11-1 余計なお世話
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秋が終わるまでにエルフを大陸から追い出した俺達は、予定通りドワーフの帝国、グランドレンへ渡航する準備を済ませた。
目的地のある別大陸へ渡るには、ディーン皇国の西側に位置する港からソブラニ島国という場所を経由する必要がある。現在は運搬魔法で直接乗りつけるルートが存在しないからだ。ソブラニ島は日本地図で言うところの淡路島に当たり、同じようにグランドレンと僅かな交流を持つヒューマン同盟加盟国の島嶼群を事実上取り纏めてきた地域の盟主である。つまり同盟の中の同盟、入れ子構造になっている。
通らせていただくということでまずはディーンのアキタカ皇帝に軽く挨拶をし、次にソブラニの島長に挨拶をし、最後にグランドレンの入国窓口に挨拶をするという流れだ。やれやれ。
「君だけを呼びつけるのは相当久しぶりかな」
アルフレッド・アシナガヒコ・アキタカ皇帝陛下に招かれるままに、俺は宮殿内の庭園を訪れていた。謁見自体は既に同行する皆と共に済ませていたが、今日になってサシで対面したいと連絡があったのだ。いつか座った四阿の中に、また入っている。
「ちょくちょく会ってはいたけれど、なんだかんだと、行事なり紹介なりで、こういう肩の力を抜ける席はタイミングが難しかったなあ」
目線を落とさずに木製の平面パズルをいじくりながら、彼はそう言った。
「っすね」
ホテルとか旅館によく置いてあるあの、ピースは少ないくせにやたら難しいアレである。多分形も一緒だ。誰かに作らせたのだろうか。
「それ、三種類以上完成させられた試しがないんですよね」
目標として、再現可能な図形のリストが箱に同封されているわけだが、子供の頃から、そして確か高校の修学旅行の時も苦戦した記憶しかない。十種類だったか十一種類だったか、絶対嘘だろと思えるようなものもあった。
「よかったらあげようか? 私は一応全部作れるからさ。旅行中暇だろうし」
「いや旅行じゃないですよ……。色々解決しなきゃいけないことがあって……」
「それはそうだろうけども、君やゼニア姫が忙しくなるわけではないんじゃないかな」
「――というかー、そこがまだ不明なもんで困ってるんですよね」
「向こう、相変わらず何も言ってこない?」
「短い文を寄越したっきりで、それから本当に何も。おかげで予定が組めなくて」
「謎の国だなあ」
「陛下ほどの地位でも詳しくないんですか、ドワーフは」
「いやもう全然」
「あ、却って行動に制限があるのか……」
「そうだね。しかし、下手したらクドウさんでも会ったことがないかもしれないな」
「ええ? そこまで徹底してるんですか……?」
ソブラニ島と同盟島嶼群にはディーンの影響力が強いようだから、その関連である程度は近い距離感かと思っていたのだが。
「ドワーフとしてはあくまでも島々を緩衝地帯として扱いたいのだろうね。そしてソブラニもその意図を汲んでいる。取り引きは港から離れた海上で済ませることも多くて、上陸するのは稀だっていうしね。それはどうなんだろうと思うこともあるけど、皇国としてもただでさえ同盟に引き入れている上での過干渉は避けたいから、なかなかね」
「謎の民族すぎるな……。そんなにヒューマンが嫌なんですかね」
「嫌だと思うよ」
「まあ、それはそうか」
「彼らはエルフも同様に好かないようだけどね」
姫様も言っていたが、結局、戦に関わりたくないという思いが大きいのだろう。
だからこそ、訪問の受け入れには少なからず驚かされたのだが。一体どういう理由で気が変わったのだろうか? 姫様が手紙に何と書いたのか、俺は知らない。
「ところでこの辺りの事情についてはゼニア姫の方が詳しいのではないかな。私としては君が彼女から教わっていなかったことの方が驚きだが……」
「……ははっ……」
痛い所を突かれた俺の愛想笑いを見て何か察したのか、陛下は話を逸らす。
「そうだ、昨日は言ってなかったけど、出航の時には私も見送るよ」
