ロール5。みんな揃ってお人よし。 1転がり目。
「さてと、だ」
初の6ゾロ目の感動をかみしめたところで、もう一つ 特殊能力について聞いた時に沸いた疑問を尋ねることにする。
「なんでしょうか?」
改めてコロコロちゃんを見たことで、なにかあると察したんだろう。なので、俺は要件を伝える。
「能力の詳細がはっきりとはわからないわけだよな、現状」
「はい」
あっさりと頷く。
「その場合ってさ。いざ、使う時 どうするんだ?」
当然の疑問だろう。せっかくの変身能力なんてドキドキワクワクな物だ。
いざ使いたいとなった時、使い方がわかりませんでは宝の持ち腐れもいいところである。
「ああ、なるほど。たしかにもっともですよね」
うんうんと、何度も頷きながらそう言うコロコロちゃん。予測済みですと言わんばかりだ。
ーーなら最初から詳細と使い方を教えてもらいたいもんだ。
「その時になれば、体の奥底から理解できますよ。沸きあがって来るように、使い方が頭に流れて来る。そうなってます」
「神様ってのは、そんなことまで決められるのかよ?」
驚き半分呆れ半分で言うと、フフフと自慢げに表情を綻ばせた。
「ですけど、女神の恩恵が出た時でもないと、ここまで決めるのはむりです」
「なるほどな。受ける側のみならず、与える側にもメリットがあるんだな」
補足に頷いて言うと、「そうですね」と肯定の言葉。
「にしても、そのシチュエーション。演出過多じゃないか?」
よくとっさに思いつくもんだと感心する。
「燃えません? そういうのって。『わかる、わかるぜ。この能力の使い方が……!』ってシチュエーション」
燃えなきゃ嘘だろ、とでも言いたそうなしたり顔で 女 神 様 はそう言った。
たしかに。その主張には大きく頷きたい。
ーー相手が女神様でなければ、な。
「まったく。新聞の押し売り知ってたり熱い場面を瞬時に思い浮かべたり。
俗っぽいな、ほんと。感心するやら呆れるやらだぜ」
純粋に面白いのと苦笑いとが混ざった、四分の三笑いぐらいの顔で俺は返した。
「あなたの元いた世界が面白いのが悪いんじゃないですか」
「なんでほっぺた膨らませられなきゃならないんだよ? おまけにそれ、世界って言うより日本の 更にサブカルチャー限定だろ」
「いかにもです」
「なぜそこでふてぶてしく頷く……?」
ともかく、と話を軌道修正する。
「その話し。信じていいんだよな?」
「その話し? どの話です?」
「能力使用に関するところだ。信じたのに使おうとしたらなにもわかりませんでした、はごめんだぞ」
「んもぅ。わたしと、女神の恩恵を信じてくださいよぅ」
眉をハの字にするんじゃないよ、この小動物女神はっ!
あやうく頭に手をぽむっと置くところだっただろうがっ! 頭サイコロ帽子乗っかってるけどさっ。
「わかった、信じるよ」
やれやれ、の気持ちが声に出た。
「よかったです」
安堵の息の混じった声、そしてその声色に違わない表情で、コロコロちゃんは言った。
ほんと。クルクルよく表情かわるよな、この娘。
「それじゃあ。名残惜しいですけど、今回の賽の目暗幕はここまでですね」
はぁ、と 本当に名残惜しそうな溜息を吐いた。
「そんな重苦しい息吐いてると、運気が逃げるぞ」
ちゃかしてみたら、
「そっそれはこまりますっ」
本気で慌て始めた。
「おいおい、ダイスの女神が運に目をまかせるのか?」
更に追撃で軽口を投げたら……あれ、なんか しょんぼりしちまった。
「そうです。わたし……駄目神ですから」
「あ、え。その……わりい。ちょっと……からかった、だけだぞ」
本気で落ち込んじまったから、こっちまであたふたしちまったじゃねえかよ。
「でも。そうじゃなければ……わたし。いっしょに女神の恩恵を喜べませんでした。だから……これでも、いいのかな。なんて」
少し元気の戻ったような、それでも苦笑のような笑い顔。
「根本的には前向きなんだな」
つられたか、俺の口が笑みの形に変わっていた。
「落ち込んでたら運気が逃げる、ですよね?」
「そう。だったな」
そう言って、俺達は ふっと笑い合う。
「じゃ、時間。動かしますね」
「わかった。頼む」
「はい。それじゃ、また」
ぺこりと頭を下げて、ダイスの女神は俺に背を向け 出て来た時と同じように、
