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竜化世界で竜を狩る 〜天使と悪魔と死霊を添えて〜  作者: 天眼鏡


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【星々を繋ぐ女神】

 ユニが持つ〝神の力〟が一角──【星々を繋ぐ女神(アストライアー)】。


 これまで〝機械〟を司る神や〝死〟を司る神など、語る必要もないほど人智を超えに超えた力を披露してきたユニ。


 そして今、彼女が発動した神の力によってサタン=クラウドの真下に顕現したのは、かの雷雲が如き羊毛のそれが薄らいで見えるほどの漆黒に染まった、ごく小規模の〝天体〟。


 音や魔力はもちろんの事、光さえ逃さず呑み込み塵も残さず消滅させる、そんな超重力の塊とも言うべき天体の名は。


『やっば! アレ、ブラックホールでしょ!? 映えるぅ!』


「え? あぁうん……え?」


 そう、〝ブラックホール〟である。


 ……が、そんな事より──。


「テクトリカ、アシュタルテはどうしたの?」


 今日の従者当番であり、24時間が経過していないがゆえに交代はまだである筈のアシュタルテの代わりに、どういうわけか明日の従者当番のテクトリカが隣で撮影していて。


 常に冷静沈着なユニは声を荒げこそしなかったが、それなりに驚いてはいたらしく、疑問符をぶつけてみたところ。


『たるっちはアレだよアレ、〝ばたんきゅ〜〟ってヤツ』


「……?」


 テクトリカから返ってきたのは、もはやオノマトペなのかどうかさえ解らない意味不明な言葉であり、さも頻出単語だと言わんばかりの表情を向けてくるものだから、『何それ』とも聞きにくい雰囲気になってしまっていたのも束の間。


「……あぁ、〝活動限界〟か」


 ユニは即座に、その可能性に思い至る。


 天界、冥界、魔界、それぞれの世界におけるNo.2という文字通り人智を超えた存在揃いである為に失念しがちだが。


 あの3柱にも、〝HP(体力)〟という概念は存在する。


 防ぐにも値しない程度の攻撃ならば受肉中であっても意思とは無関係にその身体を擦り抜ける為、HP(体力)は削られない。


 しかし狩人ハンターで言う最後の希望(ラストホープ)以上の精鋭、竜化生物で言う突然変異種ミュータント相当の怪物、そして双方に共通して言うLv100に至った絶対強者などによる高次元の攻撃ともなれば、さしもの彼女たちでもHP(体力)の減少は半ば必至と言う他なく。


 ましてや今回の相手、サタン=クラウドは迷宮を護る者(メイズガーダー)かつLv100かつ逆角個体かつ【可逆圧縮絨リバーサルジップ】発動済みという、下手なSランクや突然変異種ミュータントを超えるほどの異分子イレギュラー


 流石にHP(体力)0、つまり〝死〟にまで追い込まれこそしてはいなかったものの、この世界での活動が不可能なくらいにはHP(体力)を削られていた為、アシュタルテは魔界へ強制送還。


 次の当番であるテクトリカが顕現した、というわけだ。


 アシュタルテが使い切れなかった時間も含めて──。


「ま、いいや。 撮っててもいいけど邪魔はしないでね」


『りょ! いやー、またバズっちゃうなー!』


「……さて、少し話が逸れたけど」


 尤も、アシュタルテが消えようがテクトリカが出て来ようがユニにとっては大した問題でもない為、余計な手出しだけはしないように釘を刺すだけ刺した後、緩やかに向き直り。


「【星々を繋ぐ女神(アストライアー)】は、その名の通り〝星〟を……延いては〝宇宙〟を司る神。 〝未来視〟も〝無重力化〟も〝超極小規模の天体の顕現〟も、今の私には思うがままなんだ──」


 ……と、そんな途轍もない能力の説明を淡々とされるものだから、どうにか威勢良く吼えていたサタン=クラウドも。


「ここからはそんな私が相手。 君はどれくらい保つかな?」


『ッ、A、AA……! BOOOOLAOAAAAッ!!』


 今まで抱いた事さえない感情──〝恐怖〟を全て拭い去る為に、虚勢から来る咆哮を轟かせるしかなくなっていた。

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