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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第十章 強襲!天才・イケメン・残念魔法使い!編
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第九十九姉「癒そうとする人間の出す声じゃねぇな・・・」

ブクマ1000突破しました!やっほー!これが『姉』の可能性やー!『妹』には負けへんでー!

ブクマ・評価・感想・レビューなどしてくださった多くの読者さんのおかげでここまでこれました。ありがとうございます。

そして、この作品を読んでくださった全ての方に、心からの感謝を。

これからもあねおれと初月姉弟をよろしくお願いいたします。

「クリボー、死亡きぜつ確認!すたんだっぷとぅざ~・・・」

「「びくとりー!」」


 Vサインを掲げた俺とさきねぇの勝利の雄たけびが河原に響き渡った。




「どうだヒイロ、近しいレベルの人間とやりあうのも楽しいだろう?」

「いいですね!最高ですよ!最終的に俺が勝つところなんか特に!」

「さすが私の弟ね!」「さすがムラサキの弟だな・・・」


 ノエルさんしか相手にしたことがなかったから、いつのまにか負け犬根性が染み付いていたみたいだ。

 それにしても、魔法バトルなんてやったことなかったからちょう楽しい!

 っと、たちくらみが・・・


「ヒイロ、さすがに疲れただろう。今日はゆっくり休みなさい。」

「そうさせてもらいます。クリスくんは・・・」

「ここに放置、といきたいが・・・そんな顔するなヒイロ。私が背負ってうちの庭まで運んでおく。ムラサキ!」

「あいよ~!さぁヒロ、お姉ちゃんと一緒にお風呂にでも入ってゆっくり癒されようぜグヘヘヘヘ。」

「癒そうとする人間の出す声じゃねぇな・・・」


 さきねぇに付き添われ、家まで帰るのだった。



「さて、めんどくさいが仕方ない。背負って帰ってやるか。寝る場所は庭だが、かまわんな?無言は肯定とみなすぞ。・・・よし。ふふふ、こいつにはヒイロの成長のための捨石としてまだまだ頑張ってもらわんといけないからな。よっこいせっと。・・・ん?こいつ、男だよな?臭くないし、軽いな。」



 その後も毎日クリスくんが俺に挑戦してきたが、長いのでダイジェストでお送りします。


 第三回戦


「必殺!アクアァァァァァ!トマホォォォォォク、ブゥゥメラン!」

「はっはっは!どこに向かって攻撃しげふぅ!」


 ○ ヒイロ - クリス ×


 結果 弧を描く水のブーメランが側頭部に直撃し気絶。俺の勝ち。



 第四回戦


「オラァ!」

「ま、魔法使いのくせに接近戦なんてやばんヴぉぁー!」


 ○ ヒイロ - クリス ×


 結果 手に水を纏う≪水拳アクアナックル≫の右ストレートにより顔面強打。気絶。俺の勝ち。



 第五回戦


「バカな!?≪水壁≫を踏み台に!?」

「伊達にあの世は見てねぇぜ!」


 ○ ヒイロ - クリス ×


 結果 俺が目の前に出した小・中・大の≪水壁≫を、三段跳びの要領で踏み台にし、上空から≪水弾≫を

 食らわす。またも顔面強打。気絶。俺の勝ち。



 第六回戦


「三十六計、逃げるが勝ちってね!」

「あ、逃げたぞ!ボクの勝ちだ!」

「バカかお前は?『魔法バトルでヒイロを倒す』がお前の勝利条件だろうが。早く追いかけないと時間制限でアウトだぞ?」

「そんな!?ま、待てー!」


 ○ ヒイロ - クリス ×


 結果 逃げたと見せかけて家の中で制限時間の15分間、お茶の時間を嗜む。無気絶。俺の勝ち。




 そして、今の第七回戦となる。

 が、いつもと違い、いきなり頭を下げるクリスくん。


「ヒ、ヒイロくん。一度でいいから大魔法の打ち合い勝負をしないか?この通りだ!頼む!」

「そういわれても・・・」


 正面から力押しだと不利だからな・・・どうしましょ?

