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ネクスト・オリジン  作者: orion1196
邂逅
11/24

2-4 想いを力に

『いいか? よく聞けよ。『(あれ)』を彼女の体から追い出すには、強い霊力をぶつける必要がある』


「霊力? 」


『お前には後で説明するからちょっと待て』


『蝕』の動きが止まったのをこれ幸いと『彼』がまくし立てる。


『でだ、霊力をぶつけようにも(おまえ)は扱い方が分からんだろ? そこで小僧、お前の出番だ』


 困った顔を見せる司。『蝕』は動きを止めたままこちらを見つめていた。


「……どうすれば? 」


『霊力を直接相手にぶつける。心当たりはあるだろう? 』


「でも、まだ不出来ですよ? 相手に止まってもらわないと…… 」


「それは私がやる」


 きっぱりと言い切る澪、少し不安げな司の顔を見つめて静かに微笑む。


「大丈夫、タイミングは合わせるから」


「……わかった。じゃあ始めるよ」


 司が右手を握ると、ぼんやりと白い光が拳を覆い始めた。『蝕』がそれに気づき触手を伸ばしたが、それらをことごとく澪が切り落としていく。


「アァァァァ、アアァァァァァ!! 」


「させないよ、百合はそんな簡単に人を傷つけない」


 いよいよ形勢不利とみて攻撃を強める『蝕』。澪はそれらを剣で防ぎ、切り飛ばしながら歩を進める。


「ガアァッ!! 」


「っ!! 」


 防ぎきれなかった触手の一本が澪の鎧を叩く。装甲の継ぎ目にヒットしたのか、澪が膝をついた。


「危ないっ! 一旦退いて…… 」


「続けて! ここで退いたらダメなんだ…… 」


 司の制止を振り切って立ち上がる澪。何を思ったか剣を納めて敵の懐に飛び込んだ。


「グッ、」


「させないよ。これは百合の望んでることじゃない」


 慌てて触手を振り上げようとするも、それらは全て澪に掴まれ動きを止められた。司の横に控えている『彼』もこれには驚いたのか、感嘆の声を漏らした。


『さ、やっちまえ』


「杉山、避けろ!! 」


 寸手で体を捻り、司の拳を避ける澪。光をまとった拳は見事『蝕』に命中し、体にめり込んだ。


「ギャアアァァァァァァァァ!! 」


 この世の物とは思えないような悲鳴を上げて、黒い塊が百合の体から離れていく。その場に取り残された百合は膝から崩れ落ちた。


「おっとと、なんとか無事のようですね…… 」


 百合を抱えあげる司。澪はそのまま駆け出した。


「逃がさないよ…… そこっ! 」


 さっきまで『蝕』であった黒い塊を捕まえる澪。必死に抵抗する塊を必死に押さえつけていた。


「このっ!…… 」


 澪の両腕から『蝕』が逃げようとしたその時、急に塊の動きが止まり痙攣しはじめた。


「……よくやった。これは大手柄だな」


「黒川さん…… 」


 よく見ると、『蝕』から伸びる影に小刀が突き刺さっている。どうやら黒川たちが間に合ったようだと二人は安堵した。


「隊長、被害は…… 」


「しいていうならこの玄関だけだな。ご苦労だった」


 大きく息を吐き座り込む司、澪も肩を撫で下ろしたが、その瞬間に変身が解け、倒れ込んだ。


『2回目でここまで使いこなすか。流石は俺が見込んだだけはある』


 今にも消え入りそうな『彼』が澪を誉める。対して黒川は真剣な目付きで『彼』を見つめた。


「あなたも英雄だというなら、名前だけでも教えてもらえないか? 」


『まだその時じゃない。いつかちゃんと語ってやるよ』


 意味ありな笑みを浮かべながら消えゆく彼。黒川は虚空を静かににらんでいた。


「……黒川さん、動けません」


「霊力切れか。仕方ない、彼女のついでに回収班を呼んでおく」


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