シロの視点(富士の樹海の洞妖窟遠征終了)
朝日が出ると共に目が覚めた。
ナギはまだ寝ている。
起こさないように寝袋を出て服を着る。
少し経つとナギが起きてきた。
疲れはしっかりと取れているようだ。
回復術は私の得意な術だ。
朝ご飯を食べて洞妖窟に入る。
今日も土蜘蛛三昧。頑張っていきますか。
土蜘蛛はほとんど音を立てない。
そのため、洞妖窟には私とナギの息遣いしか聞こえなくなる。
二人の息遣いがリズムを紡ぐ。
二人が一人、一人が二人。
なんだろ?
頭の中が空っぽになっていく。
何か気持ちが良い。
リズムに身を任せて動く。
とても気持ち良いが体力が持たなくなってくる。
ナギに言って、一回外に出る。
三時間は土蜘蛛退治をしていた。
手を上に上げて身体を伸ばすと気持ちが良い。
昼食を食べて、一度狐姿に戻って体力を戻す。ナギには回復術だ。
午後にもう一度、洞妖窟に入った。
午前中と同じようにリズムに身を任せる。
土蜘蛛退治は問題無く進んでいく。
これもナギのおかげだ。
力徳家の人は本当に凄い。
三時間ほどの土蜘蛛退治で洞妖窟を出る。
息を整えているとナギが話しかけてきた。
「シロちゃん、このまま土蜘蛛を倒していくとどうなるのかな?」
「どうなるって?」
「いや、親玉みたいなのが出てこないかな?」
「大蜘蛛みたいなの?ナギ、もしかしてビビってる?」
「そりゃ物にもよるけど」
あんなに強いナギがビビっているの!?
ちょっと揶揄いたくなった。
「確か平家物語に出てくる山蜘蛛は全長1.2mって言われているからなぁ。足まで入れるとどのくらいなのかな?」
ナギが吃驚した顔をして言葉を捲し立てる。
「うん。そうだね。シロちゃん。そんな化け物が出たら、速攻で逃げだね」
「ナギは心配症だなぁ。そんな伝説の蜘蛛なんか出てこないわよ」
そんな伝説の蜘蛛が出てきたら私も逃げるけど。
「いや、安全第一!品質第二!生産第三!です!」
「そんな言葉知らないわ。分かったわよ。大蜘蛛が出たらすぐに逃げましょうね」
まだまだナギの戦いには余裕があると思うけどなぁ
晩御飯を食べて昨日と同じように狐姿でナギの寝袋に潜り込んだ。
お日様のような私のお母さん。
やはり寂しい。
だけどナギの陽だまりのような笑顔を見ると安心できる。
日が昇る少し前に目が覚めた。
ナギを起こさないように寝袋を飛び出す。
服を着て朝の鍛錬を始める。
刀の使い方はナギに教わった。
まだまだ下手だけど修練あるのみ。
少し身体が温まったところで朝日が昇ってきた。
ナギが目を覚ましたみたい。
取り敢えず、今日で土蜘蛛退治はひと段落つく。
朝ご飯を食べて洞妖窟に入る。
土蜘蛛退治を始めて1時間くらいで大きめの土蜘蛛に変わってきた。
ナギから終了の言葉をかけられる。
もう少しと思ったが安全第一と言い聞かせて終わりにした。
洞妖窟を出るとナギが明るい声をかけてくれる。
「シロちゃん、お疲れ様。今回の富士の樹海の洞妖窟の遠征は成功だね」
「ナギもお疲れ様。霊片がどの程度の神力になるか今から楽しみね」
この荒行は成功だなっと思ったら顔が綻んだ。
短いような、長いような富士の樹海の洞妖窟の遠征は終了した。
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