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竜化世界で竜を狩る 〜天使と悪魔と死霊を添えて〜  作者: 天眼鏡


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三つ巴の空中戦

 瞬間、アシュタルテもまた羽を広げて高く飛び立つ。


 ……別に、リューゲルの戦意にてられたわけではない。


 ただ、ちょっと外見や能力が他と違うだけの人間相手に遅れを取るなど悪魔大公グランデュークとしての誇りが許さなかったのだ。


 仮に敗北したとて、何かを失うわけでもないのに。


『オイオイ、馬鹿の一つ覚えなんじゃなかったのかァ!?』


『……貴方に合わせてあげたのよ、感謝なさい』


『はッ、そりゃどうも!』


 そんな彼女を煽るリューゲルの表情は、どこか明るい。


 魔界のNo.2という、こちらの世界で言うところのSランク狩人ハンターに相当する絶対強者が追従して来た事実に気分が良くなったのか、それとも単に強者同士の三つ巴に高揚しているだけかは定かでないが、悲壮感がないのは悪い事ではない。


 ……国の一大事なのだから多少はそういう感情を抱いていてもいいのではとも思うものの、まぁそれはそれとして。


『BAAAAAOOOOOOOOッ!!』


 馬鹿の一つ覚えはあちらも同じだったようで、つい先ほど無効化されたというのにまたしても雷撃を放つ雲羊竜うんようりゅう


 一応、今回は〝重力操作〟のみならず〝加重〟の効果も比重多めの息吹ブレスを添えた手加減なしの攻撃だったのだろうが。


『効かねぇ効かねぇ! 息吹そいつも対処可能って解ったからな!』


『……私を真似たからでしょう? この後追い蜥蜴』


『LAッ、GOO……ッ!!』


 残念ながら、それでも1人と1柱には通用しなかった。


 かたや吸収、かたや受け流し。


 片方はもう片方の模倣による成果とはいえ、もはや息吹ブレスも雷撃もリューゲルとアシュタルテには何の苦も与えず。


 そして、無数の雷撃と絶え間ない重力を捌き切った後。


『やっと目が合ったな! 1発ブン殴らせろやァ!!』


『野蛮ね、まぁいいけれど』


『LOOッ──』


 ついに両者は今まで誰も見た事さえなかった、もちろん誰も届かなかった雲羊竜うんようりゅうの顔の前まで辿り着き、かと思えば即座に片腕を振りかぶって攻勢に移行する。


 それぞれに充填されていく魔力の大きさ自体は雲羊竜うんようりゅうのそれと大差なくとも、それを受ける部位が顔なのは不味い。


 本能的にそれを察知したからか、すぐさま戦闘開始時と同じように顔を引っ込め、雷雲が如き羊毛で受けんとしたが。


 ……ほんの少し、遅かった。


『【鞭操術:縒帯(パワーギプス)】、からの──【爪操術:穿孔(ドリルクロー)】!!』


『【悪魔の破城槌(デモンズバッテリング)】』


『GUッ、BOEEEE……ッ!?』


 かたや尻尾を鞭に見立てて巻きつける事によりATK(物理攻撃力)を強化した片腕と、己の爪を武器に見立てて振るう螺旋の一撃。


 かたや黒羽を纏わせる事により巨大な杭打ち機(パイルドライバー)のように変異した片腕と、そこから射出した円筒による渾身の一撃。


 結局、双方の攻撃を真正面から喰らう事となった雲羊竜うんようりゅうが醜い断末魔を上げて雷雲ごと後方へと吹き飛ばされる中。


(曲がりなりにも、それぞれの世界における最高峰。 上には上が居るとはいえ、このままだと私の出番がなくなるな)


 ユニは、割と素直に1人と1柱を称賛していた。


 もちろん自身と比べれば劣るだろうが、それでもSランクと魔界のNo.2に相応しい力を発揮している以上、雲羊竜うんようりゅうEXP(経験値)を得るという本来の目的が達成できないかもと危惧もしており、どうしたものかと思案していたのも束の間。


『さて……おいクソ羊! もう俺らに〝量〟は無意味って解ってんだろ!? そろそろ魅せろよ、テメェの〝本質〟を!!』


『ちょっと、何を煽って……』


 突如、リューゲルが雲羊竜うんようりゅうを煽り始めた。


 ()()()()()()()()()()()()()()ような意思は感じる。


 ……が、それ以外の事は何も解らない。


 そうして、ただただ困惑するアシュタルテをよそに。


 雲羊竜うんようりゅうが、リューゲルの思惑通りに変異を遂げる──。


『O……O"OO……ッ!! GALBALBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!』


『『ッ!!』』


「アレは……」


 咆哮と雷鳴、稲光と重力が超広範囲に轟く中、あまりの眩さに両者が目を覆う一方、ユニは瞬きもせず全てを見守り。


 起こった変異が、推測通りであった事に笑みをこぼす。


 それから数秒後、咆哮と雷鳴が止んでいくのと同時に眩いばかりの稲光もまた少しずつ収まり、景色が晴れていく。


 そんなボヤけた視界へ真っ先に映り込んだモノを見て。


『……はッ?』


 アシュタルテが目を疑ってしまったのも無理はない。


 何しろ、つい先ほどまで視界を占拠していた雷雲が──。











 ──……()()()()()のだから。

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