尼義香澄への連絡
神格管理局局長室の沈黙を破ったのはユメジさんだった。
「ナギよ、本気で野狐の里に与するつもりですか?祖父と父親の仇ですよ」
「先程も言ったが俺は時間の無駄が嫌いだ。シロちゃんのお母さんであるサトミさんの行方について話すのか話さないのかどちらかを言ってくれ」
「そういう話じゃないです。親の仇に…」
俺はユメジさんの話を途中で遮る。
「そういう話なんだ。アンタも誤魔化さずにできるかできないかをハッキリ言え!」
ユメジさんは深い息を一つ吐いた。
ゆっくりと口を開く。
「悪いですが地狐であるシロにはサトミの情報を与えるわけにはいかない。せめて気狐にならないと無理です」
「よく分かったよ。それじゃここにいる必要はないな。宣言しておく。神格管理局の依頼は当分受けるつもりはない」
「それは神格管理局と敵対すると言う事ですか?」
「思考が短絡過ぎるんだよ。現在、神格管理局は野狐の里と交戦中だ。そんな事に手を貸すつもりはない。狐神界の中だけで処理してくれ。俺たちは封印されている妖怪の荒行でもしておくよ。今のところは敵対ではない。中立、不干渉だ。状況によってはどうなるか分からんけどな」
「神格管理局を敵に回して大丈夫だと思っているのですか?」
「俺とシロちゃんだけなら厳しいかもな。ただ俺たちの後ろ盾に空狐のナラクさんがなってくれた。その事を忘れないようにな」
そう言って俺とシロちゃんは神格管理局をあとにした。
自宅に戻り、今後の方針をシロちゃんと話し合う事にした。
封印されている妖怪の討伐で霊片を集める。
これはシロちゃんが気狐になるために必要な事だろう。
あとは他の眷属の家に出向く事を考えた。
狐神界の中であろうと眷属同士が命のやり取りを行っている。
これはやっぱりおかしい。
妖狐同士でやり合うの事は止められないが眷属同士の争いは止められるのではないか?
まずは尼義香澄に連絡する事にした。
香澄に電話をするとすぐに繋がった。
「ナギが連絡してくるなんて嬉しいわね。野狐の里に協力してくれる気になったの?」
「悪いが野狐の里をそこまで信用はできないよ。
野狐の里に与する眷属の家と話し合いを持ちたくてな。高仁家と上信家と尼義家の代表者と会いたい。お前なら連絡先がわかるだろ」
「あら、そんな事を考えていたの?無駄な事になると思うわよ。それでも良ければ教えるけど。野狐の里の眷属で一番格上なのが高仁家ね。まずはそこに行ってみれば?連絡先を教えるわね」
「了解だ。香澄も狐神界の抗争には参加するのか?」
「たぶんね。まぁ私はあまり戦力にならないから後方支援だけどね」
「怪我には気をつけろよ。じゃ連絡先をお願いな」
そう言って電話を切った。
少し経つと携帯アプリに高仁家と上信家と尼義家の住所と電話番号が送られてきた。
高仁家の住所は横浜か。車で行くか。
取り敢えずは電話で約束を取り付けるか。
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