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月光の狐  作者: 葉暮銀
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朝の日課

昨晩は相当お酒を飲んだが爽快な朝だった。

シロちゃんが回復術を使ってくれたのかな?

一家に一狐、シロちゃんだね。


祖父から受け継いだ家には、小さいながらも道場が併設されている。

板張りの道場の床を掃除していく。

高校二年の冬から続けている日課である。


掃除が終わると道着に着替える。

正座をして呼吸法を一つ一つ確認していく。

30分程で一通りの呼吸法の型を終える。


真剣を持ち特殊な呼吸法で気を流し始める。

神界のように刀は光り輝きはしない。

それでも気を流すと刀の先まで神経が繋がる感覚になる。

丁寧に刀技の型を始める。


祖父と比べるとまだまだ未熟な刀技だ。

自分の技術が上がれば上がるほど、祖父の刀技の凄さが認識されていく。

目指すものの頂きが見えない焦燥感と、そこに向かっていく高揚感が()い交ぜになる。


朝の鍛錬を終えて庭の祠を綺麗にしていく。

シロちゃんに祠に御供えをした方が良いかと聞いたが、直接ご飯を用意して欲しいと言われた。

彼女に誕生日プレゼント何が欲しいと聞いたら現金と言われた気分。

少し腑に落ちないがシロちゃんがそれで良いというのだから問題は無いのだろう。


最近、シロちゃんは料理を始めた。

まだ目玉焼きを焦がしてしまうけど。

楽しそうなので、やりたい様にやらせている。

俺のスマホを使って料理の作り方を勉強している。

スマホを使うお狐様ってなんかシュールだ。


今日の朝ご飯は肉じゃがにほうれん草のおひたし、漬物とご飯と豆腐とワカメの味噌汁だった。

しっかりと料理ができるようになっている。

味も問題なし。

これはシロちゃんの才能なのかな?


神界に行くため、身を清めるため朝から風呂に入る。

井戸からの冷たい水を頭から被ると気持ちが引き締まる。

会社に勤めていたため、いつもは夜に神界に行っていた。

朝から神界に行くのは初めてだ。


この家にはシロちゃんのお母さんとシロちゃんの部屋がある。

そこの和室に布団が敷かれている。

洗い立てのシーツが朝の日差しを受けて眩しい。

シロちゃんの用意は終わっている。


俺は身体を横たえ目を閉じた。

衣擦れの音がする。

目を開けたい衝動に駆られる。

なんとか我慢していると身体に重さがかかり、シロちゃんの柔らかい感触が伝わってくる。


抱き締めたい。

ただそれだけの単純な欲望。

俺の若い肉体の一部分が硬くなった。

さすがにこれはシロちゃんに気付かれるだろう。

いつもはこのまま身体をまさぐられるが、その行為が少し止まる。


神聖な匂いがしてくる。

この匂いに身体を委ねていく。

いつも神界に行くより長い時間がかかっている。

やっと身体が浮いていく感覚に包まれた。

いつもより段違いに気持ちが良い。

唇に柔らかい感触、その瞬間背中に電気が流れる。

俺の意識が深く落ちた。



(きつね)神界(しんかい)の片隅にあるシロちゃん(やしろ)で目が覚めた。

シロちゃんがこちらを見ないで話しかけてくる。


「用意ができたら神格管理局に行きましょう」


「あぁ、すぐ用意するよ」


どちらも視線を合わせない。

先程の神界に行く行為が原因だろう。

気恥ずかしい空間が2人を包む。


シロちゃんの社の一角には大量の霊片が積まれている。

富士の樹海の(どう)(よう)(くつ)で取得した霊片だ。

霊片は神袋があればどこからでも社から取り出せる。

こんな量を神格管理局まで運ばなくて良いのは楽だ。


身支度を整えて狐神界の中央にある神格管理局まで歩いていく。

日中に歩くのは初めてだ。

小さな白狐の女の子が走っていく。

白い尻尾が左右に揺れる。


小さい時にシロちゃんと遊んだ思い出が甦る。

俺はシロちゃんのフワフワの尻尾を触るのが好きだったなぁ。

触り過ぎて泣かれた事があるけど。

シロちゃんのお母さんから優しくしてあげてねって言われたな。

シロちゃんのお母さんは太陽の匂いがしていた。


そんな記憶を思い出しながら歩いていると、木造二階の神格管理局が見えてきた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] このスピードでアイディアが出てくるのがスゴイと思います。 [気になる点] どうしても前作と比べてしまい、良くも悪くも普通に思えます。 [一言] 色々な意見があるかと思いますが、それだけ注目…
2021/12/15 20:39 退会済み
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