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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第九章 騎士と盗賊の終わらない円舞曲!編
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第九十二姉「ツッコミ多いな。『絶対』を三回も使ってるし。わははははは。」

ブクマ400突破&感想いっぱいついたー!そしてコメディ日刊ランキング二位になりました!

皆様ありがとうございます。正直、なんでこんなことになってるのか全くわからないわけですが、姉神様のお導きだと思っておきます。

まさかこんな『あねおとアホアホファンタジー』がこんなに読んでもらえるとは思っておらず感無量でございます。

これからもムラサキお姉ちゃんとヒロくんの麗しき姉弟愛っぷりを生暖かく見守ってもらえると嬉しいです。


みんな姉好きにな~れ☆

「さきねぇ、いくよ!」

「おうとも!」


 俺とさきねぇも動き出したのだった。



「きゅうじゅうきゅうー!ひゃくー!騎士たちよ、盗賊を一掃せよ!」


 ラムサスさんの数数えが終わったようだ。

 遠くから『オォー!!』という叫び声と拍手の音が聞こえた。

 なんだかんだいって、結局みんなノリノリみたいだな。


「さて、さきねぇ。どうする?」

「決まってるじゃない。煽りにいく!」

「やっぱり・・・」


 そう、さきねぇはドロケーや鬼ごっこなんかをやると、わざと姿を見せて相手を煽らずにはいられない困ったちゃんなのだ。

 もともと隠れてじっとしているのが苦手なのと、アホみたいな足の速さと体力があること、そして本来の小悪魔ちゃんな性格がこれを可能としていた。


「とりあえず状況確認かね。」

「そうね。」


 二人で屋台の影に隠れながらひょこっと顔を出す。

『ナイト』と書かれた赤いシャツを着ている三人がキョロキョロしながらこっちに向かってる。

 気づかれてはいないが・・・


「ピッチャーびびってる!へいへいへい!」


 さきねぇが屋台の影から飛び出し騎士役を挑発する。

 まぁそうだよね。あなたはそういう人だよね。知ってた。

 さて、逃げる準備を・・・


「目標いたぞー!マルばぁさんの道具屋前ー!集合ー!!」


 ん?なんだ?

 向こうから援軍が・・・え、ちょっと待って。

 10人近くいるぞ!?

 脇道からもどんどん増えて、ってやばい!そういうことか!


「さきねぇ!逃げるぞ!あいつらの狙いは最初っからさきねぇだ!」

「なに!?どういうこと!?」


 さきねぇと二人、レッツ&ゴーでダッシュをかける。

『弟もいたぞー!捕まえろー!』という声が背後から聞こえる。


「くそっ、なるほどね!いい手だわ!さてはスレイか?ちくしょーめ!」

「なんであんな大軍なの!?さすがの私もちょっとびびる!」

「誰も捕まえていない状態、つまり、牢屋番に戦力を割いてない全力で真っ先に危険人物を排除しようって作戦だよきっと!目的はユー!」

「ミーっすか!?」


 確かにさきねぇの能力からすれば数人程度じゃ捕まらないだろう。

 後半になってそんな最高戦力が相手に残っていたら脅威以外何者でもない。

 しかもさきねぇが残り一人でも、さきねぇ一人で捕まった24人を解放することも絶対に有り得ないとはいえない。

 ならば多少時間はかかっても最初にさきねぇを捕まえようって魂胆だろう。

 やるな、スレイ!お兄ちゃんちょっと嬉しい!


「うふふふふ・・・あははははははははは!すげーたーのしー!」


 さきねぇは逃走しながらもノリノリだ。

 基本遊び大好きで、学校の帰りに急に姿が見えなくなったと思ったら小学生に混ざって缶ケリしてましたとかあるからな。

 しかも子供達と初対面なはずなのに数分で馴染んでた。

 でも思いっきり缶蹴っ飛ばした結果、缶がなくなって小学生に『大人気ねーよ!空気読め!』とか怒られてて爆笑した。


「待てぇぇぇぇぇ!」「つーかなんで追いつけないんだよ!?」「速過ぎだろなんだあの人!?」


 追いかけてきているナイトどもが驚愕の声をあげる。

 速いだろ・・・これ、足に重りつけてるんだぜ?


