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俺の幼馴染が部長に。  作者: サドガワイツキ
1章:NTRるものあれば出会う者あり
24/40

24:姑息な一手と不屈の闘志

朝、教室に着くとリナや藤堂、福田、稲架上といったいつものメンバーはすでに到着していた。

「遅かったな判官」

「おう稲架上。お前の連れの方は…代表女子コンテストに出るんだっけか」

「一応な。本人も申し込みはした割に未だに迷ってるから、女ってのはわからないもんだ」

違いないな、と稲架上と笑い合いながらその隣を通り過ぎた、のだが…

「藤堂、大丈夫かよ…」

完全に寝不足&疲労困憊&ハイテンションの藤堂。髪がところどころハネた眼鏡姿。ついでに額には熱さまし―と、首にはUの字の空気枕。藤堂が凄く…ご覧の有様だよ!になっていた。

「いえーい九郎みてる~?」

「お前それNTR側のチャラ男じゃねーか」

疲れのあまり虚ろな目でダブルピースしている藤堂。いつもとキャラが違いすぎる…。

「昨日疲れが限界きててたみたいだからエナドリをオーバードーズの勢いでガブのみさせたんだけど、キマりすぎてパープーになっちゃったにゃぁ。今日ぐっすり眠らせたら明日はいつも通りで恥ずかしさで死にたくなってると思うから優しくしてあげてほしいにぃ」

そう言ってそっと顔をそむける福田。いや、パープーとか言ってやるなよ…藤堂は犠牲になったのだ。あと藤堂ってもしかして隠れオタ…いや…言うまい…。

「リナ滅茶苦茶可愛いから優勝間違いなしだし?ウヒョーたのしみ~うへへ」

相変わらずブイッ、ブイッとしている可哀想な藤堂に涙しながら俺は席に着いた。

「なんだよおらー九郎トラちゃん頑張ったんだからご褒美にベーゼしろよベーゼ。水着もしっかり鞄にもってきたじぇじぇじぇ」

「―――トラちゃん、明日思い出して死にたくなるからそこまでだよ」

一瞬、福田が糸目を開いて凄い速さで手を動かした…気がするけどよくわからなかった。

カクンッ、と項垂れる藤堂。

「――おっとトラちゃん寝落ちしちゃったみたいだから保健室に連れて行くにゃあ」

いや気のせいだったいつもの糸目だった。見間違いかな?そう言って福田は藤堂を背負って保健室に運んでいく。だ、大丈夫か藤堂…。

「…なんだよ」

藤堂と福田を見送っていると、リナがじーっとご機嫌斜めなジト目で俺を視え居た。

「…九郎ってばおモテになることでーようございましたねー」

「おぉ?どうした一体」

なんだかリナさんはご機嫌斜めだった。なんだってんだよぉ…。

ふと、視線を感じたのでみると佳織がこちらをじっとみていた…様な気がするが、すっと目線をそらした。…なんだ?藤堂の鞄をみてるのか?


午前中、二限目は化学の移動教室があり、そのころには無事保健室から戻ってきた藤堂や福田も交えて別棟の化学室へと向かった。授業が始まって暫くすると、同じ机に座っていた稲架上のスマホがブルブルとなり、画面を見た稲架上の目が鋭くなった。

「―――おい判官。教室に戻るぞ。急げ」

そう言って俺の手を掴む稲架上。

「うおっ、おいなんだよ」

「先生、すみません。判官と2人でトイレに行ってきます」

俺の言葉を待たずに、手を挙げてそう言う稲架上。眼鏡の化学教諭はまだ若い女教師だが、なぜかそんな稲架上の言葉にギラッと目を輝かせた…様な気がした。何だ?寒気が…。

「え、ええ。そ、それはいいんですけど授業中に2人でトイレですか?」

「はい、ちょと2人で行ってきます。判官にも一緒に来てもらわないと困るので」

「―――そう、そういうことなのね!わかったわ!先生そういうの理解あるし夏冬もそういう本買いにお台場に行ってるから…じゃなかった。あ、ゆっくりでいいからね?イッてらっしゃい!!」

なぜかキラキラした笑顔で送り出されてしまった。あと一部の女子が黄色い声をあげていた。なんだ、右とか左って。あと佐藤君、それなら僕もとかいってついてこようとしなかった?!なんだ、今何かとんでもない誤解を受けた気がするぞ、これ大丈夫なのか稲架上?!?!そう思いながら稲架上に引っ張られるままに教室を出たところで、真剣な表情の稲架上が声を荒げた。

「やられた。教室に戻るぞ」

稲架上の真剣な様子に、何かただならぬ事態が起きていることは理解した。

「―――わかった、行こう!」

そう言って頷き、稲架上と一緒に走り出す。

「えっ、とっと、ヤられたってどっちが?」「判官もイこうとか言ってた?」「ヒエ~、こうミケは稲架×判の新刊出しちゃおうかな…!」「先生3部買いますから取り置きお願いしますね」

―――何かとんでもない誤解が加速している気がするが…クッ、今はそれどころではないのだ!!