「あ、左様で」
ということは、割とセレモニーっぽくなるのかもしれないな。
「――して、本日はどのようなご用向きで……?」
さらに本題を促して、俺達は一旦、流れをなかったことにする。
「うん、まあ、たまには自分の正体をさらけ出さないと忘れそうになるからそれをするのと、あとは、君と少し、内密の話をしたかったんだよ」
アキタカ皇帝は現在生きている中では最も古い客人と考えられているが、召喚魔法によって連れて来られたのではなく、この世界のヒューマンから生まれた少年の精神に、五歳頃から融合するような形で意識を持った。本人の言を借りれば、前世の記憶といったところである。宿ったのがたまたま、皇帝だった。
このことを知るのは俺や姫様、ごくごく一部の客人のみで、ハギワラ一門や関白のクドウ氏ですらこのことは知らない。
あれから状況も大分変わって、世の中に客人の存在が認知されてきたわけだが、今のところ同じ境遇の人物が名乗り出てきたことはなく、こちらから発見もしていない。
「皇帝としてではなく、一人の老人としてね」
結果的に彼が、客人の中では珍しいと共に、微妙な立ち位置となってしまったのは否めない。幼帝という肩書きもそれを加速させていた。彼が少年であって少年でない、肉体という器はともあれ魂が純血でない、ということが判明してしまうと、ディーン皇国を根底から揺るがしかねないために、その事実は秘匿されなければならない。
そういうわけで、召喚されてきた根っからの異界人達ほど、アクティブには物事へ関わることができないのだ。政も家臣が何でも取り仕切ってしまう。彼にできるのは、決定権の希薄な皇帝として、それとなく俺達を後押しするようなスタンスを取り続けることだけなのである。
彼は静かな協力者だ。
ティーンエイジャーでありながらも、どこか年経た雰囲気の。
「私と内緒話ですか?」
「そう。結構、大事な話でね。といっても、君は鋭いところがあるから、ここまで改まったらわかってしまうだろうな」
「はあ」
わからないな。
「いやあの、」
「で……どうなんだい」
「――……どうなんだい、って?」
アキタカ皇帝は彼にしては珍しく含みのある笑みをニンマリと浮かべて、
「そりゃ……彼女との仲だよ」
「はあ。勘が鈍くて申し訳ありませんが、誰のことを指しているのか……」
「またまた、とぼけなくてもいいんだよ」
俺は当惑するしかない。
それが演技でも冗談でもないのに気付くと、少年皇帝は、これは些か興が削がれた表情になった。そして、自分から切り出してきたくせに、どうしてそれをわざわざ指摘しなければならんのだ、と言わんばかりの口調で、
「ゼニアさんだよ。仲良くしてるかい?」
「――姫様ですか? してますよ。してないわけないじゃないですか。何といっても、ぼかあ彼女のペットですよ。かわいがられてますよ。つい最近だって戦勝のご褒美だっつって、」
陛下は手のひらをこちらへ向けて制した。
「いや、そうではなくて……。あ、もしかするとそれも含まれてはいるのかもしれないけれど……」
「――お言葉ですが、要領を得ませんな」
「ううん、何と言ったらいいのかなあ、そう――もう少しドキドキする内容の話だよ」
「姫様とドキドキ、ですか……? あっ」
「心当たり、あるだろう」
「ええ。この間の戦い、敵に囲まれてはしゃいでたらところどころ出血してたんですが、後で姫様の魔法で戻してもらえばいいやと思って放置してたら、思いのほか早いペースで流れ出して行っちゃって、微妙に間に合わなくなりそうだった時の話……」
「うん、違うね」
「やっぱ意識遠くなるとビビりますね」
「君ほどの男が……しっかりしなよ。ゼニアさん結構慌てたんじゃないの?」
「珍しくそうだったかもしれません。あ、そういう意味では姫様もドキドキはしたのかな……?」
「君ねえ」
「すいません」
まさかこれほど心を込めずに言うことになるとは思わなかった。
「すいませんじゃないでしょう。何か、他には?」
「姫様とですよね?」
「他に何があるの……?」
一体、この人は俺に何を言わせたいんだ?
