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ロール19。ミッションコンプリート初依頼。 2転がり目。

「よし。まだ夕方なったばっかりだな」

 雑談しながらのんびり歩いてノンハッタン。戻って来た時の空を見ての俺のひとこと。

 

「ちょうどいい塩梅でしたかしら?」

 楽しげな声色で、そう尋ねて来たレイナ。

 時間配分って言う、さっきの俺の言葉を受けての言葉だろう。

 

 基本的にこの世界の人達、

 前世界の人間ほど細かく時間割りを考えて行動しない。

 だから時間配分って言う言葉が、オモシロワードに思えてるんだろうな。

 

「そうだな。夜になる前に戻って来たから、

みんなとしてもちょうどよかっただろ?」

 聞き返すと、そうですわねと返って来た。

 

 

「どこ先行く? やっぱエルんちか?」

「そうね。護札まもりふだの納品は後でもいいし」

「そうだね、エルちゃんを送り届けるのが最重要だね」

 とはリビック。

 

「満場一致っ!」

 百鬼姫なきりめの行動開始宣言とも取れるひとこと。

 言葉の意味を示すように、鬼娘はサクサクと歩き出した。

 

「元気な奴だな」

 苦笑で言って、俺は鬼娘に続く。

 

 人間より優れている、そう言ってる百鬼姫なきりめとはいえ

 このタフさ加減には、最早呆れるレベルである。

 

 

「あ、そうだそうだ」

 少し先で止まり、こっちに顔だけ向けた鬼娘。なにごとかと停止する面々。

 

 夕日を僅かに反射している鬼娘の瞳が、

 濃い緑とオレンジで不思議な色合いの輝きになってて、

 

 なんだか新種の宝石みたいで綺麗だなぁと思う。

 口には絶対に出さないけど、てれくさいから。

 

 

「エル。君の家、どっちだっけ?」

 全員から間の抜けた「え?」が出た。

 ギャグ漫画なら間違いなく、盛大に全員がずっこけてるところだ。

 

 

「もう、勢いよく歩いてるからわかってるんだと思ってたよ。まってて」

 しょうがないなぁって言う、若干の苦笑声で言うと、エルはスタスタと

 百鬼姫なきりめのところまで行く。

 

「リョウマ」

 ベルクに声をかけられる。なにを言わんとしてるのか、

 だいたい予測できたので「ああ」と相槌しつつ顔を後ろに向ける。

 

 ーーそして、

 

「「あいつだけは絶対に先導にしちゃいけない」」

 頷いてそう、同時に言った俺たちだ。

 

 

***

 

 

「お疲れさまでした。あの、エル。迷惑かけませんでしたか?」

 クレインブリッジ家玄関口。朝と同じように呼び鈴に答えて出て来たエル母、

 開口一番ちょっと心配してそうな声色で尋ねて来た。

 

「ち、ちょっとママっ?」

 面喰ったようで、若干声が上ずっている。

「大丈夫でしたよ。エルちゃんがいたおかげで

簡単に山に入れたみたいですし」

 これはベルクだ。やっぱ不思議な感じだなぁ、

 こいつがですます調で喋ってんの。

 

「あら、そうなんですか? お役に立てたんだったら、なによりですけど。

エル、昨日 いったい御山でなにがあったの?」

 エル母、エルの功労っぷりが予想外な様子で、目を丸くしている。

 

「昨日って、なんで限定してるんです?」

 聞いてみると、それがですね と驚き冷めない調子で言葉を続けた。

 

 

「昨日、今朝あなた方をつれて来た冒険者さんと、いっしょに帰って来たんですけど。

その時、小さなドラゴンがいっしょだったんです。それ、いったい誰だと思いますか?」

 なるほど、ゆるさんもいっしょだったのか。

 そりゃそうだよな、なんせ結葉ゆいはといっしょに宿屋まで来てたんだし。

 

 

「誰だったんですか?」

 ここは空気を読む。

 

「それが。それがですね。竜凰様だって言うんですよ、本人が。

そんなことがあったんですもの、昨日のお昼に御山で

なにかあったんだって考えるのが、自然じゃないですか」

 

