浄化の光
野狐の里から神格管理局に戻った。
神格管理局はパニックになっていた。
俺たちのせいだろう。
ここにも久礼家の眷属が一人と明智家の眷属が二人いたので、縁を断ち斬る。
サクラさんが怒声をあげる。
「あなた達は何をやってるの!眷属がいなくなるなんてどうすれば良いのよ!早く戻しなさい!」
先程のようにサクラさんをひと睨みしてやる。
口を噤むサクラさん。
俺はそんなサクラさんを無視して受付のカウンターを飛び越える。
シロちゃんも続く。
周囲は誰も声を出さない。
奥にある階段を降りて行く。
地下一階の入り口が鉄格子になっている。
「ちょっとシロちゃん、下がっていてね」
そう言って鍵の場所に力徳流刀技一刀斬を叩き込む。
あっさり開く鉄格子。
そのまま通路を進んでいき奥の階段を降りていく。
シロちゃんに声をかける。
「ここからはシロちゃんの出番だからな。任せるぞ」
「分かっているわ。任せといて!」
シロちゃんの目は気合いが入っている。
これなら大丈夫だろう。
ダメなら俺がシオリを斬るだけだ。
地下二階は広いスペースになっていた。
中央に黒髪の女性。
両手両足に鉄の鎖で繋がれている。
尻尾が六本生えている。
その回りに3メートルほどの結界が張られている。
その結界の横に金色の髪のシロちゃんのお母さんがいた。
結界を張り続けているのだろう。
少しやつれて見える。
シロちゃんが声を上げる。
「お母さん!」
「シロ!なんでこんなところに来たの!」
「お母さんを解放するためよ」
「気持ちはありがたいけど、ちょっとそれはシロには厳しいと思うわ」
結界の中央にいる黒髪の女性が強がり出す。
「なんだいサトミの娘かい。ここを出たら真っ先に腹を食いちぎってやるよ」
サトミさんもシロちゃんを叱り出す。
「ここは子供の遊び場じゃないの。お願いだからもうここには来ないで」
「大丈夫ですよ、サトミさん」
俺の顔を見ても誰だかわからないようだ。
「ご無沙汰しております。力徳ナギです。今はシロちゃんの眷属をやっています」
やっと俺が誰かわかったようだ。
「あらあら、あんな小さい子がこんなに立派になって、おばさん嬉しいわ」
「シロちゃんが失敗したら俺からシオリさんを斬りますから安心してください」
俺の言葉に鬼のような形相をみせるシオリさん。
なかなかの迫力だ。
「ずいぶん夢見がちな坊やだねぇ。できるものならやってもらいたいわ」
「まずはあなたと高仁剛さんの縁を斬らせてもらいます」
そう言って刀を一閃した。
これで眷属はいなくなった。
シロちゃんが俺に声をかける。
「ナギ、もう終わった?次は私の番で良いの?」
「あぁ、次はシロちゃんの番だ。しっかり頼むぞ」
「よし!任せといて!」
シロちゃんは巫女装束の袖を捲り上げる。
気合い十分だ。
シロちゃんが祝詞を唱え始める。
髪と狐耳、尻尾が銀色に光り出す。
そのまま銀色の光りがシロちゃんを包む。
その後銀色の光りが広がっていく。
結界の中央にいるシオリさんが銀色の光りに包まれる。
「うおぉぉぉ!」
声を上げるシオリさん。
それを見て驚くサトミさん。
俺はサトミさんに笑顔を見せる。
「シロちゃんは銀狐になりました。銀狐は月の化身。月の光りには浄化の力があります。シオリさんの妖力が浄化されてるんです。全てを浄化するには、もう少しかかりそうですね」
シオリさんが叫ぶ。
「やめろ!小娘!せっかく溜めた妖力になんて事をするんだ!野狐の里の皆んなに合わせる顔が無くなるわ!」
「シロちゃん、気にするな。破壊するだけの力なんていらないから」
シロちゃんは俺の言葉に頷き、祝詞を唱え続ける。
シオリさんの尻尾の数がドンドン減っていく。
尻尾に妖力を溜めておくんだったな。
もう少しだな。
手足が鎖で繋がれているのに何とか足掻くシオリさん。
涙を流して懇願する。
「やめてくれ!本当にやめてくれ!」
地下室に無情に響くシロちゃんの祝詞。
シオリさんの尻尾が一本になり、その一本も普通の大きさまで縮んだ。
シロちゃんの祝詞が終わった。
俺はシロちゃんの頭に手を置いた。
「お疲れ、シロちゃん。良くやったな」
「ありがとう、ナギ。でもこれで良かったのかな?」
「さあな。この選択が良かったかどうかは、このあとの行動で変わるんじゃないかな?でもこれでシロちゃんはお母さんと一緒にいられるだろ?」
サトミさんにも声をかける。
「サトミさんもお疲れ様でした。これで極秘任務も終了ですね」
「あなた達は何をしてきたの?まるで狐につままれたみたい」
「ここは笑うところでしたかね?」
「私の鉄板のギャグなんだけどね」
俺とシロちゃんとサトミさんは大笑いした。
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