第26話 完、成!!!
「完成したぜ、依頼主さん」
「おほ~~~~……パーズ、ここが、俺たちの家だ!!!」
「ガゥっ!!!!」
当初、バトムスは屋敷の中でマーサルベアことパーズと一緒に暮らせないかと考えていた。
だが、外から戻って来た時……当然ながら、毎回洗わなければならない。
その手間を考えると……バトムは自分とパーズが暮らす家を作ってしまった方が早いのではと考えた。
普通に考えて…………バカである。
どう考えてもバカなのだが、バトムスにはそのバカな目標を達成出来る財力がある。
そうしようと思ったバトムスは直ぐに正式な手続きを踏まえた上で、庭の一部を購入し、そこに家を建てたいと、アブルシオ辺境伯家の当主であるギデオンに伝えた。
話を聞いた瞬間は面食らったものの、バトムスが普通の七歳児ではないということは、ある意味ギデオンが一番良く解っている。
「うん、解った。それじゃあ、土地の広さと、家の外装や内装、家具とかも決めちゃおうか」
「ありがとうございます!!!」
まず、第一に……ギデオンは、バトムスの父親ではない。
ギデオンにはノルドという現役の執事として現在もアブルシオ辺境伯家で働ている。
既にバトムスの突拍子もない行動、ルチアに対する態度などの指導は諦めているものの、決して放置子にしている訳ではなく、夕食の一日の後には「今日は何をして過ごしたんだ」「どんなモンスターと戦ったんだ?」と、笑みを浮かべながら尋ねている。
母親であるサリアナも一周回るほど呆れ、諦めたからこそ逆にある程度の事は気にせず、良い関係を築けている。
対して、ギデオンは……バトムスにとって、父親の雇い主という遠過ぎる存在というよりは……色々と何故か話が合う、親戚の気の良いおじさん。
当然ながら、ぶっ飛んだことを……明らかに普通ではない事をするとなれば、色々と
何故か話が合ってしまう親戚の気の良いおじさんと企み、実行する。
「どうせならと、貯まってるお金を結構使っちゃおうと思ってます」
「うんうん、それは良いね」
前世の知識によって、アホほど蓄えがあるバトムス。
アブルシオ辺境伯が治める土地から全て得た金ではないが、それでも経済を回すという意味では……使う時にドバっと使うのも悪くはない。
その日、ギデオンは自分の事ではないのに、バトムスと一緒にどういった家を作るのか……軽く数時間は話し合いを行った。
その間、パーズは休憩中のメイドたちや騎士たちからもふもふされて可愛がられていた。
そして諸々の話し合いが終わった後、バトムスはひとまず土地の売却のやり取りだけサクッと終わらせ……両親に報告した。
「うん……うん……そうか……………………ちゃんと朝起きて、夜は寝るんだぞ」
報告を聞いた父親、ノルドは完全に諦めモードだった。
ノルドもバトムスがパーズを迎え入れた経緯を知っている為、それを考える頭ごなしに否定することも出来ない。
加えて、決してアブルシオ辺境伯家の庭を含めて屋敷内から出ていく訳ではない。
であれば……基本的に「じゃあ、それなら仕方ないな~~~」とはならないのだが、ノルドもサリアナも苦笑いを浮かべながら了承。
その後、バトムスはある程度の外装や内装が決まった後、建設を担当してくれる者たちと細かい打ち合わせを行っていく。
依頼主が子供だと知れば、ふざけてるのかと、一発ぐらいデコピンをかましたくなるが……バトムスの名は、知っている者は建設関係の仕事をしている中にもいる。
故に「あぁ、この子があの噂のバトムスか」と納得した。
そもそも辺境伯が保証人の様な形で「この子はちゃんとお金を持ってるよ~~」という書類を偽装不可能な印を使い、バトムスに持たせていたので、まず断るという選択肢がなかった。
そして約二十日後、バトムスとパーズが暮らす家が完成した。
「皆さん、ありがとうございます!!! これ、建設代の代金です!!」
バトムスは基本的な建設作業に関わった者たち……と、錬金術師として建設に関わった者たちに、それぞれ事前に決めていた分の料金が入った袋を渡した。
「…………おぅ、キッチリ金額通りだ」
「こちらもだね~~」
袋の中には、金貨が大量にジャラジャラと入っていた。
普通なら、子供がそんな大金を持ってることに驚くのだが……彼等は、自分たちが作った家に、いったいどういった素材が使用されているのか知っている。
当たり前の様に、建設作業員たちと錬金術師に支払った料金よりも、建設に使われた素材の方が遥かに高い。
バトムスは、文字通り経済を回したと言っても過言ではなかった。
バトムスの前世であれば、初めて~~~~万円、もしくは~~~~億円の家を建設依頼して実際に建ててもらった子供として、ギ〇スブックに載ってもおかしくない。
「んじゃ、中に入るぞ、パーズ」
「アゥ!!!」
二人はパーズがこのまま元気良く成長していったらと仮定したサイズの扉をなんとか動かし、中へと入っていった。
「………………」
そんな二人の姿を、恨めしい表情で陰から見ている女の子がいた。




