表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜化世界で竜を狩る 〜天使と悪魔と死霊を添えて〜  作者: 天眼鏡


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

361/364

原因不明の倦怠感

 後衛の要を喪った事で、サレスの護衛は残り4人。


 戦力が減少した事実はあまりにも痛いが、実を言うと護衛が減った事によるメリットも1つだけ発生しているようだ。


(……数が減った事を、吉凶どちらと見るべきかしらね)


 そう、【霊障術:骸骨(サモンスケルトン)】も【召来術:竜化(サモンドラゴン)】も喚び出す数が少なければ少ないほど1匹ごとの能力値ステータスが上昇するという副次的な効果がある事を思えば、こうした個体数の減少を幸運と捉える事もできなくはない──……のかもしれないが。


 それよりも、4人には気掛かりな事があった。


(明らかに動作が遅く、精度も落ちてる……何が起きた?)


 最初に10人と1匹で特攻した時よりも、そして仲間たちが次々と討たれていた時よりも、エルギエルの触手に勢いがなくなっている事実が、あまりに不気味で仕方ない──と。


 気を抜けばあっさりと死んでしまうだろうという事実は変わらないのだが、逆に言えば油断さえしなければ問題なく目的を達成できる程度に難易度が落ちているという事でもあるものの、それを幸運と思えるほど4人はおめでたくもない。


 何か原因があるのだとしたら、それを解明すべきだ。


 唯一の弱点となるのかもしれないのだから。


 ……と、頭では解っているのだが──。


(──……何なんだ、さっきから……妙に、気怠い……)


 こちらはこちらで原因不明の倦怠感に見舞われていて。


 HP(体力)が減っているからだとか、精神が摩耗しているからだとか、そういった外的要因ではない類であるという事しか解らない謎の気怠さに困惑していたのは魔剣士キャバリエだけではなく。


(何これ……こんな状況なのに、目蓋が下がって……ッ)


(身体が、重い……何かの状態悪化デバフ……?)


(やらなきゃいけないのに、やる気が出ない……)


 中衛を担う【銀の霊廟(グリトルス)】の3人もまた、もはや状態悪化デバフと呼んでも過言ではないほどの強い無気力感に苛まれており。


 天使にそんな力があっただろうかと、こんな化け物じみた変異を遂げた個体なら或いはと──暗殺者アサシンならまだしもと。


 ともすれば護衛対象サレスを疑いかねないほどに混乱し、されど突き止めようにもやる気が出ないという己の抱える矛盾に対し、より一層の困惑を抱く4人の狩人ハンターたちも居る中にあり。


「……」


 当のサレスの表情に、これといった倦怠感は見られない。


 彼を乗せている迅豹竜じんひょうりゅう、フリードにもだ。


 護衛対象の1人と1匹、護衛者の4人、何が違うのか。


 一行がそれに気づくのは、もう少し先の事だが。


「影響、出てきたかな? 相変わらずの怠けぶりで呆れるよ」


『ユニ様、影響とは?』


 当然ながら、ユニは原因に気づいている。


 一行を襲う倦怠感は何かからの影響を受けている事が原因だと呟くユニとは対象的に、いまいち要領を得ていない様子のフュリエルが問うたところ、ユニはある方向に視線を移し。


「さっき教えた、〝怠け者〟の影響だよ」


『怠け者……まさか──』


 ほら、と指差した先で相も変わらず横たわったまま半死体と化しているSランク(?)狩人ハンターを指してそう呼んだ事によって、ようやくフュリエルも事態の原因を理解するに至る。


「──……あ"〜……」


 瞬間、胴体に位置する大半の臓器ごと心臓を貫かれたせいで死が間近に迫っていた筈のレイズが仰向けのまま脚の力だけでぐにゃりと不気味に起き上がり、まるで糸の切れた操り人形であるかのような無機質さを帯びた声で唸ってから。


「……っっっっる」


 とても戦場に似つかわしくない、そんなセリフを吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