掛かるかもしれないけど、いずれはその造りたい物を造れると思うよ」


鍛冶も錬金術も、何も知らないお前に何が解る……といった思いが湧き上がることはなく、バトムスはただただ嬉しかった。


真っ直ぐ、お前なら出来ると伝えてくれた友人の気持ちが嬉しかった。

ただ……あまりにも真っ直ぐ伝えられ、嬉しいよりも照れの方が少し勝ってしまった。


「そ、そうか……あ、ありがと」


「ふふ」


こうして二人は楽しく、微笑ましいティーパーティーを夕方ごろまで楽しんだ。





「二人共、そう膨れるな」


「「…………」」


バトムスと別れ、夕食後……初老執事は別室で今回従者候補として同行している男女二人に優しく諭していた。


「……あの男は、いったいなんなのですか、ゴルド様」


「なんなのか、か……ふむ、そうだな…………」


初老執事……ゴルドは、自分の後輩になるであろう子の質問に対し、どう答えるべきか真剣に考える。


(どう答えるべきか、難しいな。アブルシオ辺境伯家の令嬢であるルチア様の執事候補……という答えを求めているのではない。しかし…………)


ゴルドから見ても、バトムスは謎の多い人物ではある。


強く、聡く、ルチアに対してはやや粗暴であれど、礼儀正しく大人に接することは出来る。


(アルフォンス様と同じく、聡いとは思うが……どこか違う。聡いと思うところもあれば、子供らしいところもある)


強さという点に関しても、やはり並ではない。

そこをどう説明すれば良いか悩むゴルド。


「……興味がある物事に対し、全力で楽しんでいるのだろう」


「っ、では……鍛冶や錬金術が、執事候補である者の楽しむことだと」


「それに関してだが、バトムス君は本来は執事候補ではないのだ」


「「っ!!!!????」」


本当に……増々意味が解らないと、頭が混乱する二人の従者候補。


「従者の間に生まれ子ではあるが、彼は従者として生きる道を選んではない。ただ、まだ七歳という年齢から立場は執事候補に収まっている」


「で、では何故その様な者が、ルチア様の執事候補として今回のパーティーに?」


「先程のアルフォンス様との会話で話していた通り、当主であるギデオン様に頼まれたのだろう」


「な、何故、でしょうか」


「何故だろうな……そこまでは、私も解らない」


実際のところ、なんとなくは解っているゴルド。


楽しそうだから……面白そうだから。

そういった理由だろうとゴルドは予想が付いていたが、まだ幼い二人がそれで納得するとは思えない。


「さて、バトムス君に関する話に戻るが、彼は興味を持ったことに対して全力で楽しんでいる。そこが……二人が自分たちと比べて差があると感じたところでしょう」


「「っ…………」」


差など感じていない!!!! という怒りがこみ上げはしたが、それを大先輩であるゴルドにぶつけることは出来ない。


「無理に、大人になろうとするのは難しい。ただ……苦しいときは、自分たちが進むと決めた道を思い出しなさい」


「進むと決めた道、ですか」


「えぇ。二人がどれだけ迷おうとも、その道の先にある光が、あなた達を連れ戻してくれる」


「「っ、はい!!!」」


まだ、幼い二人にはどういう意味なのか、詳しくは解らない。

ただ……偉大な大先輩からの言葉というだけで、二人のメンタルはそれなりに回復するのだった。

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