サクラさんとの交渉
「シロちゃん、どう?まだ妖気は感じられるかな?」
「もう大丈夫みたいね。煽て山周辺からは妖気を感じないわ」
「取り敢えず疲れたから帰ろうか」
「神格管理局に報告してからかな。もう少し頑張ってね、ナギ」
それにしても悪霊を斬りまくった。
竹製の水筒から神水を飲んで喉を潤す。
身体の調子も良くなる。
神水って凄いな。
危ない成分は入っていないだろうな。
こんなに効き目があると、さすがにちょっと不安になるわ。
シロちゃんと神格管理局にぷらぷら向かう。
まだ他のところでは悪霊が大量に発生しているのかな。
神格管理局で依頼終了の報告を行う。
今回は応接室ではなく二階の局長代理室に案内される。
室内にはサクラさんと眷属の秀一さんがいた。
応接セットのソファに座り、シロちゃんが任務終了の報告を始める。
「煽て山の悪霊退治をしてきました。頂上付近にこの間と同じ玉が埋められていました。こちらがその玉です。またその場所にて野狐の里の黒狐のハヤセさんとその眷属の上信隆一さんと遭遇しました。今回の騒動は野狐の里が首謀して行われています」
「ありがとう、助かったわ。あなた達に怪我はない?」
「野狐の里の人とは交戦しませんでしたので大丈夫です」
サクラさんとシロちゃんの会話を聞いていた俺が口を挟む。
「サクラさん、ちょっと良いですか?今回、俺は黒狐の眷属である上信隆一から野狐の里に協力するように頼まれた。また先日、野狐の里の眷属になっている尼義家の女性からも同じように勧誘されているんだ」
神妙な顔になるサクラさん。
俺は気にせず話を続ける。
「その勧誘をしてきた尼義家の女性は野狐の里に与すれば、シロちゃんのお母さんの行方について教えてくれるって言うんだよ。神格管理局にいても、シロちゃんが気狐になるまで教えてくれないって言われているからね。それならば野狐の里に協力するのもありかなって思ってね」
サクラさんは表情を変えず口を開く。
「それは貴方が神格管理局と敵対するって事ですか?」
底冷えのするような声だった。
オロオロしだすシロちゃん。
俺は平静を装い返答する。
「まだ敵対するとは言ってない。でもその可能性があるって事だ。いつまでシロちゃんのお母さんのサトミさんの行方を隠しておくつもりなんだい?母親と娘を引き離しておいて、なにも教えないなんて酷いと思わないかい?」
「私は地狐であるシロにサトミの居場所を教える許可を与える権限を持っていません」
「それならば許可を与えられる人と交渉するしかないな。局長代理じゃ話にはならないって事だ。俺は早急に神格管理局局長のユメジさんに面会を求めたい」
サクラさんの隣りで静かに聞いていた秀一さんが声を荒げる。
「地狐風情の眷属が何を偉そうにほざいておる!その減らず口を早く閉じろ!」
「別にあんたに話しているわけじゃないんだよ。横から口を出さないで欲しいな。俺の事を地狐風情の眷属と言ったな。それならば俺が野狐の里に与しても問題ないな。所詮、地狐風情の眷属だからな」
サクラさんが秀一さんを嗜める。
「秀一、落ち着きなさい。ナギさん、貴方の話は理解しました。早急に局長のユメジに連絡をする事にします。その返答がくるまでは軽率な行動は控えてください」
俺は神妙な顔のサクラさんに戯けた表情で言葉を返す。
「まぁ今日はこの辺で良いかな。ただ、おれは気が短いんだ。3日以内に返事をくれ」
眉がピクリと動くサクラさん。
「わかりました。3日後の朝にまたここまで来てください」
これで少しはシロちゃんのお母さんの情報を得れるかもしれないな。
交渉が終わった俺は気になっていた事を聞いてみる。
「それより貴女の娘のカナデはどうなったんだ?眷属の直人も酷い有様だったけど?」
表情をあまり変えないサクラさんの顔が暗くなる。
「現在、カナデは黒狐に堕ちかけています。治療院にて処置をしています。眷属の直人はショックが強かったらしく自宅で療養中です」
「そうなんだ。取り敢えず命は助かったようで良かったな」
そう言って俺とシロちゃんは神格管理局を後にした。
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