4-3 反逆の騎士 2
地面にくっきりと足型を残して澪がモードレッドに飛びかかる。一瞬反応が遅れたモードレッドは慌てて一歩飛び退いた。
「……ハァッ! 」
「チッ! この小娘…… 」
モードレッドの首に澪の剣が触れる。間一髪で受け止めて反撃に出ようとするが、澪は体当たりを食らわせて彼の動きを止めた。
「ここッ!……ウグッ!! 」
「なめるなぁッ!! 」
剣の柄頭で澪の背中を殴り付け、彼女を地面に這いつくばらせるモードレッド。気付けば彼の銀の鎧には所々傷が入っていた。
「……化け物め、怒りで限界を超えたというわけか」
「ゴホッ!…… ヒュー、ヒュー…… 」
背中を殴られた衝撃で息が詰まる澪だったが、その目から闘志は失せていない。また立ち上がろうとするも、モードレッドはすかさず剣を掲げ、光の束を射出する。
「ウワアァァ!!…… 」
爆風とともに黒煙が辺りを包む。澪はその場に膝から崩れ落ちた。
「……やっとくたばったか、世話の焼ける小娘よ」
「う……ぐ…… 」
なんとか剣を取ろうと這いずる澪だったが、モードレッドがその右手を踏みつけ、髪の無造作に掴み上げた。
「なかなか大した力だった。得物が剣でなく槍であったなら互角にやり合えただろうに」
「ちく、しょう…… 」
抵抗できずに力なく持ち上げられる澪を、司はただ見つめるしかなかった。
(動けッ! 頼むから…… くそッ!!)
必死に木の下から出ようともがく司。しかし脚を挟まれているために一切身動きが取れない。
(頼む! 彼女を助けたいんだ!!…… )
司の思いをよそに、モードレッドは既に澪へとどめを刺しに動き始めている。
「この鎧…… 神器か? 人が扱うには余りにも霊力の消費が酷かろうに」
「や……めろ…… 」
未だうっすらと光を放つ澪の宝具に触れるモードレッド。しかしなぜか鎧に触れたとたんに指先が燃え始めた。
「加護か、なるほどこれでは殺せぬ」
「はな……せ…… 」
澪はなんとか腕を持ち上げてモードレッドを振りほどこうとするが、再び赤黒いロングソードに光が走る。
「ぐぁッ! うぅぅ…… 」
「まだ死なんのか。しぶとい」
細かく攻撃を当てるモードレッド。徐々に澪の反応がなくなっていき、生気が失せはじめた。
「ア……… ウ…… 」
「これで終わりだ。よく耐えた小娘よ」
光が走る剣。司は思わず叫んだ。
「やめろぉォォォォォォ!!! 」
モードレッドが剣を止めた。固唾を飲む司を横目で睨む。
「……先にこっちを消すか」
切っ先が光る。もはや動くことすら叶わない司は観念したように目を閉じた。
「……二人揃って死ぬがいい」
閃光がほとばしる。が、光の束は司の頬を触っただけで、彼を押さえつけていた木を粉砕した。
「……あんたは、あんただけは許さない」
さっきまで死に体だった澪が立ち上がっていた。それどころか、モードレッドの左腕が地面に転がっている。
「……得物を槍に変えたのか」
「そう、力は想いが作るもの。だよね? アダム」
澪の鎧がいっそう光りはじめる。そして、光の中から『彼』が現れた。
「はい、良くできました」




