涙顔のさよなら
神格管理局の地下室からシオリさんを連れて出てきた。
神格管理局の地下にシオリさんが囚われていた事を知らない人ばかりだ。
また極秘任務に当たっていたサトミさんが出てきて大騒ぎになった。
神格管理局には局長のユメジさんが来ていた。
神格管理局の騒ぎで慌てて狐神界まで帰ってきたようだ。
神格管理局の局長室で全ての経緯を話す。
妖狐と眷属の縁を断ち斬った事、現実世界に戻ったら全ての眷属になれる家に行き、血筋ごとの縁を叩き斬るつもりと話す。
シオリさんの妖力は全て浄化したため、危険性が薄くなったこと、またシロちゃんが銀狐になったため、黒狐に堕ちた狐を善狐に戻すこともできると説明した。
早速、治療院からカナデが連れてこられた。
シロちゃんの祝詞で灰色だったカナデの髪色が白色に戻った。
今後の野狐の里の対応が変わる事を願おう。
野狐の里にも眷属がいなくなったため、大規模な争いには発展しにくくなったと思う。
一応、終わった。
神格管理局の外に出た。
シロちゃんがお母さんと過ごせる。
シロちゃんとお母さんの安全を確保できた。
眷属同士の争いもなくなる。
満足行く出来である。
竹製の水筒で喉を潤す。
中身は神水である。
陰暦5月5日の午の時に降った雨が竹の節にたまったもので、本当にありがたい水らしい。
相変わらず驚くほど身体の疲れが取れていく。
シロちゃんが笑顔で近づいてくる。
「やっと終わったね。お疲れ、ナギ」
「まぁそうだな。ただあと一つやる事があるんだ」
「何かやり残しあった?」
「おれとシロちゃんの縁を斬ることだよ」
言葉の意味を理解して顔が青くなるシロちゃん。
「なんで、私とナギはこのままで良いじゃない?」
「ダメだよ。例外を作っちゃいけない。それにこの力徳家の力は強すぎる。これからの狐神界には必要ないんだよ」
「それならナギが力を使わなければ良いじゃない!」
「聞き分けてくれないかな、シロちゃん。不必要な強い力があるだけで周囲は警戒するんだ。今度は俺の力を欲して画策してくるやつが出てくる。俺が狐神界にいるとシロちゃんやシロちゃんのお母さんにも迷惑がかかるんだよ」
「そんなやだよ!そんなの勝手過ぎる!」
「妖狐と眷属の縁を斬る時にこの結末は決まっていたんだよ。空狐のナラクさんともそう言う約束で協力してもらったんだ」
「いや、いや、いや、ナギ、やめて!」
近くで俺たちのやり取りを見ていたサトミさんに俺はお願いする。
「サトミさん、少し危ないのでシロちゃんを抑えておいてくれますか?」
無言で頷くサトミさん。
さすが金狐だ。あっさりシロちゃんを拘束した。
シロちゃんは声も出ないようだ。
涙で顔を濡らしながら懇願するシロちゃん。
「俺の最後のお願いを聞いてくれるかな?シロちゃんの笑顔で見送られたいんだ」
首を振ってイヤイヤをするシロちゃん。
最後のお願いは聞いてもらえなかったか。
しょうがない。
俺はシロちゃんと自分を繋いでいる縁を【日日月】で斬り裂いた。
最後に見たシロちゃんの顔は涙顔だった。
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