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月光の狐  作者: 葉暮銀
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シロの視点(地狐へ)

ナギと2人で狐神界の中央にある神格管理局まで歩いていく。

少しずつ気持ちが落ち着いていく。

もう大丈夫だ。

気持ちが落ち着いたところで木造二階の神格管理局が見えてきた。


神格管理局の霊片納品所の受付に行く。

納品する量が多くなる話をすると傍にある机に出すように言われた。

指示通りに神袋から霊片を取り出していく。

途中から受付の赤狐(せきこ)の女性が焦り出した。


納品する霊片の5分の1ほど出したところで隣の部屋に連れていかれる。

そこに残りの霊片を出した。

唖然とする受付の女性が私達を応接室に案内する。


ソファに座っていると神格管理局局長代理のサクラさんとその眷属の久礼(くれい)秀一が入ってきた。

ナギに自己紹介をしている。

サクラさんが私を見て詰問調で言葉を発する。


「今日は貴方達が持ち込んだ霊片について聞かせてもらうわ。何をすればあれだけの霊片を納品できるというの」


サクラさんを相手にすると緊張してしまう。

頑張って口を開く。


「富士の樹海の(どう)(よう)(くつ)で土蜘蛛を退治してきました」


サクラさんは唖然とした。


「あの特A級の荒行をしてきたって事!信じがたいけど話だけど霊片があるわね。秀一、あなたなら同じ事ができる?」


「無理すればやれるかもしれませんが、やろうとは思いませんな。土蜘蛛の糸に絡みとられてしまいますから」


久礼(くれい)家の秀一さんでも厳しいか。

ナギは楽々こなしていた。

やっぱりナギの剣は王者の剣だ。


「さすがは力徳(りきとく)家の眷属ね。そんな荒行をこなせるなんて。今、納品された霊片を確認している。たぶんシロが地狐(ちこ)になるのは確定ね。前代未聞の偉業だわ。妖狐高等学校を卒業したばかりの白狐が四ヶ月ほどで地狐(ちこ)になるなんてね」


私が地狐(ちこ)になれる!?

それなら新たなお母さんの情報が得られるの?

興奮を抑えられず私は口を開いた。


「それならお母さんについての話が、やっと聞けるんですか!」


サクラさんは目を細め、冷たい声色で返答する。


「何度も言ってますが、貴女のお母さんであるサトミの任務は極秘案件です。地狐(ちこ)風情(ふぜい)には話す事はないでしょう。せめて気狐(きこ)くらいの神格になってからですね」


まだダメなんだ。最低、気狐(きこ)かぁ。

全身の力が抜けていく。

呆然とする頭にサクラさんの言葉が入ってくる。


「シロには地狐(ちこ)になる為の研修を受けてもらいます。神力が上がる事によって出来る術も増えますから。まずは一週間の基本研修。その後は一ヶ月に一日の継続研修になります。わかりましたか?」


地狐(ちこ)になる研修!?

そうだ。地狐(ちこ)にはなれるんだ。

少しでも前には進んでいるのは確かだ。

私はサクラさんの言葉に頷いた。


サクラさんはナギに話しかける。


「よろしければナギさんにも眷属としての研修を行う事ができます。こちらとしては力徳(りきとく)家の方なので是非受けて欲しいのですが?」


ナギが私の顔を見る。

できればナギにも研修を受けてほしいかな。

ナギ次第だけど。

ナギはサクラさんに返事をする。


「わかりました。是非その研修を受けさせてください」


サクラさんがナギの言葉に頷いた。


「こちらの申し出を受けていただいて嬉しいわ。ナギさんの研修を担当する方は既に立候補しておりまして断りにくかったから。シロはこのままこちらで研修を開始します。ナギさんは物質界に戻ってもらって結構です。数日のうちに研修担当者がナギさんのところに派遣される予定です」


ナギが私を見て口を開く。


「シロちゃん、一つ一つ段階を踏んでいこう。まずはお互い研修頑張ろうな」


ナギの目に強い意志を感じた。


「わかってるわよ。ナギもへこたれないでね」


私もナギに負けていられない。

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