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執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?  作者: Gai


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第28話 成長

「ルチア、私は従魔という存在について、詳しくは知らない。ただ、バトムスとパーズの間には、確かな絆がる」


「絆、ですか」


「そうだ。目には見えない確かな糸で繋がっている。でもね……本来、人間とモンスターは敵対する存在なんだ」


ルチアは、マーサルベアが無理であれば、他のモフッとしたモンスターを従魔にと頼み込んだ。


しかし、ギデオンは直ぐに首を横に振って、それも無理だと伝えた。


「勿論、絆が芽生える事以外でも、心を通わせることは出来るだろう」


「っ! そ、それは……それはいったい、どんな方法なのですか!!」


「…………この人間と共に行動したい、共に戦いたいと思わせるだけの強さがあるか否かだと、私は思ってる」


「っ!!!!」


強さ……その言葉を聞いて、それならば!!! という思いがルチアの心から湧き上がることはなく、寧ろテンションがガタ落ちした。


何故なら、ルチアは未だにバトムスから一本取れていなかった。


相変わらず両足以外の部分が地面に付いたら負けというルールで行っているが、全勝負……バトムスが勝利を収めていた。


未だにバトムスから一本も取れていない自分が、自身の実力をモフッとしたモンスターに認めさせることなど、出来るわけがない。

それが解らないほど、ルチアの頭はモフモフに浸食されていなかった。


「勿論、それ以外の方法があるかもしれない。ただ、ルチア……仮に他に方法があったとして、君にそれが実行出来ると思うかい」


ギデオンは遠回しではあるものの、自分はルチアがそれでも従魔が欲しいと宣言しても、手助けはしないと伝えていた。


その思いが何となく解っているのか、ルチアはどうにかして自分の力でと幼い頭をフル回転させるが……当然、名案と呼べる方法が……自分の力でなんとか出来る方法が見つからなかった。


「………………出来ません、わ」


「そうだね。今、ルチアは自分の頭で考えて考え抜いた結果、出来ないと思った。それは……それ自体は、確かな成長と言える」


「そう、なのですの?」


自分に出来ない事を、同年代の気に入らない生意気な男が出来る……やってのけた。


なのに、目の前で自分は成長していると父親から言われた。

貴族令嬢らしく、ある程度聡明な部分はあれど、まだ何故自分がこの状況で褒められたのかは理解出来なかった。


「あぁ、そうだよ。ここでルチアが自分の頭で、なんでダメなのか……無理なのかを考えて、納得した。それは、間違いなく成長だよ。聞き分けの無い、ただの我儘な子供であれば、それでもと騒いだだろうからね」


「っ……なる、ほど」


ギデオンは、特に冷たさを感じる眼を、表情をしていなかった。


ただ、ルチアは幼いながらも……自分が別の答えを出していれば、失望されていたかもしれない。そんなもしもを感じ取り、体をブルリと震わせた。


「まぁ、まだルチアの中にそれでもという思いはあるだろう。だから、こう考えてみるのが一番良いと思う。ルチアは、嫌いな相手から友達になりたいと言われて、素直に差し出された手を握れるかい」


嫌いな相手。

そう言われてルチアが真っ先に思い浮かんだ人物は、パーズを従魔にしたバトムスであった。


「無理ですわ」


即答だった。


バトムスから「俺と友達になろうぜ!!」と笑顔で言われれば、寒気で鳥肌が立つ。

実際にそう言われたわけではなく、想像しただけでも気持ち悪いと感じてしまう。


「そうだろう。さっきも言ったけど、人間とモンスターは基本的に相容れない……仲良くは出来ない存在なんだ」


「…………良く、理解出来ましたわ」


本当に、良く理解出来たルチアは紅茶を飲み干し、軽く頭を下げてから執務室から退室した。


「ふぅ~~~~~~~」


「心が痛みますか?」


「ふふ、そうだね。ルチアがあそこまで我儘というか、自分の要望を強く伝えてきたのは初めてだったからね……正直なところ、ルチアの気持ちは解らなくもない」


バトムスがパーズに対し、どういった教育を……何を伝えているかは知らない。

ただ、ギデオンが癒しを求めてモフモフしにいくと、特に身構えることなく受け入れ、モフモフさせてくれた。


私もあぁいった存在が欲しいと、娘が望むの気持ちは良~~~~~~く解る。


だが、バトムスとパーズことマーサルベアの子供が出会った状況というのは、まさに奇跡としか言えないものであった。


「でも、無理なものは無理だよ」


「……恐れながら、卵を産むタイプのモンスターであれば、可能かもしれません」


「竜騎士となる為に、一番遠回りに見えて手っ取り早い方法だね。ん~~~……解らなくは、ないよ。いや、そもそもモフモフするモンスターの中に卵を産むタイプがいるのかっていう疑問がまずあるけど…………物凄く個人的な考えなんだけど、仮に卵の状態から大事に大事にルチアが育てて、孵ったとして……バトムスという存在に出会った時、彼に惹かれたりしないかな」


「それは……………………申し訳ありません。解らない、としか言えません」


それが、答えであった。

普通に考えれば、母親と認識した相手に付いて行く、傍を離れなくなるものだが……ギデオンと書類仕事を一緒に行っている執事も、バトムスが普通の七歳児ではないことを理解している。


だからこそ、そんな事が絶対に起こりえないとは断言出来なかった。

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