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月光の狐  作者: 葉暮銀
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ただ一心に斬る

次の日の朝、風呂に入り身体を清める。

神界に渡るためである。

シロちゃんにやる事は伝えてある。

ある意味、狐神界のテロリストかもしれない。


神界に渡る。

いつもどおりシロちゃんの小さな社だ。

神刀【日日(ひび)(つき)】を左腰に装備する。

神格管理局に向かう。


受付に神格管理局局長代理のサクラさんとの面会を要請する。

程なくして受付の赤狐(せきこ)に局長代理室に案内される。

部屋に入るとサクラさんと眷属の久礼(くれい)秀一がいた。

入室と同時に俺は特殊な呼吸法をする。

鞘の中で光り輝く神刀【日日(ひび)(つき)】。


俺はサクラさんと秀一さんの間の空間を、気合い一閃斬った。


力徳(りきとく)(りゅう)刀技(とうぎ)一刀(いっとう)(ざん)である。


力徳(りきとく)流刀技では、切れる、切れないとは考えない。

【ただ一心に斬る】

その真の姿は妖狐と眷属の縁すら斬る。


一瞬で身体が消える秀一さん。

周りを見渡し慌てるサクラさん。


「あなたは何をやったの!秀一をどこに行ったのよ!」


俺とシロちゃんはその声を無視して部屋を出る。

後ろから追いかけてくるサクラ。

俺の肩に手をかけたところで、ひと睨みする。

腰が抜けたようでサクラはその場で腰がくだける。


神格管理局の一階で片腕になったゴウラに会った。

こちらを睨んでくる。

ゴウラの身体から眷属の明智葉月との縁が出ているのが見える。

あっさりとその縁を斬り裂く。

ゴウラは何をされたか分からなかったようだ。

他にも眷属がいればその縁を斬り裂いていった。

縁を斬り裂くと眷属はすぐに消えていった。


その次に神界の治療院に向かった。

治療院の受付でカナデの病室を聞く。

病室の中でカナデはまだ憔悴しているようだ。

カナデは俺たちを見たが何も言わなかった。

髪色が灰色になっている。

黒狐に変わりかけているのだろう。

ここでも眷属の久礼(くれい)直人との縁を斬り裂いた。


これで神格管理局側のおおよその眷属との縁を斬り裂いてきた。

騒ぎが広がれば他の眷属も神界に顔を出すだろう。


次に騒がせ山に向かう。

騒がせ山はまだ悪霊が大量に発生している。

悪霊を力徳(りきとく)(りゅう)刀技(とうぎ)光刃(こうじん)(ざん)で蹴散らしていく。

昨晩の房中術で俺の気も上昇しているようだ。

足止めにもならない悪霊を斬り裂いていく。


頂上付近に黒狐のアヤカとその眷属の高仁(こうじん)哲也がいた。

哲也は俺を見るなり、喜びと怒りの複雑な表情をする。


「やっぱり力徳家の者は約束を守らないなぁ。ちょうど暇していたんだ。相手をしてもらおうか」


そう言って俺に斬りかかってくる。

俺の集中力は相当高まっている。

アヤカと哲也との縁を簡単に断ち斬る。

身体が消えていく哲也。

ビックリしたアヤカが野狐の里の方へ帰っていく。


他に数人眷属がいた為、こちらも縁を斬り裂かせてもらった。

次々と消える眷属にパニックになる黒狐達。

皆んな野狐の里に逃げ出していく。

俺とシロちゃんは悠然と野狐の里に向かう。


野狐の里に着くと黒狐とその眷属に囲まれる。

ハヤセとその眷属の上信(じょうしん)隆一の姿も見える。

後ろのほうに尼義(あまぎ)香澄もいる。


俺は集中力を極大まで高めた。

妖狐と眷属の縁を斬り裂いていく。

消えていく眷属に動揺が走る黒狐達。

数分で妖狐と眷属の縁を切り終えた。

ハヤセが腰を抜かしている。


「おい!他に眷属はいないのか?」


俺の言葉に首を横に振るハヤセ。


「なら良いか。じゃあな」


そう言って野狐の里をあとにした。

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