「いや、ですから、取り立てて申し上げるようなことは……」
「そうかわかったぞ、当たり前になりすぎて感覚が麻痺してるんだろう。ということは普段君達が二人きりの時、どういうふうにして過ごしているかをただ話してもらえればいいわけだ。どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。なあ?」
彼は腕を組み、わざとらしくうんうんと頷いてから、ちらりとこちらを見た。
「まず、二人きりの時間というのがあんまり無いのですが……」
おおっぴらに活動できるようになった今は、こっそり会って悪巧みをするようなことはほとんどなくなった。俺自身の活動についても、前ほど姫様がマネジメントしなくてよくなったし、打ち合わせや連絡は何かで集まった時のついでにできる。
「その貴重な時間について話すんだよ!」
「はあ、まあ、大抵は姫様が息抜きにやってきますね。でも」
ジュンからも離れて羽を伸ばしたい時があるのだろう。
本当に休みたい時は、おそらく一人で過ごしていると思うが。
「ほう、それで?」
「あー、例えば、これは昔からの習慣みたいなものですが、戦盤に興じたりでしょうか?」
「ほうほう、他には?」
「いや、姫様もお忙しい方ですから、ちょっと会話を楽しむくらいですよ。余裕がある時は、寝る前にお酒を嗜んだりはしますが」
「……それは……君も飲むのか?」
「そうですね。御酌をしながら、私も少しだけ。しょっちゅうすごいやつを飲ませてもらえるわけではないですけど」
「だ、大丈夫なのか?」
「問題ありませんよ。タマルさんの燃料に回す分は別に確保してありますから。ここだけの話、城の貯蔵庫にはまだ相当いいのが眠ってますね。まあ、それはこの宮殿も同じかそれ以上でしょうが」
「いや、そうではなくて、その……ほら、美味しいとつい飲み過ぎてしまったり」
「ああいやいや、私は下戸ですから。姫様もそこは気を遣ってくださいます。ちびりと飲めれば十分。ご存知でしょう?」
ここで呑んだ時すぐダウンしてしまったのも、もう懐かしく思える。
「ああ、そうだね、そうだった。ははは! はは……。――そうだ! それで、酒を飲んで酔った後は、当然……」
「帰って寝ますね」
陛下は目を見開いた。
「嘘だ……。絶対に嘘だろう……」
「いや嘘言ってどうするんですか」
「私は騙されないぞ、そんなに話すのが嫌なのか?」
「悪いですけどマジで嫌になったら俺帰らせてもらいますからね」
既にもうかなりめんどくさくなってきているというのに。
「何も起こらないなんてありえるのか?」
「そりゃ、二人共明日がありますからね。酔ってからさらに何かして遊ぶのはちょっと、もう体力的に……」
「いい若いもんが何言ってんの!? 個室で二人きりなんだよね?」
「ですね」
「何にも、全然?」
「はあ。普通に私がその場を辞してお開きですが」
何かよくわからんが、彼は相当ショックを受けたらしく、うなだれてしまった。
「あの、どうもまだよく話が呑み込めないのですが」
「……、には」
「え?」
「……他には?」
俺はもう一度自分の行動を振り返ってみたが、そういうプライベートに関しては、本当に変わったことはしていなかった。むしろ課題をこなしている時の方が、変化や多様性があって面白い状態だ。
「そんな特別なことばかり起こるものではありませんよ。大体……そうですね今の生活サイクルが構築されてきたここ二年くらいはこんな調子です」
「何ということだ……これほど深刻だったとは……」
「それで結局何の話なんです? ちょっと疲れてきたんですが」
「君も鈍い男だな……」
「さっき鋭いところがあるって評価したくせに」
小声でそう呟くと、陛下は立ち上がって俺に指を突きつけた。
