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120.悪魔ゲリー再び

 怒鳴られて我に返る。申し訳ない、タイムロスだ。ここからは一人で臨まなければならない。でも、もう大丈夫だ。みんな戦っているのだ。彼らのためにも目的を果たさないと。


 炎の間を突き進むと、再び道を炎が塞いだ。後には引けない。階段が見当たらないので、冷たい汗が背中を流れる。突然視界が開けた。前方に切り立った崖が現われる。


 もう一歩踏み出していたら落下するところだった。空から闇が降りている。足元の赤茶色の土が光を放っている。崖の底は赤々とした血が流れている。


 風に乗ってむせるような臭いが流れてくる。階段を早く見つけなければ吐きそうだ。だが、道はここで絶たれている。前方には暗黒が存在しているだけだ。階段はない。



 焦りも不安も消えた。この闇に吸い込まれたらしい。


 どこに目を向けても黒い空。魔界はどこも暗い。もう見慣れてしまったというのに、どこかこの場所は物悲しい。


 魔界の建造物や流行のファッションには共通の色がある。黒だ。ひょっとすると見過ごしているのかもしれない。もう一度注意深く目を凝らす。黒い空には星一つないが、わずかに光沢を見つけた。螺旋状にそれらは降りている。階段だ! 



 黒く透明な階段が、宙に浮いている。どこに続いているのかは高くて見えない。それに、浮いているのにどうやって上ればいいのか。ここからジャンプで飛び移れるかきわどい。改めて足元を見る。この高さから落ちたら助からないのは間違いない。


 とりあえず後ろに下がる。飛ぶにしても助走は必要だ。緊張するので息を整える。こういうときこそ無魔(むま)の術が役に立つ。ゲリーのおかげでできるようになってよかった。


 リラックスできたところで走る。狙いをつけて一直線。足元が消える。大きく飛ぶ。地面とさよならだ。


 思ったより高く飛べた。でも、重力に落とされた。手をかざす。届くか?


 トドカナイ。


 寒気がした。指がするっと冷たい足場に触れたが、つかめなかった。


 トビタイ。




 悪魔でも何にでも成り下がろう。ジークの元へ行くためなら。




 背中に意識を集める。黒い光が集まるのが分かる。コウモリの羽が風を切るのが分かった。翼に受けた風が自然に体を舞い上げた。行ける!


 手を投げる。届いた。ぶら下がる格好で階段に着いた。よじ登ると、ほっとため息がもれる。この羽を使うつもりはなかった。使ってみると、ジークのように上手く飛べない劣等感がうずいた。一段一段、駆け足で走って、そのことを少しだけ紛らわせた。


 何故自分は人間の真似事をして、走っているのだろう。何の支えもなく浮いている階段は当然、踏み外せば真っ逆さまだ。羽で飛んで行った方が早い。


 次第に羽が目障りになった。視界の端でちらつかれると、自分が何者だか分からなくなる。消えてくれと念じると、黒い光になって羽は背中に沈んでいく。脱力感がある。階段を数十分かけて上りきったのに、喜びがない。


 回廊に出た。同時に階段が消えてしまう。壁にかかったロウソクには火の気がない。角を曲がると、大広間になった。


 天井が高いせいか自分の足音が響いてしまう。誰かに見つかるかもしれないと、心底安心できないが、誰も飛び出して来ない。


 大広間の突き当たりに魔物が通れるほどの巨大な扉があった。竜の彫刻の入った扉だ。



 そびえ立つそれが、確かな威厳をかもし出し、この先が危険以上のものであると示しているように思われた。扉からジークの鼓動が聞こえるような錯覚がする。扉に近づくだけで、息苦しい。



 「待ちなガキ」


 上からだと分かった。見上げると高い天井に逆さまに立っているゲリーが見えた。まだこの男が残っていた。目前に邪魔されたのが腹立たしい。


 逆さまの状態で起用にもボトルの容器をすすっている。時折、中身の血が落ちてきて床に跳ねた。


 「用件を言ったらどうなんだ?」


 我ながらオルザドークに似てきたな。黙って見ているほど暇ではないのだ。


 「よく自力で帰って来れたな。正直びっくりだぜ」

 ボトルが落ちてきて割れたガラスの破片が飛び散る。怒った様子ではない。嬉しそうに戦闘態勢に入ったのだ。


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