 ノエルさんをチラッと見ると、『うん』と頷いていた。

 そこまで信頼してくれてるのか。なら、やるしかない!


「いいよ。その勝負、受けましょう!」

「あ、ありがとう!(小細工さえ使われなければ、絶対ボクのほうが強いはずだ!ふふふふ!)

「では、両者距離をとれ。・・・・・・・・・・・・・・・では、はじめ!」


 俺とクリスくん、共に目を閉じ、魔法を創造する。


「炎の精霊よ、クリス・ウル・クリフレッドの名において願う・・・」


 詠唱か。では、俺も。

 水VS炎・・・どっちが勝つかね。


「仁、義より出で、礼、智を起こし、忠、信を助け、孝、悌を求む・・・」


 そして、ついに互いの切り札が切られる!


「喰らえ!≪紅蓮三頭龍クリムゾンヒュドラ≫!」


 膨大な魔力を帯びた三つ首の炎龍が現れ、俺に襲い掛かる!


「・・・召還!≪八大ヤマタ王陣オロチ≫!」


 一方、その言葉とともに俺の前に八芒星が浮かび上がり、そこから八頭の水龍が現れる!


「なぁ!?」

「おぉぉぉぉ!かっけー!」

「ほぉ・・・!」


 三者三様の言葉が漏れるが、気にする時間も余裕もない。

 迫り来る三頭龍に対し、こちらは七つの龍頭で対抗する。

 さすが魔法力Cだ、単純な戦力首比は二対一以上なのに拮抗している。

 いや、拮抗していたのはぶつかりあった最初だけだ。どんどん七龍が推されてる。

 やはり魔力の地力の違いは出るな。

 でも、それで十分だ。一時でも時間を稼げれば。

 残る一龍がクリスに襲い掛かる時間さえ稼げればな!

 クリスを噛み砕こうと迫る龍。

 目を見開いているクリス。

 さて、そろそろ停止させないと。このままだとマジで殺しちゃう。

 ・・・やばい、制御きかねぇ!


「クリス!にげ「勝負あり。それまでだ。」


 その言葉と同時に、クリスを喰らおうと大口を開けていた龍が瞬時に真っ二つになる。

 そこにはノエルさんが立っていた。手には光り輝く剣が握られている。

 クリスは腰が抜けたようで、へなへなと地面に座り込む。


「創造できたとしても、制御できなければ成功とはいえないぞヒイロ。以後気をつけるように。」

「はぁ・・・ありがとうございましたぁ~・・・」


 なんとかそれだけ言うと、俺はその場で大の字にひっくり返ったのだった。




 二人とも魔力切れにはならなかったらしい。

 それでもお互いフラフラだが。

 しかし、戦いが終わってからのクリスくんの様子がおかしい。

 俯いたまま、一言も発さないのだ。


「・・・・・・」

「どうしたの?大丈夫?立てる?」


 俺は手を差し出す。


「・・・・・・・・・か」

「・・・か?」

「感服いたしましたぁぁぁぁぁ!」

「「「!?」」」


 いきなり土下座をしだすクリスくん。

 やばい、気絶しすぎ&鼻血出しすぎでついにおかしくなったか!?

 頭のおかしさは俺の≪聖杯水≫で治るのだろうか。

 ・・・いや、無理だ。

≪聖杯水≫で頭が治るなら、いつもゴクゴク飲んでいるさきねぇがもっとまともになっていてもおかしくない。


「何度となく戦いを挑むも、嫌な顔一つせず付き合ってくださった寛大さ!敗者であるボクにすら手を差し伸べる優しさ!そして、ボクより魔法力も魔法量も低いにも関わらず、手も足も出ない圧倒的な魔法センス!あなたこそ、ボクの理想だ!」

