第八十四姉 番外編『さきねぇと散歩』
さきねぇと散歩するだけのお話です。
それ以上でもそれ以下でもありません。
姉と一緒にダベりながら散歩する話が書きたくなっただけです(笑)
こういうのを日常系というんでしょうかね?
今日は特になにもしないフリーの日だ。
なので朝ごはんを食べた後、ノエルさん邸の掃除をしている。
冒険者になっても家事手伝いはしないとね。
本来、E級冒険者二人組だと宿代だったり装備のメンテ代だったりポーション代だったりと色々お金がかかり、二日に一回は依頼を受けないと厳しいらしい。
だが、俺達姉弟はノエルさんちに居候しているので、食費・宿代なし。
食費や宿代を払おうとしたが、ノエルさんから『家族のようなものなんだから変な心配するな!』と怒られてしまった。いつか恩返しできたらいいと思う。
装備のメンテに関しては、ミカエルくんは血を洗い流すだけだし、スマート棍棒はそもそも戦闘に使うことは少ない。
飛龍のローブはこの辺の魔物の攻撃じゃ傷一つつかないので、装備のメンテ代もほぼゼロ。
ポーションも俺の必殺回復魔法≪聖杯水≫があるので使用する事はない。(罰ゲームで黒ポを飲ますくらいだ)
つまり、働きたい時に働いて、遊びたい時に遊んで、寝たい時に寝るという、ある意味ゴージャスな生活を送っている。
収入に関しても、ブラックサンダー討伐の報酬と遺跡発掘の報奨金があるし、一度クエストを受ければさきねぇのラッキーパワーでほぼ100%レア魔物と遭遇したり、レアアイテムを発見するため、お金には困らない。
しかも、やろうと思えば森の奥地や荒野のど真ん中で俺が『回復屋』を開くだけで、普通に生活できる程度の収入は手に入る。
マジで最高の異世界生活を満喫している。
「ヒロー、散歩いこーぜー。」
朝風呂に入っていたさきねぇが戻ってきたようだ。
風呂入ってから散歩いくのかよ。あ、戻ったらまた温泉入るのか。
なにそれずるい。
「散歩?いいね。でもちょっと待って、家の掃除終わってからね。」
「そんなことより散歩いこーぜ!」
「だから待てっていってんだろーが!話聞け!」
急かす割りに掃除の手伝いはしないさきねぇ。
まぁ平常運転だ。主夫の鏡だな俺。
家事を終え、ノエルさんに声をかける。
「ノエルさん、ちょっと二人で散歩してきますね。」
「うん?ああ、いってくるといい。あまり遠くまでいかないようにな。」
「いってきまーす!」
さきねぇと二人手を繋いで散歩に出かける。
てくてくてくてく
「なんか、うちのかーちゃんより母親っぽいわよね、エルエル。」
「ね。見習ってほしいよほんと。」
「そういや、とーちゃんとかーちゃん元気にしてるかしらねー?私達のこと、探したりしてるかしら?」
「いやーむしろ気を遣って探さないんじゃないか?駆け落ちに見られてるだろうし。」
「あっはっは!ありえるっていうか、多分そうでしょうね!まぁあのラブラブっぷりだったらもう一人くらい子供作れるでしょ。」
「だね。俺達のことは良い思い出として心に留めて、幸せに過ごして欲しいもんだ。」
「その考えでいくと、友達も私達の心配してるやつらいなさそうね。」
「だろうね。テレビとかのインタビュー受けても『きっといつかやるんじゃないかと思ってました。』とかいいそう。」
「「わはははははは!」」
てくてくてくてく
「あ、虫だ。」
「虫は無視しろ!なんてね!あっはっは!!」
「せやな。」
「おい、ちょっと待ちなさいよ。もっとからみなさいよ。」
「気持ち悪いねこれ。」
「もぅ・・・異世界でも気持ち悪いものはあんまり変わらないのね~。」
てくてくてくてく
「あ、ヒロ。上見て上。空。あの雲、竜みたいじゃね?大口開けてる感じ。」
「・・・あれのこと?俺にはクロワッサンにしか見えないけど。」
「OH~!マジですかー。すごいセンスね。」
「絶対褒めてない。絶対褒めてないよね。」
「まぁ独特なセンスっていいと思うわよ?」
「ふんっだ。」
てくてくてくてく
「なんか空気がおいしいわよね。岩手並みね。」
「ね。牛が鳴いててもおかしくないレベル。」
「も~~~ってね。」
「も~~~ってね。」
「けっこうかわいいわよね、牛。」
「俺も好きよ?つぶらな瞳とかいいよね。」
