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夢で逢いましょう!!!  作者: おっさん
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最終話

47

それから一週間、宏と由香の生活は一変していた。マスコミからの暴力的な取材はなくなり、SNS上での誹謗や中傷も嘘のようにその姿を消した。


 影で指をさしていた連中も手のひらを返したような態度を見せて宏と由香に接するようになった。冤罪が晴れたこともあるが内藤母娘とその執事が姿を消したことで街のパワーバランスが変わったためである……


今までの事が嘘のようにしてあの日を境に日常が戻ったのだ。


そして、それは由香と宏の二人だけではなかった。


                                  *


「お父さんのリストラ話、なくなったみたいだよ」


父、雄太からおくられたメールを見た由香が嬉しそうな声を上げた。


「なんか、出世するらしいし……」


「そうなんだ……」


言われた宏は適当な相槌を打った。


「どうしたの、うれしくないの?」


由香が父の事にふれると宏はちらりと由香を見た。そして食卓に置かれた鼈甲の櫛を手に取った。


「本当だったのかな……今までのこと……」


 夢魔と言われる化物と対峙し、精神の底を抉られるような経験をした宏には現在の平穏が嘘のように思えた。


一方、由香はそれに対してはっきりとした口調で返した。


「その櫛があるってことは全部本当だよ、今までの事、全部……夢魔に関わる事件はね」


宏はそれに対し小さく頷いた。


「あまりに大きな事件の連続で、正直、現実感がないんだよね……それに内藤家のことはあまりに酷くて……」


 3代にわたり内藤家を背のりした3人は一夜の火事でそのすべてを失っていた。安倍からの連絡で『失火』として処理されたと聞いたが、宏も由香もそうとは思っていなかった。


「これでいいんだよ、おにいちゃん……あの人たちは、報いを受けるべだよ。生きていたら他の人間を捕食して、新たな犠牲者を生み出していたはず……美紀ちゃんも、副島先生も、絵里ちゃんも……あんな目にあったんだから」


由香はそう言うと達観した表情を見せた。



「生きてちゃいけない人間もいるんだよ」



由香の言動に対し宏は沈思した。



「……そうかもな……」



宏がそう言って瞼を閉じた時である、背中に視線を感じて振り向いた。


                                   *


なんと、二人の前には可憐な少女が現れていた。



『櫛を返してもらおう』



少女が淡々とした口調でそう言うと由香が最初に口を開いた。


「お世話になりました。」


 深く頭を下げる由香の姿には感謝と尊崇の念が込められていた。だがそれと同時に内藤家を壊滅に追いやった少女にたいする畏怖心も浮かんでいる。


ショットガン無双と思いきや実際は虐殺である、一方的に夢魔を葬る彼女の姿は悪魔にも見えた。


可憐な少女はそれを分かっているのだろう、由香を見て何も言わなかった。


そんな時である、しゃがれた声が由香に話しかけた。



『礼を言うのこっちの方だ、お嬢ちゃん』



相も変わらずどこから話しかけているのか分からなかったが、その口調は妙に軽快であった。



『久々にいい根をもらった、こっちはウハウハだ!』



万馬券を当てた無職のおっさんのような響きに由香も宏も互いに目を見合わせた。


その様子を見た可憐な少女は声を上げた。



『そろそろ、帰るぞ!』



可憐な少女がそう言うと宏は気になっていたこと思いきって尋ねた



「あの……お名前、教えてもらってもいいですか?」



 宏がそう言うと可憐な少女は鋭い眼で宏を見据えた。その瞳の奥には夢魔と同じく黒い焔が燃え盛っている……


宏はおののいて後ずさりした。その様子を見た可憐な少女は小さな声でつぶやいた



『ミマだ』



少女がそう言った時である、宏と由香のいたリビングに異変が生じた。



『この地にもう夢魔はいない……私たちの存在する理由はない……』



可憐な少女はそう言うと背を向けた。


宏がいそいで彼女に櫛を渡すと空間のひずみから緑風が流れ込んできた。



『世話になった』



ミマがそう言った時である、つむじ風が舞い上がりと可憐な少女の袴をもてあそんだ。



『キャッ!!』



宏はミマの下半身に視線を移すとその眼を大きく見開いた。



『……お前……見たのか……』



 ミマが顔を赤らめ宏を見る、そこには夢魔を屠った刈人リーパーの面影はなく、年頃の少女が見せる恥じらう表情があった。


宏が肯定を意味する沈黙みせると二人の間に微妙な空気が流れ込んだ。


そんな時である、絶妙のタイミングでしゃがれた声が宏に声をかけた。



『いいもん見たな、宏!!』



しゃがれた声は卑しい口調でそう言うと今度はミマに声をかけた



『そろそろ時間だ、お嬢、行くぞ!』



 少女は『やむを得ない』と言う表情を見せると何も言わず緑風が吹き込んでくる歪みの中にダイブしていった。


宏と由香はその姿を茫然として眺めた。


                                  *


しばし時が流れ、歪みがなくなると由香がポツリとつぶやいた、


「ねぇ、おにいちゃん……ミマさん……」


由香がそう言うと宏が渋い表情で答えた。



「ああ、履いてなかった……」



夢魔を殺戮した可憐な少女はなんとノーパンであった。





 これにて、この作品は終わりとなります。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。あまりの暑さに作者は『失踪』しかけましたが何とか終わりを迎えることができました。(よかったぜ!)


もしよければ、感想など残していただけると嬉しいです。(感想があれば続編も………)


では、みなさん、お達者で~(暑いから気を付けてね!)



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