ロール19。ミッションコンプリート初依頼。 3転がり目。
「護札、たしかに十個確認しました。
オーダー達成、お疲れさまでした」
「どうも」
受付嬢さんに笑顔で言われて、どう答えたらいいのかわからず、
愛想のない答えになってしまった。
俺の現在地はノンハッタン冒険者ギルドのオーダーカウンター
とでも言えばいいのか、ようはクエストのいろいろを
受け付ける場所にいる。
同行者ではあるものの冒険者ではない百鬼姫を除く
クロス・アエジス初期メンバー三人は、既に依頼達成の手続きを終えている。
俺が今回の依頼達成手続きをするクロス・アエジスの
ラスト一人ってわけである。
なんでバラバラに手続きするのかって言うと、ギルドカードのオーダー達成は
それぞれ別々に管理してるから、一人一人個別に
達成処理をしないといけないんだそうだ。
どうやらギルドカードの依頼ことオーダーの情報は全ギルドで共有らしく、
その地域ギルド独自依頼を受けてたとしても問題なく、
どこのギルドだろうと達成処理はできるらしい。便利なもんだ。
ここら辺、複数地域に拠点があるタイプの狩りゲーと
同じ感じではあるけどな。
「冒険者証、出してもらえますか? オーダー達成処理をしますので」
「ん、あ、ああ。すいません」
慌てて右のポケットから冒険者証ことギルドカードを取り出して、
テーブルの上に置いた。……あれ? ギルドカードが通称だっけ?
「それで。二つ、護札が多いみたいですが、
これはどうしますか?」
ギルドカードを例の、受注依頼データを打ち込んだ機械に挿入し、
機械をなにやら操作しながら聞いて来た。
「売ろうかと思ってます」
「わかりました。では、ギルドカードを受け取ったら少し待っていてください。
鑑定しますので」
「わかりました。おねがいします」
例のマシーンからギルドカードを取り出して、俺の前に置いた受付嬢さん。
「はい、処理 完了です。確認してくださいね」
テーブルから取り上げて、依頼受注中との違いを確認する。
なるほど。依頼情報がなくなってるかわりに、
依頼データが表示されてたところの左上端に、
一つポーンマークが点灯している。
おそらくだけど、ポーン依頼一個クリア済みってことなんだろう。
せっかく目の前に受付嬢さんがいることだし、この推測 確認してみよう。
「あの、このポーンのマーク。どういう意味なんですか?」
「それは、現在あなたが達成している依頼の状況です。
ポーンクラスの依頼を一つ達成していますよ、ってことですね。
初めての依頼達成、おめでとうございます」
「あ、はい。ありがとうございます」
真正面からまたにっこりと笑顔で言われて、なんともてれくさい。
「けど、この表示領域だけだとすぐいっぱいになっちゃいませんか?」
照れ隠し込みで話題を、依頼クリアスタンプ的な、
このアイコンのことに変える。
「そうですね。ですが大丈夫です。
たしかにギルドカードの、
そのオーダーの情報を記しておく領域だけだと
そう数が見せておけません。ですが、見せておける数以上に
依頼を達成できた場合、それまで見えていた情報は
ページを切り替えて保持されていきますよ」
「そうなんですか、すごいですね それ」
おいおい、狩りゲーのギルカの狩り状況データと殆どいっしょじゃねーか。
いや、それよりもデータを保持し続けられる辺り、狩りゲーのよかスペック高えぞ。
「そうですよね、わたしもこの仕組みを初めて見た時はびっくりしました」
「そうなんですね」
思わず微笑で言っていた。俺に答える受付嬢さんも、
ええと微小を返してくれた。
「あ、そうそう。依頼の処理が全部済んでから、報酬金を受け取ってください。
今回の場合、護札の鑑定が終わった時に、
いっしょに受け取っていただくことになります」
「あ、はい。わかりました」
「それでは、鑑定が済むまで、少しあちらでお待ちください。
鑑定が済みましたら冒険者証にお知らせします」
そう言って、受付嬢さんはガヤガヤしている方を
他の人に見えないように、密かに指差した。俺はそれに一つ頷くと、
クロス・アエジスメンバーの待つ、そのガヤガヤ方向へ向かった。
ーーあ。ギルカに知らせるってどういうことなのか聞くの忘れちまった。他に人が来るんじゃないかって焦って。
「どう? 初めて依頼を達成した感想は」
戻るが早いか、ベルクに声をかけられた。
「ううん。なんか、いまいち実感わかないなぁ」
「ああ、ね。あたしもそうだったわ」
「よく覚えてるな。もうずいぶん前だろ?
ベルクが初依頼クリアしたのって」
「まあね。でも、案外覚えてるものよ、そういうの」
「そうなのか」
「ええ。リョウマも冒険者生活が長くなればわかるわよ、この感覚」
「そっか。楽しみにしとくぜ」
「しときなさいしときなさい。で? 今は鑑定待ちってとこ?」
「ああ。ところで、今回の依頼の報酬金って、分配どうするんだ?」
「いいわよ、全部リョウマので」
さらっと。なんでもないことのように言った。
「……マジで?」
信じられない。俺もクロス・アエジスの一員だ。
パーティー全体資金がある以上は、そっちのプール分に回すべきじゃないのか?
「だって。個人資金ゼロじゃないリョウマ。それに、
初めての依頼なんだから気なんて遣わないで
持ってっちゃいなさいよ、ね」
「あ、ああ。そっか。ありがとう……」
「なによ、ぼんやりしちゃって?」
「あ、いや。あんまりにも気前がいいんでさ。拍子抜けしちまったんだ。
って言うかベルクはこう言ってるけど、レイナとリビックはそれでいいのか?」
「かまわないよ」
「元々そういうつもりでいましたので、問題ないですわよ」
「そ……そうだったのか」
なんて言うか。あんまりにもあっけらかんと言うので、
リアクションから感情が抜け落ちてしまった。
「よかったねー竜馬、貧乏生活から一歩脱却だー」
「それ、言葉の使い方あってんのか?」
ボケなのかマジなのか分かりにくい百鬼姫の言葉を、
突っ込み切れず普通に聞いてしまった。
突然、右のポケットからピコンっと言う、デジタルっぽい音がした。
何事かとギルドカードを取り出してみると、なにやら依頼データの部分、
ポーンマークの右に青い丸印が表示されていた。
「これ……鑑定終わった、ってことか」
状況を考えて推測。まさか、こんな
デジタルな方法で知らせて来るとは思わなかったぜ。
「言われなかった?」
「いやー、ギルドカードに知らせるとは言われたんだけどさ。
どういうことなのか聞きそびれちまったんだよ。
なんか、他の冒険者が依頼処理
待ってんじゃないかと思ったら焦っちまってさ」
「気にしないで聞けばよかったのに」
「だよなぁ」
苦笑。こういうとこ、俺ってやっぱ日本人だなぁって感じる。
勿論この世界の日本 アズマングじゃなく、前世界の日本の人間ってことな。
「人がいいんだからなー」
楽しそうにつっつかれた、物理的に。
「んじゃ、ちょっと行って来るわ」
小さく苦笑した後にそう言って、クロス・アエジスメンバーに背を向ける。
いってらっしゃいの声で見送られ、俺は改めて
受付嬢さんのところに足を運ぶのだった。




