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月光の狐  作者: 葉暮銀
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再び富士の樹海の洞妖窟へ

「ナギ!こないだ行った富士の樹海の洞妖窟に行くわよ!」


シロちゃんの言葉にビックリして言葉を返す。


「ちょっと待ってよ、シロちゃん。いったいどういう事?」


「神格管理局に行ったら局長代理のサクラさんに依頼されたの。カナデが富士の樹海の洞妖窟に行ったかもしれないから見てきて欲しいって」


「あらら、カナデさん、俺たちが富士の樹海の洞妖窟で霊片を集めた事がわかったんだ」


「神格管理局の職員が教えてしまったみたい。カナデが怪我をする前に連れ帰ってきて欲しいって」


うーん。

気が進まないが行くか。

でもカナデはおとなしく従ってくれるかな?


「了解。今から行く?夕方には洞妖窟には着くと思うけど」


「急いだほうが良いわね。カナデの眷属の久礼(くれい)家の場所は東京だから仙森市より富士の樹海が近いわ」


買っておいたパックのご飯や缶詰めなどをリュックに積めて車に積み込む。

空狐(くうこ)のナラクさんはお留守番だ。

というよりナラクさんはお留守番しかする気がない。

自由人ならぬ自由狐か。

俺は富士の樹海の洞妖窟に向けて車を走らせた。


シロちゃんはTシャツに短パンにスニーカーの装い。

短パンから伸びる白い脚が眩しい。

シロちゃんは車の助手席で喜んでいる。

俺のスマホをBluetoothで車のスピーカーに繋げてハードロックを聴いている。

ハードロックが好きなお狐様ってどうなんだろう?


昼過ぎには富士の樹海の遊歩道に着いた。

周囲の目を確認して遊歩道を外れていく。

以前と同じ歩きにくい溶岩の地面だ。

少し前を行くシロちゃんに声をかける。


「狐の姿に戻らなくて大丈夫か?」


「地狐になってから神力が上がっているから、これくらいの消費は問題ないわ」


そう言って先を進むシロちゃん。

尻尾は無いが、シロちゃんのお尻に(いざな)われて道中を進む。


遊歩道を離れて二時間ほどで前回来た洞妖窟の結界の入り口に着く。

周囲を見ると荷物が置いてある。

たぶんカナデ達の荷物だろう。

やっぱりここに来ているみたいだな。


バットケースから神刀【日日(ひび)(つき)】と【月月(つきづき)()】を取り出す。

シロちゃんは巫女装束に着替えている。

祝詞(のりと)を唱えるために必要な着替えだ。


シロちゃんがゆっくりと祝詞を唱え始める。

空間が歪み俺たちは洞妖窟に侵入した。


洞妖窟に入ってすぐに大量の土蜘蛛が出迎えてくれる。

大きさはやはり以前より少し大きめか。

体長が30㎝程の土蜘蛛ばかりだ。

近くにカナデ達の姿が見えない。

前回来た時みたく結界の出口だけで戦う訳にはいかないか。


「どうする、シロちゃん?洞窟を進んで行かないとカナデ達は見つからないぞ」


「必要な土蜘蛛だけ倒して先に進みましょう。危なくなったら撤退するってことでどう?」


「了解!安全第一ね。道を作るよ」


「お願い、品質第二、生産第三ね」


冗談を軽く受け流し、前方に力徳(りきとく)(りゅう)刀技(とうぎ)光刃(こうじん)(ざん)の刃を飛ばす。

光刃斬の前面の殲滅力は優れている。あっさりと前方に道ができる。

それでも土蜘蛛の量が多い。気の無駄撃ちは避けていきたい。

蜘蛛の糸は狐火と気を通した刀で対処しながら洞妖窟の奥に進んで行った。

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