神格管理局ナンバー3
任務の終了報告と洞妖窟で得た霊片の納品にきたのだが、神格管理局の受付は騒乱状態になっている。
引き返すか悩んでいると受付の赤狐が近寄ってきた。
有無を言わせず応接室に通される。
応接室のソファに座っていると神格管理局局長代理のサクラさんと、その眷属の久礼秀一さんが入室してきた。
サクラさんはソファに座ると慌てた様子で話し始める。
「あなた達を待ってたのよ。狐神界の至る所で悪霊が発生しているわ。たぶん騒がせ山の時のように憑代が使われている。野狐の里の連中の仕業の可能性が高いと思うわ。あなた達に討伐依頼を出したいのよ。この依頼も獲得神力の特典を付けさせてもらうわ」
シロちゃんはサクラさんの言葉に頷いている。
「分かりました。早速、討伐に行きたいと思います。どこに向かえば良いですか?」
「今、一番悪霊が多く出現しているところが騒がせ山なの。地狐に昇格したばかりのシロに行かせるのは反対があるんだけど、眷属が力徳家だからね。期待しているわよ」
サクラさんがそう言った瞬間に応接室の扉が勢い良く開く。
入って来たのは狐耳の男性だ。
黒色の袴を着ている。
身長は俺と同じ180㎝弱くらいか。
太い眉と目鼻立ちがしっかりとしている。
外見は20代後半くらいに見える。
意志の強そうな妖狐だった。
後ろには身長が155㎝ほどの女性を連れている。
黒髪で大人しそうな少女だ。
儚い印象を受けてしまう。
狐耳の男性が大声を上げる。
「サクラさん!どうして私が騒がせ山じゃないんですか!まさか地狐になったばかりの小娘に行かせようとするとは何事です!」
頭を押さえるサクラさん。
そして諭すような声を上げる。
「ゴウラさん、その話は先程終わったはずですよ。早く自分の担当地域に向かってください」
「だからそれが納得しないと言っているんです!私達を騒がせ山の担当にしてください!」
ゴウラと呼ばれた男性の声はとても大きい。
耳が痛くなるほどだ。
シロちゃんが口を挟む。
「私達はどこでも構いませんよ。ゴウラさんが騒がせ山で良いのではないですか?」
サクラさんは逡巡した後、ゴウラに告げる。
「分かりました。それではゴウラ、あなた達が騒がせ山に向かってください。野狐の里に近いので気を付けてください」
「初めからそうすれば良いのだ。地狐如きを一番激しい場所に送るのがおかしいのだからな。それでは失礼するよ」
そう言ってゴウラは颯爽と応接室を出ていった。
儚い印象の女性は一礼してその後を追っていく。
サクラさんがこちらを見てため息をつく。
「ごめんなさいね。あなた達は騒がせ山でなく煽て山方面に向かってもらえる?そちらの方面も悪霊が多く発生しているから」
「分かりました。煽て山方面ですね。早速行ってみます」
シロちゃんはソファを立ち上がり応接室を出る。
俺も後をついていき、シロちゃんに話しかける。
「さっきの男性は誰なの?」
「神格管理局のナンバー3の気狐のゴウラさん。隣りにいた小柄な女性は眷属の明智葉月さんね」
なるほど、ゴウラは俺たちにはあまり良い印象を持っていないみたいだった。
神格管理局のナンバー3か。
そんな上の人に睨まれているとは。
面倒な事にならないと良いな。
そんな事を思いながら煽て山に向かった。
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