エピローグ
シロちゃんと俺の縁を斬り裂いた。
気がつくと庭の祠の前に倒れていた。
涙顔のシロちゃんの顔が頭から離れない。
頭を左右に強く振り家に入る。
家の居間には空狐のナラクさんがいた。
「終わったようじゃのぉ。なんだ上手くいかなかったのか?」
「いや、全て上手くいったよ。ナラクさん、本当にありがとう」
「上手くいったのなら、なんでナギは泣きそうな顔をしておるのじゃ?」
そっか、俺は泣きそうな顔をしていたのか。
気が付かなかった。
俺はその場で跪いた。
嗚咽が漏れる。
「なんじゃ、泣きたいのなら胸ぐらい貸すぞ。その代わり漫画をまた買うんだぞ」
俺はナラクさんにしがみついて、子供のように泣きじゃくった。
「全くお主は子供じゃのぉ」
目を真っ赤にして俺は口を開く。
「面目ございません」
「まぁ良い良い。泣きたくなる時もあるじゃろ。それよりお薦めの漫画を買ってくれ」
「わかりました。いくらでも買いますよ。それにしてもナラクさんは縁とか関係なくこちらにいられるんですか?」
「妾は空狐じゃからな。前にも言ったが実体はあって、実体が無い。全にして無。無にして全じゃ」
「まぁナラクさんが居てもらえるだけで嬉しいですけどね。いつまで居てくれるんですか?」
「妾は気分屋じゃ。明日の事なんか分からんよ」
「わかりました。頑張って面白い漫画を探してきます」
「おぉ!ナギは分かっておるのぉ。当分はいる予定じゃ」
「それより、眷属になれる家を回ろうと思いまして。狐神界と眷属の血筋を斬り裂いていこうと思います。ナラクさんは付いてきてくれませんか?」
「妾はイヤじゃ。ここでグータラしたいのじゃ」
「そんなぁ、1人で日本を回るの寂しいじゃないですか。お願いしますよ」
「それならもう少し待てば良いのじゃ。そうすれば問題はないのじゃ」
「何を言ってるんですか?待ったところで何もないですよ」
その時、来客を告げるチャイムが鳴った。
俺はナラクさんとの会話を切り上げて玄関を開ける。
そこにいたのは銀色の髪の女性だった。
上は白色、下は紫色の巫女装束である。
身長が160㎝色白の目鼻立ちがしっかりしているお目々ぱっちりの可愛い女の子が怒り顔でこちらを睨んでいる。
「な、なんで……」
「なんでじゃないですよ!本当に怒っているんですからね!」
俺は夢を見ているのか。
そのまま目の前の女性を強く抱きしめた。
「こんな事をしても許しませんよ!ちゃんと反省してください!」
「なんでシロちゃんがいるの?でもそんなのどうでも良いや!」
俺はシロちゃんを強く抱きしめて唇を合わせた。
「あらあら、母親の前では少し控えてもらうと嬉しいんですけど」
シロちゃんの後ろにサトミさんがいた。
慌ててシロちゃんを離す。
「まぁ良いでしょ。お腹が空いたので何か食べさせてくださいね」
そう言ってサトミさんは家に入っていった。
居間で腹を抱えて笑っているナラクさん。
どうやらナラクさんには、この結果がわかっていたようだ。
ナラクさんは笑いながら口を開く。
「ナギは揶揄うと楽しいのぉ」
俺はイラッとしながらもナラクさんに確認する。
「なんで縁を斬ったのにシロちゃんがここにいるんですか?それにサトミさんまで」
ナラクさんが笑いをやめて説明してくれる。
「お主が斬ったのは神道の縁じゃよ」
「神道の縁?」
「いわゆる神社の方だな」
良く分からん。
「金狐と銀狐は神道系じゃ無くなるのじゃ、仏教系だな。だから神道系の縁を切っても仏教系の縁は残るってことじゃ。お主の技である力徳流刀技は神道系なんじゃよ」
まぁ良く分からんがシロちゃんといられるなら良いか。
まだプリプリ怒っているシロちゃんに俺は言った。
「今度は泣き顔じゃなく、また今の怒り顔でもなく、笑顔を見せてほしい」
キョトンとしたシロちゃんは、その後俺に満面の笑みを見せてくれた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
あとは後書きと反省文となります。
面白かった方は下の星評価とブックマークをお願いいたします。星をいただけると励みになります。