「なるほど。そりゃ、なにかあったとしか考えられないですよね。

だから昨日って限定したのか。ありがとうございます、すっきりしました」

 空気を読み切って、俺は軽く会釈した。

 

 

「昨日なにがあったのか夕食の時に聞いても、エルったら教えてくれなかったし」

 ちょっとむっとした感じで言うエル母。なんともかわいらしいリアクションだ。

 

「わかったよママ、今日は話すから」

 そんな母親に観念したか、エルはそう言って母親を宥めている。

 

 ほっこりするなぁ。クロス・アエジスメンバーからも、

 ほんわかしたあったかい笑いが起きている。

 

 

「それでは、わたくしたちはこれで失礼いたしますわね」

「あ、はい。ノンハッタンにまた来ることがありましたら、

顔 見せてくださいね」

 

「あら、気に入られてしまいましたわね」

 柔らかにフフっと微笑んでから、そう切り返したレイナ。

 

 うまいなぁ、はいともいいえとも言ってないけど、空気は和やかなままだ。

 

 

「さ、まいりましょうか。あまり長居するのも迷惑ですし」

 そう言うとレイナは、もう一回それではって言ってから

 きびすを返して歩き出した。

 

 おそらくだけど、今のは会釈だったんだろう。

 

 

「んじゃね」

 百鬼姫なきりめもレイナに続く。俺達も順々に会釈をしてから、

 二人に続いた。

 

 後ろにいるからはっきりとはわかんなかったけど、

 方向転換前に小さくガサって言ったから、

 たぶんベルクとリビックも会釈したんだと思う。

 

 

 クレインブリッジ家から離れる俺達に、

 エルは「またねー! バイバーイ!」と、声を送ってくれている。

 

「すっかり友達だな」

 エルの言葉の雰囲気が、完全に友達に対する感じだったので、

 思わず呟いてしまっていた。

 

「そうですわね」

 にこやかな声で俺の呟きに反応したレイナ。

 でも、なんだかちょっと寂しそうにも聞こえる。複雑な声色だな。

 

 

「さて、次はギルドね。今ならまだ間に合うわよ」

 ベルク、まるでレイナの纏った空気を換えるように、少し声を張った。

 

 俺でもわかるってことは、付き合いが長いベルクには余計にわかったんだろう。

 レイナの纏った少しの寂しさが。

 

 

「そう、ですわね。いきましょう」

 答えたレイナは言葉の後、こっちに顔を向けて微笑した。

 

 目線が俺と少しズレた方を向いている。ってことはおそらくだけど、

 ベルクに対する笑みなんだろうな。

 

 進行方向に向き直ったレイナ、黒ドレスのスカートを翻さない程度に

 速度を上げて歩き出した。

 

「ああやって風切って歩いてるとかっこいいな」

 素直な感想。

「そうなのよね~。普段は優雅でお嬢様って感じだけど、

戦闘の時とかこういう風に機敏に動くとかっこいいのよねぇ」

 

 羨むように言うベルクに、

「ベルクはベルクでかっこいいと思うけどな」

 とやっぱり素直な感想を伝えた。

 

 

「ありがと。でも、あたしってこう しぐさに緩急がないでしょ?

けどレイナって状況によって雰囲気がかわるじゃない。

それが羨ましいのよ」

 「素敵だなー、って思うのよね」と、小さく付け加えた。

 

 どうやら、本人に聞かれるのが恥ずかしいようだ。

 意外とかわいいとこあるな、こいつ。

 

 

「なるほどなぁ」

 リビックのいる辺りから、「いいなぁ、かっこいいとか簡単に言えて」って言う声が聞こえたけど、

 リアクションのしようがないのでスルーを決め込む。

 

「なに笑ってんのよ?」

「いえいえ滅相もない」

「声でわかるんだから、そういう腹の立つごまかし方しない」

 

「流石にバレるかー」

「いいなさい、なにを笑ったのか」

 

「断る」

「言え」

「いやです」

 

「ニヤニヤされてると、気味悪いでしょうが!」

 完全にベルクのテンションは遊んでいる。だから、油断していた。

 そして、予想もしていなかった。

 

 

「はけこのー!」

「いでででで! バカなヘッドロックだと!?」

 背後からヘッドロックを、プロレス技をしかけて来やがったのだっ!

