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執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?  作者: Gai


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第13話 体内に宿る亜空間?

「出来上がったぞ、バトムス」


「良い匂いがするっすね~~。んじゃ、いただきま~~す………………うん!!! ちゃんと甘くて美味いっす!!!!」


「そうか……それは良かった」


執事見習いのバトムスと料理長であるクローゼルの前にあるのは……チョコ味のクッキー。


バトムスはクローゼルに前世の料理知識だけではなく、お菓子に関するアイデア

も伝えていた。

とはいえ、バトムス(詠無)は料理やお菓子作りガチ勢ではなく、ふわっとしたイメージしか伝えられない。


それだけであれば、完成に至らない料理もいくつかあったが……バトムスはアブルシオ辺境伯家、厨房のスポンサー。


この世界にはない料理家電を、当主のギデオン経由で知り合った錬金術師に依頼し……レンジなとを造ってもらった。

勿論、機械などに関してもバトムス(詠無)は全く知識を有していないため、資金力に物を言わせて高ランクモンスターの素材、魔石を取り寄せ……パワープレイでなんとか制作することに成功。


制作費がバカほど掛かるため、販売となると更に値段が跳ね上がるため、商品として販売することは出来ない。


「しかし……良く、こんなマジックアイテムのアイデアを思い付くな」


「これだけクローゼルさんたちに関して色々と注文してるんで、俺も料理に何が必要かな~~って考えたんですよ。まぁ、マジックアイテムの構造とかに関しては高品質な素材によるゴリ押しですけどね」


「それでも、俺たちとしては嬉しい…………楽しい限りだ」


料理の幅が広がる。

それは料理人たちにとって非常に心が躍る展開であった。


アブルシオ辺境伯家に所属する料理人たちは皆向上心が高く、現在オーブンやレンジの使用権は順番待ちとなっている。


「だが……バトムス。こういった料理、お菓子はあまり放置していると暴獣たちに狙われてしまうぞ」


「……暴獣、ですか?」


「そうだ、暴獣だ」


クローゼル・キルチは元騎士。

アブルシオ辺境伯家に仕えていた騎士であり、今現在でも戦闘勘や技術は鈍っておらず、新米騎士たちではどう足掻いても敵わない。


そしてアブルシオ辺境伯家に仕える騎士の中には、当然女性の騎士や魔術師たちもいる。


「俺がまだ騎士として活動していた頃……隊長としてあるモンスターと戦っていたんだが、思っていた以上にそのモンスターが強くてな」


「クローゼルさんでも強いと感じる、モンスターですか」


「俺が戦ってきたモンスターの中でも、上位五番以内に入る強敵だった。そして当時、率いていた部隊に女性の騎士や魔術師がそれなりに多かったんだ」


そういった状況でムラムラを優先してしまう程、アブルシオ辺境伯家に仕える野郎たちはバカではない。


「女性は甘い食べ物が好き……知識としては知っていたが、そこまでプライベートで付き合いがあった訳でもかったこともあって、その姿を実際に見たことはなかった」


強敵と言えるモンスターと遭遇してしまった時、そのモンスターは下級の同系統モンスターを従えるタイプでもあり、本当に危機的状況だった。


そんな時……クローゼルは士気を上げる為に、部下たちにある事を伝えた。


「危機的状況を脱する為に、街に戻ったら好きなだけスイーツを食わせてやると言ったんだ」


「……そ、それで、どうなったんですか?」


「言った通り、彼女たちは暴獣になった。勿論、街に戻ってスイーツ専門店に入ってからもな」


懐かしむ様な目をしながら、当時の光景を思い出すクローゼル。


作戦通り? 女性騎士、魔術師たちの士気は爆上がりし、限界などいくらでも越えられると言わんばかりの活躍を見せた。


そして街に戻り……討伐したモンスターの素材などを売り捌き、かなりの収入がクローゼルたちの懐に入った。

しかし、クローゼルは現場で「スイーツを食わせてやる」と言ってしまった。

つまり……当然ながら彼女たちの懐にも普段より高い収入が入ったのだが、クローゼルが店で奢らなければならない。


「…………その時は、良い収入が入った。新しい武器を買おうかと思ったが……あっという間に消えてしまった」


「そ、それは……その……ざ、残念でしたね」


「俺が約束したことだ。あそこで彼女たちが暴獣になったからこそ、今こうして料理人として生きられている。ただ…………バトムス、女性の甘い物に対する執念? というのは恐ろしい。彼女たちの胃袋は亜空間に繋がっているのかと思ったほどだ」


騎士として活動している女性たちは、並みの男よりも食べる。

それはクローゼルも解っていたが……普段以上に胃袋へ流し込んでいく光景を観て、一種の恐怖を感じた。


「という訳で、俺たちだけで直ぐに食べてしまおう」


「そうですねっ!?」


ここ最近、現役騎士の護衛付きとはいえ、森の中で低ランクのモンスターと戦い始めたバトムスは、自身の周囲に存在する気配を察知する感覚が徐々にではあるが身に付き始めていた。


バトムスだけではなく、クローゼルも気付いた気配。


二人の視線の先には……ルチアとルチアの侍女がいた。

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