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ロール16。現れた竜の姿に「え?」 3転がり目。

「ん?」

「どうしたベルク、空なんか見て?」

「なんか、視線を感じてね」

「視線?」

 言われて足を止める。そうしてから目線を太陽を見ない程度の範囲で上に向ける。

 

「なんだ、あれ?」

 いまいちはっきりとは見えないけど、なにかがゆっくり旋回している。

 それも俺達を見張るかのように。

 

「エル、上 見てみろ」

「上、って?」

 疑問符を乗せた声の後、戦闘でしてた足音が止まる。

 俺たちは引き続き動きを止めている。

 

「あれって、もしかして?」

 呟くとガサゴソと音がした。なにするのかと思ってると、

 エルはなにかを懐から取り出したようで、高々と右手を空に翳した。

 

 翳した物を認識したのか、旋回してた物は俺達の行く先

 フォニクディオスの方へと飛び去って行った。

 

 

「エルさん、今のは?」

 レイナに問われてこっちを振り返ったエルは、一つ頷くといったいなにをしたのか答えた。

 

「昨日お土産にもらった御守……えーっと護札まもりふだだっけ? それを見せたんだ。

飛んでたの、たぶん昨日あったドラゴンの一匹だから」

「そうなのか。見せてあっちが帰ってったってことは、なんらかの効果はあったみたいだな」

 

「わたしだって気付いてくれたんじゃないかな?」

 いまいち自信なさげに言うと、エルは方向転換。先導を再開する。

 もう少しフォニクディオスの入り口まではかかる。

 その間、フォニクディオスの動きがどうなるのかが気がかりだ。

 

 この山最強の存在、

 ゆるさんこと竜王ブルカーニュと知り合いになったエルがいるなら、

 悪い方には動かないだろうとは思うんだけどな。

 

 

***

 

 

「なあ? なんであいつら、通せんぼしながら近づいて来るんだ?」

 あれから少し。一本道だから当然かもだけど特になにもトラブルなく、

 フォニクディオスの入り口に差し掛かったところだ。

 

 俺の言葉の通り、視線の先、勾配の始まった辺りから、

 なにかそう大きくない生き物が三匹、

 まるで先には行かせないと言わんばかりに、

 横一直線に並んで歩いて来ているのである。

 

 見た目は、だいたい俺の膝に届くか届かないかぐらいの高さの、

 ドラゴンを連想できる顔。しかしこの三匹、どの個体も柔らかそうで、

 とても戦闘をこなせるようには思えない。子供なんだろうか?

 

 

「あ、ゆるさんとカスクちゃんと……」

 まずこの発言からびっくりしたけど、

 一拍置いてエルの口から飛び出した言葉には、更に驚いた。

 

「ファーストキス泥棒」

 そのかみしめるような苦々しい声色に、エル以外の全員から

 「え?」っと言う驚きと疑問の声が出ていた。

 

「さっきも言ってたけど、ファーストキス泥棒って……なに?」

 あっけにとられた調子のベルクに、エルは「ん……」っと小さく声を漏らすだけで

 具体的には話してくれそうにない雰囲気をかもし出した。

 

 この言いぐさから察することはできる。なんらかの理由で、

 意図しないことに初めてのCHUをあの三匹の中のどれかに奪われたんだろう。

 

「ファーストキス泥棒ってのも気になるけど、それよりも。

なあ、あれのどれがゆるさんなんだ? 竜王って感じの奴は、

一匹たりとも見当たらないんだけど」

 

「そうですわよね」

「どれもかわいいもんね」

 

 レイナ 百鬼姫なきりめと続いたリアクションに、

 ベルクとリビックが同意の声を上げている。俺も「だよなぁ」と

 疑問をこめつつ同意した。

 

 

「え? ゆるさん? あの赤っぽくて黒っぽいドラゴンだよ」

 なにをおかしなことを、とでも言いたげなエルのきょとんとした答え。

 

 

「え?」

 俺の声。たしかに赤が濃い赤黒のドラゴンが一匹いる。

 他の二匹は濃い目の水色と、白に水色を少し足したようなほぼ真っ白の、

 三匹の中で一番小さな奴。

 

「本当……ですの?」

 呟くような問いかけの声。

「うん」

 あっさりとしたエルの声。

 

「ほんとに、なんだよね?」

 鬼娘の再度の問いにも、「そうだってば、そんなに信じられない?」と

 またクルっとこっちを向いて、ちょっとむっとしたような顔である。

 

「ごめんねエルちゃん。ぼくたち、竜王って言葉で思い浮かべるドラゴンは、もっと大きいんだよ」

 リビックがエルのフォローに回っている。

「あんなにかわいらしいなんて思わないわよ、普通竜王なんて聞いたら」

 困ったようなベルクの声にそっちを見たら、右手で前髪をかき上げて

 額を抑えていた。絵面的には、前髪と額の間に右掌が差し込まれてる状態だ。

 

 

「エルさん、そう怒らないであげてください。あなたのお父さんお母さんだって、

わたしが竜凰だってわからなかったんですから、ボルカディアの外から来た

人間さんじゃ余計わからないですよ」

 

 赤黒いドラゴンから、優しげな声が発された。

 その言葉は声色にたがわず気遣いのある物で、俺達をフォローする内容だ。

 

「なるほど、たしかにこりゃ」

「ゆるさん、ですわね」

 俺の心を読んででもいるように言葉を続けたレイナ。

 一瞬驚いたものの一つ頷く俺だ。

 

 

「人間さん、か。やっぱり無害そうな人間って、『さん』つけちゃうよねぇ」

「特に友好的だったりすると、呼んじゃいますね。……あら、あなたはもしかして

人間では、ないんですか?」

 