 声が痛みをこらえてるせいで、言い方と相まって悪役みたいになっております。

 

 ーーでも、あれです。痛いんですよ。

 痛いんですけど、ベルクさん その、体付きがエよろしいじゃないですか。

 

 つまりですね。

 

「い! い! な! さ! いいい!」

「痛い痛い! いたきもちいい! 痛い!」

 とまあ、こういうことなわけですよ、はい。

 

 頭におもいっっきし胸押し付けられてるんだぜ、

 そりゃいたきもちいいとしか表現できねえだろこの状況っ!

 

 

「いえこらー」

 言い方が軽いのに力がガチで入ってるとか、

 どんな器用な力のコントロールしてんだこいつっ!

 

 

「いだだだ! ギブギブ! 言います! 言いますからお慈悲をおおっ!」

 左手で、俺の頭を絞めてるベルクの右腕をパシパシ叩いてギブアップ表現。

 

「よろしい」

 解放された。ちょっぴり複雑ではあるけど、

 流石にあれを長時間喰らうのはまずい。

 

 

「……っあー。頭ガンガンしやがる……」

「効果覿面ねー、頭蓋破砕絞め」

 満足そうに言ってんな、おい。って言うか、

 なんだその物騒極まりねえ名前……。

 

「その名前、危険度の高さものすげーんすけど」

「この名前で載ってたのよ、組み技大辞典みたいな本に」

 

「そんなのあるのか……」

 プロレス雑誌があるわけでもないだろうけど、

 徒手格闘術の投げ技組み技特化号みたいなのでもあるんだろうな、きっと。

 

 ファンタジー世界でも有効な手として紹介されるとは、

 おそるべしヘッドロック。

 

 

「それ、小さい時に見てた本なんだ。ぼくがいったい、何度練習台にされたことか……」

「手軽な練習台、リビックしかいなかったんだもん。幼馴染の定めよ」

「まっったく悪びれてねえな」

 

「昔の話だし、今更気にしてもしょうがないでしょ?」

「元々気にしてなかったろ、お前」

「うん」

「あっさりとまあ……」

 

「で? なにをニヤニヤしてたのよ?」

「ん、ああ。それな」

 口に出すの、けっこう恥ずかしい。

 

 

「言わないとまた喰らわすわよ」

「後ろから肩を叩くな。わかったよ、言うよ。ったく」

 深呼吸一回。そして。

 

「レイナに対する気持ち、聞かれたくないって 案外かわいいとこあるじゃないか。って思っただけだ」

 なげやりむりやりやる気なし。

 

「……だ、だって。すてきだ、なんておもってること。

はずかしいじゃない、聞かれるの」

 もごもご口ごもる。今ベルクの顔を見たら、

 赤くなってるだろうことは容易に想像できるな。

 

「やっぱ、かわいいとこあるnぎゃああやめろ絞めるな絞め落とすな!」

「余計なことゆうからよ」

 

「っいて」

 開放された直後、軽く頭をはたかれた。

 なんか、弟みたいに扱われてるよな、俺。

 

 

「なにやってるんですのー? おいていってしまいますわよー」

 ちょっと離れたところからお嬢様の呼び声だ。

 

「いくぞ、素敵なお嬢様がお待ちだ」

 ズルっとした歩き方で進み出した俺。

「また言ったら、今度は殴り飛ばすわよ」

 むっとしたような声色で言って、ベルクがついて来る。

 

「その『飛ばす』が誇張じゃなさそうで怖いな」

 

「やれやれ、まったく。中が言いな」

 羨ましいよ、とまたも独り言を伴って、

 リビックがベルクの更に後ろからついて来る。

 

 お前。ぶっ倒れてる間、二人から大事に守られてたろうし、

 守られてるんだぜ。普段雑に扱われてるけどな。

 

 

 

 知らぬは当人ばかりなり、だぜ。

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関連作品。

ゆるさんの押し事 ~ 最強竜凰さんののんびり火山生活 ~
同じ世界の作品、2D6の後半にクロスオーバーする。


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