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ロール19。ミッションコンプリート初依頼。 1転がり目。

「つい、た。ぜ、おああっ!?」

 ゆるさんたちが最初に姿を見せたところまで来て気が抜けちまった。

 俺以外のメンバーの驚きの「あっ!」をBGMに、

 

 俺は無様に、ドタバタと膝の爆笑に引っ張られて

 フォニクディオス最初にして最後の坂を駆け下りた。

 

「おあっっ、っと っとっと」

 ズサッっとむりやり地面を踏みしめることで、

 ぜんたーい止まれ的な余波移動をせき止める。

 

「ふぅ。って、まだ爆笑してんのか俺の膝は……ぁあ、

もぉ 足がムズムズするっっ」

 ペシッペシッと膝を叩く。なんとかしてこの膝の笑いを止めたい。

 

「止まれっ、止まれっこのっ、うわっっ」

 勢いよく叩きすぎて、尻餅をついてしまった。

 ……かっこわるさの上塗りだーもぉっ!

 

「けど、おかげで膝のガクガクが弱まった気がするな。

怪我の功名か、不幸中の幸いか」

 後ろからヒューっと風が吹いて来て、その少し後に

 複数の足音が流れ込んで来た。

 

 

「大丈夫ですか?」

 その声が終わるのと同時に、ゆるさんが俺の左太ももの横に着地した。

 

「ああ、もう 殆ど大丈夫だ。膝の笑いも収まったしな」

「膝が……笑ってるんですか?」

 「ん~?」と不思議そうな声を出しながら、

 その顔を俺の膝へと近付けていくゆるさん。

 

「笑い声、しませんよねぇ?」

「あ、ああ。そういうことな」

 人間のことが好きなゆるさんでも、人間の言葉の使い方までは

 把握してないらしい。まあ、たぶんではあるけど

 

 この言い回しは日本特有かもだから、より難しいかも、か。

 

 

「大丈夫?」

 予想外。一番最初に声をかけてきた人間はエルだった。

 

「ああ、サンキューな。大丈夫だ、尻餅ついたことでか、

膝の笑いが止まってくれた」

 

ふもとだったからよかったけど、これがもっと上からだったらどうなってたか。

気を抜いちゃ駄目よ、リョウマ」

 姉が弟に言い聞かせるような、そんな調子でベルクに言われ、

 無用な恥ずかしさを味わう羽目になった。

 

「わぁ! リョウマさんっ、顔が真っ赤ですっ! 大丈夫ですかっ?!」

「あ、ああ、心配しなくていいぞゆるさん。

ただ……恥ずかしい……だけだからな」

 己の心境を説明させられ、余計に恥ずかしい。

 

 恥ずかしいのとこからもごもごと口ごもってしまったのは、

 しかたないんだ。しかたないんだよ……!

 

「そうですか。御守の火の属性が強すぎて、

リョウマさんの体に悪い影響を与えてるのかと思いました。

よかったぁ」

 

「まったく、お人よしだなぁ。って言うか、そんなことが起きる程度の

火属性付与したのか?」

 

 推測してちょっと冷や汗が出た。思わず目を胸元にやっちまったよ、自分のな。

 ほんとに悪影響出るほどの火属性入ってたらやばいぞ、この御守……。

 

「あ、いえ。そこまでではないと思います、はい」

「なら、怖いこと言わないでくれよな」

 軽く明るく返して、俺は立ち上がった。

 

「うん、膝は問題ない。まだ空は青い。いい時間配分になってるな」

 時間としてはおそらく二時か三時かってところだろう。

 この山がそこまで高くないのが幸いしてるな。……

 

 いや、俺達が登ったところまでが、か。まだ上がありそうだったからな。

 

 

「つ い 今 さ っ き、自分の膝に不意打ちされて、

その時間配分とやらを乱した人がなに言ってんだか」

 明らかにからかってるベルクの言い方。声が今にも笑い出しかねねえしな。

 

「くそ、ここぞとばかりにいじってきやがって……」

 そりゃ歯噛みもする。そしたらベルク、やっぱり笑い出した。

 

 それに釣られてみんなも笑い出した。

 

 俺? なんかな。わけもなく面白くなって、笑い出したよ。

 たまにあるけど、なんなんだろうな。この釣られ笑い。あくびかよって。

 

