委員会――1
「はあ……」
昼食を終え、教室に戻る道すがら、詩織が不意に溜息を漏らした。
「どうした、詩織?」
「教室に戻るのが億劫でして。皆さんと離ればなれになってしまいますから」
「そっか……詩織ちゃんだけ別のクラスだもんね」
「しかたないとはいえ、辛いわね」
「ええ。いけないことですが、皆さんを羨ましく思ってしまいます」
寂しそうに苦笑する詩織を目にして、俺、萌花、美風は眉を下げる。
当然ながら、詩織を仲間はずれにするつもりなんて毛頭ない。休み時間になるたびに、俺たち四人は集まっている。
それでも、ひとりだけ別のクラスなのは、やはり嫌だ。俺たちの権限でクラス替えを行うことなんてできないけれど、なんとかしてあげたい。
なにか妙案はないかと考えて――閃いた。
「今日、委員会決めがあったよな?」
「はい。それがどうかしたのですか?」
「俺と同じ委員会に入らないか?」
提案すると、詩織が目を見開く。
「なるほど! 同じ委員会に入れば、委員会の仕事をしているあいだ、詩織ちゃんと蓮弥くんが一緒になれるね!」
「ナイスアイデアよ、蓮弥!」
俺の意図を察した萌花と美風が、明るい笑顔を咲かせる。
「どうだ、詩織?」
「蓮弥さんがよろしければ、是非!」
「もちろん構わないよ。どの委員会に入る? 俺は詩織の希望に合わせ――」
「図書委員がいいです!」
「即答」
俺の発言が終わらないうちに、詩織が食いつくように答える。その勢いと、本好きらしい選択に、笑いを堪えられない。
「正直、わたしたちだけ蓮弥と同じクラスなの、心苦しかったのよね」
「よかったね、詩織ちゃん!」
「はい!」
表情の変化はわずかだが、詩織の瞳は星空みたいに煌めいている。
詩織の喜ぶ姿が嬉しくて、俺、美風、萌花は口元を緩めた。