「ああわかったこの際はっきり言わせてもらおう! 今日呼びつけたのは他でもない、君の将来の身の振り方について把握するためだ! これは君だけの問題ではないのだよ、どうしてわからない? いいかつまりだ、君とゼニア姫! 男と女の仲は進んでいるのかという話だよ! 何故言わせる?」
そこまで言われて、俺はようやく合点がいき、思わず舌打ちしそうになった。
「……またその話か……」
「また、って何だい! やっぱりどこかからせっつかれてるんじゃないか!」
「わざわざまあよくもそんなことを言うためによくもまあわざわざ……」
「そこまでわかっているのにどうしてすぐ思い至らなかったんだ?」
「余所からもこんなこと言われるなんて想像できます?」
「今の君は想像しておかなきゃならないんだよ! まったく……。それで、誰が先に注意してくれたんだい?」
「あのー、姫様のお姉様の、ミキア殿下が、妙なことを言い出したんです」
「――聞こうか」
それは、出発の直前に行われた戦勝祝賀会でのことだった。
散々に荒らされたとはいえ、かつてセーラムが持っていた領土を一応は全て取り返したのだから、城内、都までと言わず、国中が湧いていた。少なくともそう伝えられていた。誰も彼もが、その時だけは本当に心の底から浮かれようとしていたのだと思う。やっと、それをしてもいい状況になった。許される状況に。
会はいつもより遥かに無礼講に近い雰囲気のものとなり、姫様や、王様でさえ自由に席を立ち、広間の中を歩き回っていた。喜びをより良く分かち合うために。
ミキア姫も例外ではなく、彼女は握手大攻勢に疲れて陰で休んでいた俺のところへやってきて、骨付きの鶏肉を勧めた。
「これはどうも、畏れ多い……」
「いいのよ。料理を取りに行く暇もないなんて、すごい人気」
俺は無言で渡された肉に齧りつき、引き剥がした。
「もうすぐ出発するんでしょう?」
「はい。何とか間に合いました。気を付けて行って参ります」
「あなたのおかげで、きっとこの冬は平穏よ。ゼニアとゆっくりしてらっしゃいな」
「そうさせていただきます。まあ……本当にゆっくりできるかは、向こうの出方次第ですが」
「大丈夫よ。心配しなくても、素敵な休暇になると思うわ。きっとドワーフはよくしてくれる」
何か根拠があるかのような口ぶりだったが、俺はそれについては訊ねず、代わりに彼女の予想に乗っかってみることにした。
「そうですね、もし彼らが非常に物わかりよく、こちらの唐突な願いでも受け入れてくれるのだとしたら、私とゼニア様のやるべきことはすっかりなくなってしまうでしょう。そうしたら、中々のバカンスになるかもしれません。暇を持て余して、一日中寝っ転がっていても何の後ろめたさも無いような。心からそれを望みます」
姉君様は俺の言葉を聞き、満足気に微笑みの度合いを濃くした。
「彼らの穴倉は暖かそうですし」
そう付け加えると、確かにそれは歓迎すべきことのように思えた。
「そうそう、ゼニアと一緒に休息を取りなさい。少し長めにね。大切なことよ。また春になったら戦いが始まるんでしょう? 物を揃えるだけが備えではないものね」
「まったくその通りです」
「それでね、これは言いつけにしてもいいことなのだけれど、もし本当に暇ができたら、それを利用してちょっと時間を作って欲しいの」
「――何のために使う時間でしょうか?」
「決まっているじゃない」
と彼女は言った。
「ゼニアに愛を囁くための時間よ」
俺は耳を疑った。
「今、何と?」
それが復唱されることはなかった。
「やあね、もう。見ていてもどかしいったら。いい加減後押ししないと、あなた達いつまで経っても進みそうにないもの。でも、言われたらさすがにやるわよね?」
「ちょ、ちょっ……! ちょっと待った!」
誰かに聞かれやしなかっただろうか。
「どういう――飛躍しすぎです!」
「あらそう? 私は結構前から見守っていたのだけど」
本当かよ?
