表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニートはダンジョンに居場所を求める  作者: アーマナイト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/87

ニート、ゴブリンで試す

 目覚めてから、さっそく双魔の剣鉈をダンジョン鉄で刃先以外をコーティングする。

 刃先のみ深い海のような濃紺で、他は落ち着いた光沢のないマットブラックの剣鉈。配色はデュオシックルと同じなのに、比較的シンプルなエングレービングを施しているからか双魔の剣鉈のほうが無骨で、落ち着いた風格がある。

 この双魔の剣鉈、解体を主眼に作ったんだけど……見てたら実戦で使いたくなってきた。

 短剣のスキルも獲得したし、スキルを成長させるためにも使ってみるか。

 まあ、短剣のスキルが低くても、他のスキルの熟練度と、強化された身体能力と、アダマントコックローチの防具を装備していれば、ゴブリン相手なら大丈夫だろう。

 アダマントコックローチの防具の性能もテストしたいけど、故意にホブゴブリンやシルバーラビットの攻撃を受ける気にはならない。性能を信じていないわけじゃないけど、防具が壊れなくてもダメージがなくなるわけじゃない。無理に、進んで痛い目に合おうとは思わない。

 革製のくたびれたとんがり帽子ウィザードハットを錬金術と革加工のスキルで、さまようカボチャに接着する。スキルによる加工に対して強い抵抗もなく思っていたよりも簡単に、接着できた。

 これで激しく動いてもウィザードハットが外れることはないだろう。

 右手にデュオシックル、左手に双魔の剣鉈。

 準備よし。

 第一層のゴブリンエリアに侵入。

 さまようカボチャの暗視のスキルへの微補正の効果なのか、世界がモノトーンなのは変わらないけど、いつもよりよく見える……気がする。

 さっそく、索敵に五つの反応あり。

 遠見のスキルでゴブリンと確認。

 進行方向を避けて、隠行を意識しながら、後方からゆっくりと接近。

 ボクの現在の装備と戦闘能力なら、正面から交戦しても問題ないと思うけど、短剣のスキルと双魔の剣鉈の初陣だから念のため用心していく。

 隠行が成長したからか、ゴブリンの後方一メートルに近づいても気づかれない。

 切るか、刺すか、少し迷ったけど、抜けなくなっても困るから、切っていこう。

 一番左のゴブリンの腰を、背後から双魔の剣鉈で真横に一閃。

 ゴブリンの上半身が内臟撒き散らしながら、お辞儀する。

 穏やかな植物の香りを、臓物の死臭が上書きする。

 鎌に比べてスキルが低くてボク自身、剣鉈を武具として使うことにまだ慣れていないけど、そんなことが気にならない威力だ。

 まだ、速度と身体能力を一撃にのせきれていない、強引でつたない一撃だったにもかかわらず背骨を断ち切り、その抵抗を少しも柄を握る手に伝えてこない。

 振り向きかけているゴブリンに接近。

 脇腹から肩へ剣鉈を切り上げる。

 技と速さで切るというより、力で強引に押し切るようになってしまったけど、豆腐を切るように滑らかにゴブリンの命を終わらせる。

 真中のゴブリンはこっちを向いて槍を構えているけど、止まらずに一閃。

 ダンジョンウォルナットの柄を切って、槍の穂先が宙に舞う。

 首に一閃。

 ゴブリンが首から噴水のように血を放出しながら崩れる。

 生臭い鉄錆びのような血の臭いが一気に立ち込める。

 剣を構えた残り二体のゴブリンが同時に切りかかってくる。

 少し前なら、焦燥を覚えたこの状況も、空色の無音な凪の心で対処できる。

 右からの一撃を、デュオシックルで剣を狙うように迎撃。

 透明な金属音が鳴り響き、断ち切られたゴブリン合金製の剣の切先をはね飛ばす。

 左から一撃を双魔の剣鉈の刺突で押し戻す。

 ゴブリン合金製の剣が、かん高い断末魔を上げながら砕ける。それでも双魔の剣鉈の威力は衰えず、胸骨と心臓を貫き背中に突き抜ける。

 ……双魔の剣鉈が抜けない。

 ふむ……デュオシックルで残りのゴブリンを狩れば簡単だけど、少し試すか。

 双魔の剣鉈から手を放して、体術のスキルを意識する。

 アダマントコックローチの肘当てに覆われた左肘を、最後のゴブリンの顔面にめり込ませる。

 ゴブリンの顔面が原形をとどめないほど陥没して砕ける。

 つたなくてぎこちない肘打ちだった。

 だけど、ゴブリンを一撃でしとめるのに十分な威力だった。

 肘への衝撃はほとんどなく、スライムゴムは十全に衝撃を吸収してくれた。

 まあ、ボクへの攻撃の衝撃じゃなくて、ボクの攻撃で発生した衝撃の吸収になったのは少し意外だったけど。

 まだ、ゴブリン相手だから、十分とは言えないけど、少なくともポリカーボネイトと同等以上には信頼できそうだ。

 深く刺さった双魔の剣鉈を引き抜いて、傷一つない刀身を見ながら思う。威力は申し分ないけど、短いから胴体を両断したり、首を斬り飛ばしたりするのは少し難しい。

 まあ、両断したり、斬り飛ばさなくても、致命傷は十分に与えられるから問題ないんだけどね。

 ゴブリンの角や魔石は安くて、ダンジョン鉄のインゴットを売るより効率が悪いから、わざわざ解体しなくてもいいんだけど、双魔の剣鉈の解体での使い勝手を知りたいから解体する。

 料理で切れない刃物は危険らしいけど、解体で切れすぎる刃物も十分に危険です。

 角や骨がスパスパ切れて解体の作業は早くなったけど、何回か勢い余ってスパスパ自分の手足も切ってしまいそうになった。

 切れたゴブリン合金製の剣の切先を手にしながら、槍の柄は切れると思っていたけど、ゴブリン合金製の剣をこうも簡単に壊せるとは思わなかった。

 ゴブリン合金製の剣をデュオシックルで切ったときも、双魔の剣鉈で突き壊したときも、多少抵抗はあったけど、狙えばほぼゴブリンの武器破壊を成功できると確信した。

 双魔の剣鉈で軽く試し斬りしたら、後はデュオシックルで普通に狩りをしようかと思ったけど、予定を変更する。


「収納」


 口にしなくても、左の手首に装備した数珠のようなコンテナブレスレットの収納機能は使えるんだけど、慣れていないから念のために口にする。

 デュオシックルが一瞬で手から消えて、コンテナブレスレットに収納される。

 メインウェポンを鎌から変更することはしないけど、双魔の剣鉈と体術のスキルによる戦闘が思いのほか楽しかったので、もう少しゴブリンで短剣と体術のスキルを試してみる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