 まあでも。ちょっと心配に傾いてた空気が明るくなったし。

 いいか、細かいことは。

 

 

「しっかし、同じヤマモトだからってリョウマにまで

虹色の魔力の固まりあげちゃうなんて、

ずいぶんと太っ腹よねブルカーニュって」

 ベルクの言うことに、レイナも「そうですわよね」と同意している。

 俺もそう思うゆえ、だよなーと同意する。

 

 ここに来るまでの道中で、首からぶらさげてる俺の御守について

 見せたし話もした。だからベルクがこんなことを言ったのだ。

 

 御守見せたタイミングを考えると、今更感のする

 リアクションではあるんだけどな。

 

 みんなゆるさんの魔力の固まりを見て、すごがったけど

 すごがり方が静かで、ちょっと肩透かしだったんだよな。

 

 「おおお! すげーっ!」クラスのテンションになると踏んでたから、

 「おおお、すごいなぁ」って言うじわーっとした落ち着いた感じだったので、

 こっちはテンションを上げるに上げられず消化不良だった。

 

 

「な……なんか、皆さんゆるさんって呼ぶので、

ブルカーニュって呼ばれるとくすぐったいですね」

 嬉しそうな表情で言うゆるさん。って言っても、ドラゴンだからか

 人間ほど表情の変化はでっかくないから、判断してるのは主に声色だけどな。

 

「まあ、色がいびつだけどな」

「わたしがびっくりしました。まさか火属性を多くしたからって、

色がおかしくなるなんて思いませんでしたから」

「なんだよな」

 

「流石だな、と思うのは。属性ごとのバランスを変化させながら、

それでも全ての属性魔力を維持することができていることですわよね」

 「そうだよね」とはリビック。

 そういや俺とこいつ、使用属性 火でいっしょなんだよな、

 今気付いたわ。

 

 俺としては属性のバランス以前に、そもそも

 魔力を結晶化するのって、簡単なことじゃないと思うんだがな。

 

 このゆるい竜王はあたりまえのようにやらかしてるし、

 誰もそこについては振れてないけどさ。

 

 

「あたりまえのように、その状態で魔力を結晶化させてるしねぇ。

簡単じゃないんだよ魔力を結晶化するのってさ」

 あ、触れる奴が出た。やっぱ簡単じゃないんだな、魔力の結晶化って。

 

「竜ってのは、たしかに魔力の扱いについては、

人間よりもぼくたち鬼よりも優れてるのかもね。

 

っと。このまま雑談してたら居座っちゃうね。

空が青いうちに切り上げようよ」

 

 鬼娘は続けて、しれっと場を仕切り出した。

 仕切りたがりだなぁ、もしかして富士山とみさむやまの女王ってのは

 話し合いをまとめる必要があったんだろうか?

 

 

「そうですわね。エルさんのこともありますし」

「そうね、名残惜しいけど」

「「うん」」

 エルとリビックがハモった。俺も、だな、と同意する。

 

「そうですか。こっちとしてもまだお話していたいですけど、

皆さんの都合 ありますもんね」

 

「ぼくも、もっとみんなといたいなって思ってる」

「うん」

 ドラゴンたちもどうやら思いは同じみたいだ。

 好感触だったのは嬉しいな。

 

 

「ありがとな。けど悪いな、俺達はここが家じゃないから、

どうしても帰らなきゃいけないんだ」

 

「そう、だよね。わかった」

「また、きて」

 カスクも、どうやら俺達のことは「人間さん」として

 認識したようだ。

 

「約束は難しいな。でも、

あなたたちのことは忘れないと思うわよ」

 カスクの頭をなでながら、柔らかにベルクが言った。

 

「わたしは近くだから、たまに来るかも」

「あんまりあてにするなよ、子供の言うことは」

「むぅ、ひどいなぁリョーマおにいさんってば」

 

「寂しい思いさせたくないだろ、配慮だよ配慮」

「ほんと? ただやたらに駄目ーって言ってる感じするんですけどー?」

 

「その言い方、イラっとすんな。

なら聞くけどさエル」

「なあに?」

 まだ疑いの晴れてない聞き方だな。

 

 