「何か誤解が――」
「そろそろもう、ゼニアがかわいそうになってきたのよ。あの子もあの子で微妙に押しが弱いから悪いんだけど。そういうわけだから、あなたの方から言ってあげて? いい仲になるまで帰ってきたら駄目よ」
俺は何か色々と言わなければならなかったのだろうが、その時は軽くパニックになっていて、
「何の保証が」
やっとそれだけだった。
ミキア姫は俺のことを鼻で笑った。
「そうね、それか……もし、あの子の方からあなたに何か言ってきたら、それを拒まないで欲しいのよ。あなたにもそれくらいはできるでしょう? 約束よ。約束しなさい」
そんな調子で、姉君様は一方的に言いたいことだけ言いまくって、数日後には何食わぬ顔で俺達を送り出したのだった。
俺は何と返事をしたか憶えていない。
はっきりと口に出して、それだけは約束します、と言ったような気もするし、モゴモゴ言葉にならない言葉を発音しているうちに姉君様が去っていったような気もする。
正直、あの短いやりとりの整理がまだついていない。
「なるほど、さすがに姉ともなると妹のことはよく見ているか」
「どうだか……」
「本人がいないから言うが、彼女は君に惚れてるぞ」
「どうして――そんなことがわかるっていうんです!」
無責任なことを言うんじゃねえ。
家族であるミキア姫ならいざ知らず、付き合いの浅い俺や陛下が、姫様の乏しい表情から何を察することができるというのだ。思い上がってはいけない。
「まあ落ち着いて。全く根拠がないというわけではないよ。ここ数年で、彼女の感情表現はとても豊かになったと思うんだ。あるいは豊かに戻ったのか――前より内心を読ませてくれる。特に君の前ではそうだろう。傍から少し見ていただけの私でもわかるほどだよ。君はずっと近くにいて気が付かなかった?」
「惚れられるようなことをした覚えはない。俺と姫様は、主と僕だ」
こっちが姫様に惚れるっていうのなら、たくさんのきっかけがあるだろうけども。
「今更、身分が大した障壁になるとは思えないな。君の功績を考えれば」
俺は自分の機嫌も、顔つきも、悪くなるところまで悪くなったのを感じた。
「ふむ、では真相は置いておくとして、どう低く見積もっても、ミキア姫からはお墨付きをもらえたということは間違いないじゃないか。何が気に入らない?」
「気に入りませんとも。的外れなゴシップに拘束されているこの状況が既にね」
「君は彼女のことが好きじゃないのか?」
「……もう説明するのめんどくさいな……」
「そう頑なにならないで。せっかくの話だろう」
最早、何を言っても噛み合わないような気がした。
まずそれありき、で来られるとどうしようもない。
「率直に言おうか、この機会を逃したらな、君のような人間は一生パートナーと巡り合えないぞ! 私もそうだった」
言わんとしていることはよくわかるが、それにしても嫌なたとえだ。
「相談なら聞こうじゃないか。役に立てるかはわからないが、同性にしか言えないこともあるだろう?」
俺は立ち上がった。
「これで失礼いたします。また明日」
段差に気を付けながら屋根の下を出ると、
「ヘイ!」
迷ったが、振り返る。
「これ、忘れ物」
アキタカ皇帝が木のパズルをこちらに差し出していた。
俺は戻り、それをひったくった。
「ミキア姫の言う通りだ。この冬はきっと君達にとっていい季節になる。そうすべきなんだ」
俺がこんなに態度を変えても、陛下はあまり気分を害していないようだった。
「応援しているよ」




