相容れない2人の怪物
ライトが狂いに狂った悲願を改めて胸に秘める一方。
「やっほー、君がユニのお気に入りだっていう少年かい?」
「……知りません、それより退いてください」
「えー、今さら進路変更なんて面倒臭いんだけどなぁ」
戦闘の最中、襲い来る触手の猛攻を回避すべくサレスが触手を軽く蹴って距離を取った先には、のろのろとしつつも無駄のない足取りで接近していた【高潔なる二面性】が居て。
ちょうどサレスが再び飛び出そうとしている方向にレイズがぶらりと立っていたが為に苦言を呈すも、当の本人は戦場に身を置いていながら欠伸なんてかましつつ拒絶するだけ。
しかし、サレスも引くつもりはない。
もう、この澱む殺意に歯止めを掛けるつもりはないのだ。
「……邪魔をするなら、貴女から殺します」
「へぇ? やってみなよ、やれるモンなら」
「……【暗影術:毒殺】」
「ありゃ、マジでやんの? それはそれで怠ぅ」
それを証拠に彼の殺意は一瞬でレイズに向き、あろう事か技能まで発動させて本気で命を奪いに行こうとしている少年に対し、レイズが『やれやれ』と溜息をついている光景に。
(現実的ジャナイト思ッテイタガ……イケルノカ?)
ライトは、微かな希望を見出していた。
場合によっては同士討ちが狙えるのかもしれない、と。
もちろん、そんなか細い希望に縋り付くつもりはない。
しかし、選択肢が増えるに越した事はない筈で。
少しの間、静観するのも手か──と思考を巡らせる一方。
『無駄な諍いが勃発しかけておりますが、よろしいので?』
「サレスがアレを殺せるなら、それもまた良しだよ」
ユニはユニで、その小競り合い──現在と未来のSランクの諍いをそう呼んでいいかは微妙だが──を止めるつもりはないらしく、ともすればレイズの死を望むような発言さえ口にしており、それがサレスに届いたからかは定かでないが。
(何手かかるかは解らない、でもユニさんみたいに何回やっても殺せないって感じはない……舐めてくれれば、きっと──)
サレスもまた、レイズを本格的に抹殺対象としていて。
今現在、彼が分泌可能な中で最も解毒しにくい液状の毒を塗布した爪を構え、一気呵成に音もなく飛び出していった。
……その瞬間──。
「──ッぐ、ごほ……ッ! 何を、やってんだ……!?」
「貴方は……っ!」
「なぁに割って入って来てんの?」
サレスの爪が穿ったのは、レイズではなく魔剣士。
駆っていた竜化生物を足蹴にする事で加速、2人が足を止めていた事も相まって追いつけた彼はレイズを庇ったのではなく、あくまでも2人の無駄な諍いを止めるだけだったが。
「うるせぇ……! 敵は、あの怪物……もとい、ライトだろうが……! 訳の解らん内輪揉めする暇なんざねぇだろ……!」
「それは……」
「そもそも内輪じゃないけどねぇ」
猛毒による苦痛の中、必死の表情と声音でそれを伝えんとするも、サレスはともかくレイズはピンと来ていない様子。
まぁ無理もない、レイズは謂わば外様なのだし。
とはいえ、もう彼も引くに引けない。
間もなく、彼は死んでしまうのだから。
「こんな事言いたくねぇが、俺ァこれ以上ついて行けそうにねぇ……【最強の最弱職】が言ってた『足手纏いにもなれねぇ』ってのはこういう事だったんだろうよ……だから──」
それゆえ、レイズは制御できないにしてもサレスにだけ伝われば、と文字通り決死の覚悟で己の弱さを嘆くとともに。
大量の血を吐きつつも、真に伝えたい事を告げんとした。
その時。
『──余計ナ口を挟マナイデクレルカナ』
「〜〜ッ! クソ、が──」
それを告げられると微かな希望が潰えかねない、と判断したライトが差し向けた無数の触手が2人ごと魔剣士を襲い。
多分2人は自分を護ってはくれないし──護ってほしいとも思っていなかったが──かと言って、もはや自衛する体力も気力もない彼が自分の無意味な最期を悟ったのも束の間。
「──か、は……!」
「うあ"……ッ」
「な……!?」
「え……」
彼と同じ方法で加速した残り2人が彼を庇い、貫かれ。
誰がどう見ても致命傷だと断言できる重傷を負った。