「稲架上!!」

教室の入り口では、いつぞやみた金髪ロングの美少女がこちらに向かって手を振っていた。

輝姫キキ!」

稲架上が名前を呼ぶと、その輝姫と呼ばれた女の子がこっち、こっちと手招きをする。

「稲架上、あれ見てよ」

――――そこにあったのは無残な光景だった。

藤堂が、福田が、リナが。皆が用意した代表女子コンテストのための衣装が、ハサミで無残に切り裂かれていた。

「こ、これは…」

あまりにもひどい光景に俺も言葉をなくす。

「迂闊だった。眞知田がこんな手を使ってくるとはな」

そう言って切り裂かれた衣装や状況を確認している稲架上。

「ご丁寧にホルターを縦真っ二つにきりさいて使えなくしている。パレオもだ」

―――なんだよそれ。こんなの、あんまりじゃないか。ふざけんなよ。

この衣装を作るために色々な乙女の尊厳を犠牲にした藤堂の姿が蘇る。

「―――私、授業受けるの退屈だったから稲架上にちょっかいかて退屈しのぎしようと教室にきたんだけどさ、移動教室っぽくて誰もいないから立ち去ろうとしたら教室の中に誰かいたの。…眞知田だっけ、私の嫌いな“偽物”な子」

「またお前は俺を呼び出しに来たのか…まぁそれはおいておいてもよかったというべきか悪かったというべきか」

そう言って輝姫と稲架上が話している。そういえば稲架上時々授業中にどっかいくけどこの子に呼ばれてどっか言ってたりするのか。なんだよ稲架上も隅におけねえなあ!

「そう。あの茶髪の嫌な女。私を取り巻きに囲おうと接触してきたけどあしらったらつるんでる女子を使って嫌がらせはじめた面倒な奴」

…げぇっ、佳織、他のクラスの女子とそんなトラブルも起こしてたのかよ。

「…で、声をかけたら顔を隠して逃げてったけど…あの偽物な子で間違いないよ。ただ、証拠とかも何もないけど」

「…という事だ。確かに眞知田は移動教室の時居なかったな…体調不良とか言って保健室に行くとか言っていたよな」

そんなやり取りを聞きながら無残に切り裂かれた衣装を見ていると、怒りが沸々と湧いてくる。

「―――クソッ!」

「落ち着け判官、coolになれ」

そう言って稲架上に窘められる。

「―――私、こういうやり方嫌い。ねぇそこの貴方、稲架上の言ってた友達でしょ?私も協力してあげる」

そう言って金髪の女の子が俺に話しかけてきた。

「私出場辞退するよ。で、私の持ってきた衣装とその残骸の衣装を合わせて、午後までに突貫で衣装作ったら何とか間に合わない?」

そう言って手を差し出してくるその子に、手を握り返す。

「…いいのか?それは助かるけど、君も目的があったんじゃないのか」

「私は稲架上がどんな反応するかの興味だけで、なんとなく出場しようかなって思っただけだしね。私は輝姫きき案田輝姫あんだきき、輝姫って呼んで。稲架上にもそう呼ばれてるし」

「判官九郎だ、すまん、助かる。このお礼は必ずするよ」

それは稲架上にしてもらうから大丈夫、と稲架上にウインクをする輝姫。稲架上は、あー…と頭をかいてる。何稲架上やれやれ系主人公なの?将来環境テロになったりしないでくれよ?

「…兎も角、そう言う事だ。―――時間がない。これを作ったのは藤堂だったか?…すぐに藤堂にも連絡した方がいい」


稲架上に促され、連絡すると授業を抜け出してきたであろうリナ、藤堂、福田が教室に戻ってきた。輝姫から聞いた話などを説明すると、3人ともそれぞれに震えている。

「…なにこれ、普通に犯罪じゃない」

リナは絶句し、藤堂は膝をつき、福田は―――俯いた顔がみえなかった、が。

「―――出来らぁ!」

クワッと目を見開き立ちあがあると、拳を握りながらそう叫ぶ藤堂。

「だ、大丈夫か?寝不足なんだろ?」

「そんなんエナドリ飲んでドーピングすればなんとでもなる!それよりこれをやったのが佳織だろうと誰だろうと、こんな汚い手に負けてたまるかってんだよ!!やあってやるぜ!!」

我を空にして煩悩でも断ちそうな物言いで、藤堂が立ち上がった。今気力150だったりするのかな。

「あら、頑張るのね。それじゃ私も協力するから―――あんな“偽物女”、やっちゃいなよ」

そう言って固く握手を交わし合う藤堂と輝姫。リナと福田の2人もそこに手を重ねている。

「―――ごめん皆、私…負けられない負けたくない!!」

「…これはちょっとないよね、ゆるせない。…あ、にゃあ。」

一致団結し闘志を燃やしている女子たちに、どう声をかけようかと迷っていると稲架上が俺の方を叩きながら話しかけてきた。

「1人1人は火だけど炎となった女子は無敵…だったか?」

「佳織は宇宙怪獣かな?」

「似たようなもんだろ」

稲架上も結構言うよな、と思いつつ、俺は4人の女子を応援するしかできない…かくなる上は!

「がんばれ♡がんばれ♡」

「九郎それキモいからやめなよ。海賊やめなよってくらい言うけど本当やめなよ」

場を和ませようといったんだがジト目のリナにぶった切られてしまった。

「お前時々ギャグのセンスが致命的だよな」

稲架上にまでそんな事を言われてしまった…!ぴえん。

かくして俺と稲架上は授業なんて捨ててかかってこいと家庭科室に向かう4人の女子を見送るのだった。


―――ちなみにその後で化学室にもどるとなんだかすごく意味深で温かい視線の先生に迎えられてしまった。あと一部の女子もどっちが受けだったんだろうとか凄く盛り上がっていた。おい稲架上これ大丈夫なのか?なんかよくわからない誤解招いてないか??そうこっそり聞くと、稲架上は「…やめろ、深く考えるな」と言いながら、迂闊だったかと頭を抱えていた。ど、どういうことなんだってばよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか自分に絶対的な自信がある割にやることがw 深層心理ではってことなのかな?
[一言] >お前たちは一人一人では単なる火だが、 >二人合わせれば炎となる…! >炎となったガン○スターは無敵だ! んーなぁぜか声が聞こえてくるようだよぉ あの声がぁ
[一言] 今話のBGMは某トップより「危機」ですね。
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