 百鬼姫なきりめの言ったことに思わず反応した、って感じなんだろうか。

 頷いたものの、鬼娘が人外なことはわかってなかったらしい。

 

「なるほど、無害もしくは友好的な人間には『さん』をつけてたのか」

 なにを基準にしてるのか、思わぬ形で知れたな。

 

「うん、ぼく 鬼だよ」

 自分の角を右手で指差して答えた百鬼姫なきりめ。それに

 「鬼。話には聞いたことがありましたけど、あえるなんて思いませんでした」と

 驚いた様子のゆるさんである。

 

 

「鬼? ぼく、聞いたこともないよ」

 水色の方が目をぱちくりさせている。なるほど、こいつがファーストキス泥棒なんだな。

 

「アズラッティちゃんは、もう少し後になってから聞くことになると思いますよ」

「ふぅん」

 面白くなさそうな答え方の水色の方、アズラッティだ。……

 よく一発で覚えられたな俺。

 

「面白いめぐりあわせだな。ぼくっこの人外にこうも続けて出会うことになるとは思わなかったぜ」

 

「「ぼくっこ?」」

 当人から同時に問われたので、「自分のことをぼくって言う女子のことだ」

 と軽く説明した。

 

「そうなのかー」

 百鬼姫なきりめが納得したような感じに相槌打ったので、

 「まあ、あまし一般的じゃない呼び方だけどな」と補足。

 

「なるほどねー」

百鬼姫なきりめ。その訳知り顔やめろよ」

 

「だってー」

「ニヤニヤすんな」

 みなまで言わせないため、言葉を差し込む。

 

 

「それで冒険者さん。どんな御用ですか?」

 ほぼ真っ白のちっこい竜、消去法でカスクって名前のとエルが、

 なにやら戯れ始めたのをしり目に、ゆるさんが本題であろうことを尋ねて来た。

 

「この山に護札まもりふだがあると思うのですが、それを十五個ほどいただきたいのですわ」

 十五と言う数は勿論、依頼の文の十個と俺達五人の分である。

「それなら飛べる竜たちに持ってきてもらいましょうか?」

 

「ありがたい申し出だけど、今回は自分で取りに行きたいのよ。

初依頼のが一人いるからね」

「よく、わかりませんが。そちらの思いがあるならそっちを優先しましょう」

 

「話が分かるわね。手がすいてるのがいれば、

どこにあるのかを案内してもらえると助かるけど……?」

 サクサクと進んでいく交渉。意思疎通ができる相手と場数もあってか、

 ベルクの言葉選びに迷いがない。

 

 

「ちょうどいいですし、わたしたちが案内しますよ」

「いいの? あなた、この山最強って聞いたんだけど。

つまりそれってここのあるじってことじゃない?」

 驚いた調子のベルクに、ゆるさんはかまいませんよとあっさりだ。

 

「むしろこの山の中でのことですし、わたしがついていれば問題ありませんから」

「なるほど、言われてみればそうね」

 フフフと微笑したベルク。雰囲気的には、こいつは一本取られたな、

 ってところだろうか?

 

 ーーあ、そういえば。富士山とみさむやま百鬼姫なきりめとゆるさんで

 山のあるじコラボじゃねえか。……いや、

 まあ……どうでもいいことではあるんだけどさ。

 

 

「こうなると、エルをどうするか、だけど。どうする」

 自分の中で気を取り直して、クロス・アエジスメンバーに向かって聞いてみた。

 エルは引き続きちっこいのと戯れ中である。

 

「ぼくたちじゃなくてエルに聞けばいいのに」

 微笑を含んだ声でそう言うと、そのまま百鬼姫なきりめは「エル?」と声を書けた。

 

 鬼娘に声を賭けられて、エルは「なに?」と顔だけこっちに向けた。

「ぼくたち、ゆるさんたちに案内してもらって御守取りに登るんだけど、

エルはどうする? 帰る? それともついて来る?」

 

「いく」

 即答だった。

「決まりだね。じゃ、竜王様。案内よろしくね」

 

 鬼娘の軽口に、「わかりました」と苦笑したような声で答えると、

 ゆるさん アズラッティ そしてカスクの順に俺達に背を向け、ドラゴン三匹は

 まさかの徒歩移動を開始。

 

 

「歩きなのかよ」

 俺はちょっと面喰ったんだけど、他メンバーはエルも含めて

 不思議そうな視線を俺に向けて来た。

 

「来る時歩いて来たんだから、行く時も歩いて行くの、あたりまえじゃない?」

 エルに言われて、そういうもんかなぁ、といまいち納得できない俺。

 なんとも言えない空気が俺達の間を流れた……。

 

「わたくしたちが徒歩なのですから、彼女たちが飛んでしまうと、

案内役としては距離が開いてしまいますし、その配慮かもしれませんわよ」

 そのなんとも言えない空気が一秒ぐらいだろうか続いた後、レイナが言ったひとことは、

 俺が納得するには充分だった。

 

「たしかにそっか、なるほどな。わり、変な空気にしちまって。いこうぜ」

 俺がスッキリしたことで、

 完全に空気のよどみみたいな雰囲気が消えた感じがする。ほっと一息だ。

 

 

 

 そうして俺が仕切る形で、クロス・アエジスプラスエル・クレインブリッジは、

 山の主たるドラゴンを歩いて追いかけた。

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関連作品。

ゆるさんの押し事 ~ 最強竜凰さんののんびり火山生活 ~
同じ世界の作品、2D6の後半にクロスオーバーする。


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