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竜化世界で竜を狩る 〜天使と悪魔と死霊を添えて〜  作者: 天眼鏡


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狩人講習:7日目・【黄金の橋】 (参)

 瞬間、シェルトはフリューゲルを天高く掲げつつ。


「3分くらいは保ってよ……!【笛操術:奏防アコースティックガード】ッ!!」


「「「ッ!?」」」


 衝撃の壁を生み出す槍の技能スキル、【槍操術:衝壁(ショックウォール)】ともまた違う、〝音の壁〟を生み出す防御系技能ブロックスキルを上方に展開する。


 不可視の壁という意味では【槍操術:衝壁(ショックウォール)】と大差ないものの、この技能スキルには〝外側の音や声を吸収すればするほどにDEF(物理防御力)MND(特殊防御力)が上昇する〟という特殊な性質があり。


『『『……ッ!!


 残念ながら人造合成種キマイラはその性質を見抜けず、ぎゃあぎゃあと3つの首で叫び声を上げながら息吹ブレスを吐き、音の壁を()()()()()()()()()というイタチごっこを強いられていた。


「皆、よく聞いて! 変則的事態イレギュラーが発生したけど、狙いは変えない! 3つの首全てを落として勝利する! いいわね!?」


「でもお嬢! あんな高さまで飛ばれちゃあ……!」


「足場の生成も、できませんし……ッ」


 それを勝機と見るに敏としたシェルトは即座に仲間たちのもとへ駆け寄り、〝翼の発現〟という異常事態こそあれど目標に変更はないと説いたが、シェルトより現実が見えているハクアとシェイは当然の如く反論を展開しようと試みるも。


「……策が、お有りなのですわね?」


「えぇ、1回しか言わないわよ──」


 ただ1人、シェルトとの付き合いが最も長いハーパーはその表情からある種の確信を感じ取っており、そんなハーパーからの問いに対して然りと頷いたシェルトが口にした策は。


「──ま、マジっすか? それ、かなり危ないんじゃ……」


「そうね、行きも帰りも命の保証はできないわ」


「本気なのでしたら、お付き合いしますけれど……」


 優れた実力と才覚を持つ3人に疑心や危機感を抱かせるほど不安定なものであったらしく、3人が顔を見合わせ『止めるべきか』と逡巡する中、シェルトは視線を滑らせるように3人を見遣ってから口を開き。


「……貴女たち3人は、とっても優秀よ。 それこそ、私なんて比較対象にしてしまう事さえ烏滸がましいくらいに」


「な、何すか急に……」


「シェルト様も、優秀である事に変わりないのでは……?」


 ある種の諦めを感じるような声音で3人の称賛と己の卑下を呟き始めた事に、ハクアとシェイはただただ困惑する。


 ()()ハクアたちからすれば、シェルトは〝まぁまぁ優秀なリーダー〟なのだから、そこまで自分を卑下する必要などないのにと思ってしまうのも当然だったのだが。


「ハーパー、貴女なら忌憚ない言葉をくれるでしょう?」


「……」


 そんな中、独り沈黙していたハーパーの心情を知ってか知らずか少々ズレている気もする信頼のもと、シェルトは彼女なら察してくれている筈だと思い、遠慮のない言葉を求め。


「……ユニ様が、仰ってくださいましたの。 『君たちは、いずれ最後の希望(ラストホープ)の境地にまで到達し得る』と。 その中に、シェルト様のお名前が連ねられる事は……残念ながら……」


「……でしょうね」


 そんなリーダーからの要望に対し、シェルトだけでなくハーパーたち自身にも伝えていたらしい〝3人の未来〟についての話を、みるみる細く小さくなっていく気まずげな声音で正直に明かしたハーパーに、シェルトはただ頷くだけ。


 素っ気なくも思えるが無理はない。


 その話を誰より先に聞いたのは、シェルトなのだから。


 それゆえ愕然とする事もなければ悲哀に満ちた表情を浮かべる事もなく、シェルトは覚悟と憂いを秘めた顔を上げ。


「……私、貴女たちと仲間になりたいの。 それこそ背中を預けられるくらい、お互いを信頼し合える──本当の仲間に」


「「「……?」」」


 きっと改変前なら困惑と失望に塗れた苦笑いとともに嫌々ながら受け入れられていただろう、『本当の意味での仲間になりたい』という願いを意を決した震える声で口にしたが。


 シェルトの必死さと裏腹に3人は疑問符を浮かべるだけ。


 まぁ当然と言えば当然だろう。


 3人は【黄金術:逆理(アルケミックモッド)】の影響で、〝悪い人ではないが頼りにはならないリーダー〟から〝実力も統率力も優秀な頼れるリーダー〟へと認識を改変させられているのだから。


「だからお願い、さっきの策を……私を、信じて……!」


「「「……」」」


 ゆえに、その必死な懇願に対する解答も決まっていた。


「なーんでそんな悲観的ネガティブになってんのか解んないっすけど」


「元々、ボクたちのリーダーはシェルト様ですから……」


「シェルト様こそ、どうか信じてくださいな。 貴女様が率いる私たちを。 そして何より──……貴女様自身を」


「……ッ! えぇ、ありがとう……!」


 改変後の3人からの信頼度は非常に高く、よほどの事でもなければ信頼されなくなるような事態にはならない──というユニの()()を知らないシェルトは素直に喜びつつ。


 すでに補強を超える勢いで破壊され続け、もう間もなく突破されるだろう音の壁越しにフリューゲルを突きつけ叫ぶ。


「いくわよ皆! これが最後の攻撃! 力を貸して!!」


「「「了解!!」」」


 人造合成種キマイラvs【黄金の橋(ギャッラルブルー)】、最後の攻防が幕を開ける。

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