「お前は、カスクのこの顔見ても 同じこと言えるのか?」

 指差したちびっこ水竜は、期待に目を輝かせて

 エルのことをみつめている。

 

「う……」

「な?」

 

「う、うぐぐ。カスクちゃん、あのね。今回はたまたま、

こうしてまた御山にすぐ来られたけど、

 

いつもはあんまり来ることないの。だから、ね。

その……そんなに期待されると……その……困っちゃうんだ、よね。うん」

 

 ものっすごくばつが悪そうに説明しているエル。

 カスク、言葉のおおよそを理解したのか、涙目になってしまった。

 

「ううう……どうしたらいいのー」

 エルの、さっきとは違う意味合いの悲痛な叫びが、青い空にこだました。

 

 

「カスク。人間はね、ぼくたちとはいろいろ違ってるんだ。

カスクのやりたいが、いつもできるわけじゃないんだってさ。

 

カスクにはちょっと、難しいとは思うけど 待ってよう。

まだぼくたちだけで、山から遠いところにでかけるのは早いから」

 エルの叫びから数秒ののち、おそらくは考えた末のアズラッティの言葉。

 

 お姉ちゃんからの説得。ちっちゃい子供は、

 こうやって理由を説明されてもなかなか折れないもんだが、

 ドラゴンの場合はどうなるだろうなぁ?

 

 

「……ここ。いる」

 折れた……だと?! なんて聞き分けの言いちびっこなんだっ!

「ごめんね。ありがとうカスクちゃん」

 謝り、直後にお礼を言うエル。

 

 簡単に会いに来られないことへの謝罪と、

 それを受け入れてくれたことへの感謝なわけだけど、

 理解できるんだろうか?

 

 

「ん?」

 わかってなかったか。

「うん、その。まあ……ありがとう、だよ、うん」

 対応に困る幼女の図。

 

「……うん?」

 頷いて直後首をかしげる。引き続きよくわかってない幼竜の図。

 

「まあ、その辺はお姉ちゃんなり

ゆるさんなりに教えてもらってくれ、な?」

 このままでは無暗に時間を食ってしまうと判断、むりやり話を進めた。

 

 カスク、俺の言葉を「うん」と素直に頷いてくれたので一息つく。

 

 ちっこい水竜によしと頷き返して、俺は自分に発破をかける意味でも

 「じゃ、いこうぜ」とみんなに声をかけて、思い切って歩き出した。

 

 まだじゃあなを言う心の準備ができてない辺り、

 俺の名残惜しさもかなりの物である。

 

 

 他メンバーは、

「それでは、また」

「また、いつか、ね」

「またね」

「それじゃ」

 

「じゃあね、かわいい竜さんたち」

 と、それぞれ挨拶をしてから歩き始めた。

 うまい具合俺が名残惜しさを振り払わせたようだ。

 

 

 でも。

 自分でわかるぐらい歩き方がたどたどしい。

 行こうって言った俺が、一番名残惜しさ振り払えてねえじゃねえかよ、

 俺だけ挨拶できてねーし……。

 

 

「あ、そうだ。言い忘れてたぜ」

 ぴたっと足を止めて言う。自然に言ったつもりだけど、言葉がちょっと硬かった。

 わざと言ったのもろばれじゃねえか……!

 

 くるっと体を反転する。空気を読んだか、他メンバーも同じくだ。

 

「ゆるさん、アズラッティ、カスク」

 ドラゴンたちを呼ぶ。見送ってくれてるらしく、

 彼女たちは動いていない。

 

 

「……またな」

 一呼吸分開いてしまったものの、この三文字 吐き出すことができた。

 

 再び反転、ノンハッタン方向に体を向けて歩き始める俺。

 みんなも俺の後ろに続いている。

 

 

「ぶはーっ」

 緊張解消、肺の中の空気を全部吐き出すふっかい溜息。

 

「お疲れさま、リョウマさん」

 レイナにねぎらわれて、

「ああ、ありがとな」

 

 

 

 自分でわかるほどの疲労声を返すしかない俺だった。

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関連作品。

ゆるさんの押し事 ~ 最強竜凰さんののんびり火山生活 ~
同じ世界の作品、2D6の後半にクロスオーバーする。


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