「「「・・・・・・」」」


 三人でアイコンタクトを取る。

『壊れた?』『壊れたわね。』『壊れたかもしれんな。』

 全員で困った顔をしていると、さらに爆弾発言が飛び出す。


「師匠!どうか、私を弟子にしてください!」

「「「・・・ししょう!?」」」


 ポカーンとしていると、さきねぇが突然笑い出す。


「ぷ。ぷくく・・・あーはっはっはっはっはっはっはっは!う、うける!し、ししょう!ヒロが!でし!わはははははははは!」

「えっと、俺?ノエルさんじゃなくて?」

「はい!ボクの師はあなた以外あり得ない!」


 あり得ないときましたかー。


「ノ、ノエルさん、どうすれば・・・?」

「・・・別にいいのではないか?」

「えぇ!?」

「どうか、どうかお願いします!なんでもいたします!どうかー!」


 土下座のクリスくんを放置し、ノエルさんに少し離れたところに連れて行かれる。


「ヒソヒソ(ヒイロ。アレは使えるぞ。弟子にしてやれ。)」

「ヒソヒソ(つ、使えるといっても、総合魔力Cに教えることなんてありませんよ?)」

「ヒソヒソ(アレはバカっぽいが、才能だけで見ればかなりの魔法使いになる可能性がある。訓練相手にはもってこいだ。最終的にヒイロより強くなったとしても、ヒイロならば飼いならせるだろう。師弟関係があればなおさらだ。)」

「ヒソヒソ(確かにそうかもしれませんけど・・・)」


 とはいってもなぁ~。師匠なんてガラじゃないし。

 やっぱり、断るかな・・・


「ヒソヒソ(それに、クリフレッド家といえば、国やギルドにも伝手があるはずだ。金も持っている。私には既に必要ないが、ヒイロには色んな『力』が必要だろう?有事の際にムラサキを守るためにも。)」

「弟子にしましょう!」

「・・・ほ、ほんとうですか!!」


 今の発言を聞かれていたらしい。

 その顔はまるで『ご主人様が仕事から帰ってきた時の犬』のような喜びようだ。


「ありがとうございますお師匠様!それでは、今日から御指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いいたします!」

「お、おぅ。」




 こうして、魔法使い暦一年未満の新米な俺に、弟子ができたのだった。

 ただ、クリスは渋ったが魔法学校はちゃんと卒業するように厳命した。

 学歴って大事だからね。

 そのため一度学校に戻り、卒業した後冒険者としてこっちにくることになった。

 なので、当分は長期休暇などの時に外出許可をとってこっちに顔を出す感じになりそうだ。

 名門の出なのに冒険者なんかになって大丈夫なのか?という疑問はあるが、まぁ本人の意思を尊重しようかね。


「ではお師匠様!休暇が取れ次第またお師匠様の下に帰ります!」

「う、うん。いってらっしゃい。」

「はい!いってまいります!・・・あの、お師匠様。学園からお師匠様宛に手紙を出してもよろしいでしょうか?」

「て、手紙?うん、別にいいけど。ここには届かないから冒険者ギルドのアルゼン支部に送ってね。」

「は、はい!ありがとうございます!では!」


 何度も振り返り手を振りながら、満面の笑顔で森から出て行くクリス。

 はー、なんだったんだ結局。


「あはははははは!よかったじゃないイケメンの文通友達が出来て!よっ!モテ男!ぶははははは!」

「うるさいよ!」




 しかしこの時、俺はクリスを完全になめていた。

 まさか、あれから毎日手紙を送ってくるとは思わなかったです。

 ちゃんちゃん。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


これにて第十章の終了でございます。

≪紅蓮三頭龍≫と≪八大龍王陣≫の戦いはわかりやすく言えば『炎のキングギドラVS水のシェンロン×八匹』って感じです。

でも実はどっちも数メートルくらいのミニサイズですけどね(笑


明日、ブクマ1000突破&百姉記念として「よくわかるあねおれ2」をアップしたいと思います。もちろん自己満足です!

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