灰色の空間に まるで初めからあったように現れた黒いドアを開けた。
カチャリ。一般家庭のドアが閉まるような小さく軽い音を残して、黒いドアは姿を消した。
「さて。いったい次はいつ来ることやらな」
呟いた直後、灰色の空間がぐにゃりと歪む。
「くっ……」
いっきにホワイトアウトする世界に、思わず目を瞑ってしまった。二度目で慣れろってのは、むりな話だろう。
いや、まあ。空間歪むのが珍しくってつい見ちゃってる俺が悪いんだけど、俺みたいな一般人からしたら、この減少珍しがらなくなるには時間かかるんだよ。
……きっと。たぶん。見慣れると思うんだよ。これにな。
「おわっっ」
通常空間 ーー この言葉、まさか自分で言う日が来るなんて思わなかった。かっこいいよな、こういう言葉。さっきも言った気がするけど……。 ーー に戻ったら、俺 なんでか階段を上りすぎた時みたいに、ガクってなってしまった。
不意打ちだったんで、勢いよく座り込むことに。結果セルフ膝カックンで正座である。これには思わず苦笑い。
リビックぶっ倒れたまんまだし、女子二人は前行ってて見てないしで、助かったぜー。
「ん? ……そっか。なんで俺がセルフ膝カックンしたのかと思ったけど。こいつ背負うつもりで、しゃがもうとしてたんだわ」
思い出して合点が行ったけど、やっぱりかっこわるいもんはかっこわるい。
正座からしゃがみになって、リビックの両脇を抱える。
「よっ。って、軽っ!」
コロコロちゃん補正、思った以上にかかってんだな。
元の俺なら、人一人なんて重くて持ちあがらないところだけど、ひょいっと まるでソフビ人形でも持つみたいに持ち上げられた。
「勢いつきすぎて、危うくひっくりかえるところだったぜ。二連続かっこわるいムーブするとこだった」
ふぃぃと一息ついてから、それでもおっかなびっくり立ち上がる。
リビック、軽い。驚きの軽さ。
「って、この体勢じゃ背負えないな」
持ち上げられることがわかったので、いったん下ろす。
えっと、背負うには? リビックの前に回って、それから後ろ手で持つのか。
我ながらスキルのいることしようとしてんな。
「いよっっと。うし、背負えたな」
背中に重みを感じてきっちり背負えたことを確認。慎重に歩き出す。
カチャリ、カチャリ。ちょうど腰の辺り、動くたんびに左右から音がする。
これは……ひょっとして、剣が鳴ってるのか?
そうだよな。腕前を見るまでもなく倒れたけど、こいつ 双剣使いなんだもんな。
「双剣、か」
改めてかみしめたその言葉。ロマンあふれるその言葉。
使い手ぶっ倒れてるし、なんか鞘の下側俺の太腿にちょいちょい当たって微妙にうっとおしいし……。
「借りちまうか」
再び下ろす。こんだけ動かしても起きないって……こいつ、大丈夫なんだろうか?
実は急性アル中で死んでるんじゃないのか?
……いや、大丈夫か。しっかり体温は人並みに……いや、それより少し熱いぐらいあるし。酔っぱらったせいだろうなちょっと熱いのは。
「えーっと?」
ズボンの腰には、鞘がぶれるのを防ぐような配置で、上 鯉口のすぐ下のところと、下 刃の先端より少し上のところに来る想定でだろう、革製の持ち手がついている。
なんで想定でなのかと言えば、このズボンだと剣の刃部分の長さに合わないからだ。
柄がリビックの脇腹辺りに来ているため、こいつの身長からしてみると、けっこう邪魔くさいんじゃないだろうかこの剣。
「こうか」
持ち手みたいになってるところを、少しだけ引っ張って幅を広げ とりあえず二本のうちの左の一本を引き抜く。
「剣って、けっこう長いんだな。刃部分だけでも1M悠に超えてるぞ」
持って見てわかったのが、これだ。俺はリビックに比べれば背は高い。
とはいえ手に持ってる今の状況だと、見てるだけとは違う印象になった。
改めて俺の服を見る。もしリビックのみたいな剣ストッパーみたいなのがなかったら大変だからだ。
よし、無事あった。左腰の持ち手の内側の空間に、角度を気にしつつ、そーっと鞘を差し入れる。
お、俺の方はちょうどよく鯉口にズボンの長さが合ったぞ。
同じ要領で右側の方もリビックから抜き取って右腰に刺す。
「よし、これでいいな。ん? なんだ? 後ろから視線が……」