「作戦変更だ!B・C・Dチームは追跡続行!EとFは右!GとHは左!挟み込むぞ!」

「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」


 向こうもなかなかに統率がとれている。

 まぁさきねぇが相手じゃ一人一人が全力を尽くした上で、力を合わせないとどうにもならないからな。

 よく考えられておるわい。


「やばい、あんだけ群れてるとマップ兵器使いたい。」

「魔法禁止!死人が出るでしょ!」

「ちぇ~。じゃあ走って逃げるしかないか。」


 追いつかれないように走ってはいるが、話ができないほどの全力疾走ではない。

 これもノエルさんに鍛えてもらったおかげだ。

 とはいえ、こっちは2人でむこうは25人。油断はできない。

 なんか森の奥地よりもよっぽど緊張感あるわ。


「いつも追う立場だから、たまには追われるのもいいわね!私を捕まえてごらんなさーい!的な!」

「そんな言うほど追う立場になったことある?」

「何行ってるのよ、私いつも追ってるじゃない。」


 心外だわ!とでもいいたげなさきねぇ。


「何を追ってるの?どうせ『夢』とか『希望』とかでしょ?はいはいワロスワロス。」

「毎日弟の心を追ってます。ラブ狩人ハンターですので。」

「・・・・・・たまには追おうか?」

「マッジで!?求愛ってことよね!?いついついついつ!?プロポーズしてもらうのはアリですか!?もしくは走ってる私を追いかけて、後ろからぎゅっと抱きしめて『さきねぇ、愛してるよ』とか!!やばい鼻血でそう!!」


 ・・・ここまで喜ばれると恥ずかしいな。

 そんなほっといてるかな~俺?いつもラブってると思うんだけど。


「つーかドロケーとかやってる場合じゃなくね!?今から帰って練習しよう!」」

「・・・なんの?」

「練習っていったら後ろからぎゅっと抱きしめて『さきねぇ、愛してるよ』の練習に決まってるじゃない!一日10回×3セットを朝昼夕晩深夜夜明けで今後毎日やるわよ!」

「それ主に俺の練習じゃねーか!しかもそれ本番になったら絶対飽きてるよね!『何百回も聞いたからもうちょっとアレンジ利かせて欲しかったわ~』とか絶対言うよね!あと深夜起こしても絶対起きないだろお前!」

「ツッコミ多いな。『絶対』を三回も使ってるし。わははははは。」


 後ろから『声でけーよあいつら!余裕ありすぎだろちくしょう!』とか『いちゃいちゃしやがって・・・!』とか『ヒイロさんに向ける笑顔を一回でいいから俺に向けて欲しい!』とか聞こえる。

 ダメに決まってんだろバーカ。弟オンリーの特権じゃ。

 俺は後ろを振り返り『あっかんべー!』をする。


「「「「「あいつを殺せぇぇぇぇぇ!」」」」」

「わはははははははははは!」


 やってやったやってやった。今日はとことん楽しもう。

 その後も散々からかったり、いちゃいちゃしてみせて背後から『リア充爆発しろ』オーラを一身に浴びた。

 しかし、さすがに疲れてきたな。


「さきねぇ、そろそろ疲れてきたから休憩にしよう。曲がるよ!」

「おーけいぶらざー!」


 ひたすらまっすぐに走っていた俺達だったが、さっとわき道に入る。

 そして、速度を上げて全力ダッシュ!

 後ろからは『嘘だろ!こっから速度上がるのかよ!?』という悲鳴が聞こえた。

 残念無念、また来週!




「さて、大分走ったけどどこにいこうか。つーかここどこ?」

「ここは・・・はっ!この匂いは!?」

「ちょっとさきねぇ!勝手に走り出すなっつーの!」


 さきねぇの後をついていくと、そこには・・・!


「おっちゃーん!疲れた~のお腹へり~ので、とりあえず駆け込み三本!大至急!お代は今度!」

「あいよ!ま~たなんかやったのか嬢ちゃん!」


 ホーンラビットの串焼き屋の屋台だった。

 両手を縛られて足に重りつけてる変な女に普段と同じ態度・・・こやつ、やりおる。 


「どうもこんにちわ。いつも姉がお世話になってます。」

「おお、坊主も。おめぇはいつもかたっ苦しいな。もっとこう、ぐぁーっとできねぇのか?男らしくねぇぞ!?」

「ははは、性分なもので。」

「こらおっちゃん!うちの弟に文句つけんな!」

「いて、いて、わかったから石ぶつけるな!」


 さきねぇは器用に道端に落ちている小石を蹴り、おっちゃんの脛にガンガン当てていた。

 さすがは驚異の命中率でサッカー部から『ストラックアウトの鬼』と呼ばれ恐れられた女だ。


「ったく、わりぃな坊主。これやるから許してくれや。」


 そういうとおっちゃんは俺に水と串焼きを差し出した。

 おっちゃん・・・!ありがてぇありがてぇ!

 串焼きを食べつつ、両手が使えないさきねぇに串焼きを食べさせる。

 食べ終わると、もらった水を飲み(飲ませ)一息つく。

 ・・・ぬるいし若干濁っててまずかった。




ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。

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