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17話 豪華な料理!

凪咲さんと澪は黙ったまま笑みを浮けば、俺を見つめている。

その圧から逃げるように、俺は窓からの景色を眺めていた。

息詰まるような静けさの中、別部屋から沙耶さんが戻ってきた。


「すぐに食事が運ばれてきますので、もう少しお待ちください」

「僕はオムライスが大好きです。沙耶さんはどんな料理が好きですか?」

「私もオムライスは大好きです。高価な食事もいいですが、洋食屋のような料理の方が嬉しいですね。私は一般庶民ですので」

「僕と同じですね」


必死に悠斗は沙耶さんに話しかける。

そのおかげで、緊張していた雰囲気が和んできた。


しばらくすると、玄関の方から扉が開く音がして、ホテルの使用人がカーゴに料理を乗せて、部屋の中に入ってきた。

そしてテーブルの上に次々と人数分の料理が並べられていく。

すると凪咲さんが料理の説明をしてくれた。


「レストランでもありませんし、部屋の中ですので、コースではなくアラカルトで料理をお願いしていました。オマール海老のテルミドールと和牛ヒレ肉とフォアグラのロッシーニ風ステーキです。サラダやスープもありますので、ゆっくりとご堪能ください」

「あ……ありがとうございます」

「フォークやナイフの他にお箸も用意ありますから、普段のように寛いで食べてくださいね。空君、ご飯のおかわりもありますし、お腹いっぱい食べてくださいね」


テレビで見たことがあるような高級ホテルの高級料理……

オマール海老……和牛ヒレ肉……フォアグラ……明らかに高価なのはわかる。

こんな料理を家で丼ぶりを食べるように、口の中へ放り込んだら、神様に怒られそうな気がする。


オマール海老の身を箸で抓んで、口の中へ。


「上品で美味しい」

「気に入ってもらえたなら嬉しいです」


俺の一言に、凪咲さんは微笑む。

すると隣でフォアグラを食べ、悠斗は思わず言葉を漏らした。


「美味しい……小春にも食べさせてあげたいな」

「では、小春ちゃん用に、料理のテイクアウトを頼みましょう」


凪咲さんの後方いる沙耶さんが優しく提案する。

それを聞いて悠斗は目を輝かせた。


「やっぱり沙耶さんは女神のような女性です」

「いえ、これは私の提案ではなく、皆様からご要望があれば、それを叶えるように、お嬢様から指示されておりましたので、全てはお嬢様の采配です」

「凪咲さん、ありがとうございます」

「沙耶から聞いていますが、小春ちゃんは凄く愛らしい妹さんのようですね。今度、紹介してくださいね」

「ぜひ、よろしくお願いいたします」


悠斗、凪咲さん、沙耶さんの三人は和やかに会話を進めていく。

それまで黙って美味しそうに食べていた、澪が口を開いた。


「お料理、すっごく美味しいです。ありがとうございます。でも、こんな高価カロリーの料理、ダイエットが必要な空に食べさせて、家に肉を届けたり、空を太らせるつもりですか」

「その心配には及びません。私と沙耶で空君のダイエットメニューとスケジュールは組んでいますので。『コンセプトは美味しく食べて、どんどん痩せる』です。私としては今のまま肥満であっても、空君は十分に魅力的な男子だと思っていますけど」

「私だって、太っていても空は空だって思ってるわよ。私達は幼馴染なんだから」


肥満のままであっても……太っていても……

その表現は、ギリギリ及第点ってことだよね。

少しは痩せた方がいいと、二人は思っているのか。

凛姉もうるさいし、ダイエットを頑張るしかないよな。


凪咲さんと澪の話題に、悠斗も乗ってきた。


「空のダイエットメニューってどんなことをしてるんですか?」

「マラソンなどの基礎体力の強化と、体の柔軟性を促すためのフィットネスとヨガですね」

「ジムで訓練しているんですか?」

「いえ、お嬢様が指導され、私がメニューとスケジュール管理をしています」

「ということは……凪咲さんと沙耶さんも、フィットネスとヨガを?」

「もちろんです。手本を示して、空君の運動の補助するもコーチングですので」


話を聞いて、澪が目を細め、俺を見据える


「ふーん、密室で二人からダイエット運動を教えてもらってたんだ」

「変な言い方するな。毎日の訓練は朝のマラソンと柔軟体操が中心だ。週に一度、広々とした部屋で、二人にダイエットのための運動を手伝ってもらっているだけだ」

「へー、そうなんだ。ヨガとフィットネスの運動をする時、空はどんなスポーツウェアを着て練習してるの?」

「もちろん、ジャージだよ。それしか持ってないからな」

「じゃあ、二人は?」


澪の鋭い突っ込みに、俺は思わず視線を泳がせ、顔を逸らした。


頭の中に、凪咲さんと沙耶さんのレオタード姿が浮かんでくる。

澪に知られるのは非常にマズイ。


どう答えていいか困惑していると、凪咲さんが小さく手を上げた。


「もちろん、私も沙耶もジャージ姿ですよ。私も年頃の女子ですので、男子の前でレオタード姿はちょっと」

「お嬢様の言われる通りです。年齢も二十台の女性ですので、年下とはいえ男性に露出度の高い装いを見せることは憚られます」

「そうですよね……ちょっと変な妄想してしまいました」


凪咲さんと沙耶さんの答えに、澪はペコリと頭を下げた。


二人の機転で、緊急事態は免れたけど……悠斗、疑うような視線を送ってくるなよ。

頼むから澪の前では、疑問を口にしないでくれ。

別作品の書籍作業のため、不定期での更新になります。

応援くださった読者様、まことに感謝いたします。

ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

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