「ちょっと臭いけどね。牛臭さ。」
「まぁね。でもそこも趣でしょ。」
「牛飼ってる農家さんは大変でしょうね。」
「だろうね~。真似できんわ。正直尊敬する。」
てくてくてくてく
「あ、そういえば地球じゃもう『私の屍を越えていきなさい!2』発売してるのかしら。」
「あーどうだろうね。時間の流れとかどうなってんのかね?」
「あたし、アレ予約してたんだけど、どうなんだろ。店舗に置きっぱなしになるのかしら?」
「返品なんじゃね?よくしらんけど。」
「まぁいいか。金払ってないから私は損してないし。」
「うわーでたでた。嫌な客だわ。」
「む!じゃあどうすんのよ!ヒロが今からTATUYAいって受け取ってきてくれんの!?」
「いやいやいやいや、無理だろ。つーかTATUYAいけるならもっと有意義なものとってくるから。医学書とか農学書とか。」
「夢がないわねー。」
「いや、むしろ夢ひろがりんぐだろ。」
「そんなもんかしらね。」
てくてくてくてく
「あ。」
「ん?」
「・・・・・・はぁ。くしゃみがでそうででなかった。」
「ビックリさせてあげようか!?」
「いや、なんでよ。それしゃっくり止める方法だろうが。」
「くしゃみもしゃっくりも大して変わんないわよ。」
「くしゃみは一発もの、しゃっくりは連続もの。」
「読みきりか連載か、みたいなものね!同じ漫画は漫画よ?」
「・・・・・・」
「ん?どうする?ビックリする?」
「・・・(どうしても驚かせたいのか)じゃあお願いする。」
「赤ちゃんできました。」
「・・・・・・・・・・・・・・・いや、ちょっと待って。それ、ビックリとかじゃなくて、今、心臓止まりかけたから。マジで。」
「エルエルが。」
「なんだと!?」
「ね?ビックリしたでしょ?」
「おまえ、マジでやめてそういうの。え、嘘だよね?冗談ですよね?」
「エルエルに聞いてみれば?」
「女性に『妊娠しましたか?』とか聞いたら確実にセクハラだな。死んだほうがいい。」
「それもそうね。冗談だから、100人乗ってもだいじょーぶ!」
「はぁ・・・なんでくしゃみ失敗しただけで心臓を止めかけなきゃならんのだ。」
「貴重な体験じゃない。」
「もう終了ねこの話。俺やだ。」
「はいはい。シスコンの上マザコンかよ、とは言わないであげるわ。優しいお姉ちゃんに感謝ね。」
「・・・・・・」
てくてくてくてく
「いい天気ね~。」
「・・・だね。」
「川の音も聞こえるしね。川いこうぜ川。」
「おけ。」
てくてくてくてく
「ふぁあ~。なんかぽかぽかしすぎて眠たくなってきたわ。この辺でいいか。ヒロ、膝枕。」
「え~。普通女の子が男の子にやってあげるのが典型的ラブコメじゃないですかお姉さま?」
「よそはよそ、うちはうちです。はよ。」ぽんぽん!
「はいはい。場所はここね。木によっかかれないときつい。よいしょっと。」
「へ~いへいへいへ~いへい!」
「へ~いへいへいへ~いへい!」
「へ~いへいへいへ~いへい!」
「へ~いへいへいへ~いへい!」
「へい!」
「へい!」
「へい!」
「へい!」
「「へいへいへいへいへいへいへいへい!」」
「いや、寝ろよ。」
「うん、寝る。」
「・・・・・・」
「・・・・・・zzz」
「ふぁああああぁ。俺も眠くなってきたな・・・」
「二人ともーお昼ご飯だぞー。ふむ。おかしいな。こっちのほうに反応があるんだが・・・む。こんなところで昼寝か。まぁ危険はない、か。それにしても気持ち良さそうだな・・・どれ。」
「zzz・・・・・・」
「zzz・・・・・・」
「・・・・・・zzz」
結局、三人が起きた頃にはご飯は冷めてしまっていた。
そんな異世界でのなんでもない日のこと。
眩しい日のこと。
次回から新章に、といいたいところなんですが、申し訳ありませんが少し(一ヶ月ほど?)お休みさせていただきます。
というのも、心身ともに疲れ果てている上に決算期ということで馬車馬のように働かなければいけないのです。書きたいエピソードはまだまだあるのですが、執筆速度が全くおいつかない状況なのです。
不定期で一週間に一度くらいはアップするかもしれません。
最終話の構想はすでに固まっているので、エタることだけは絶対にありません。それに関してはご心配なく。
再開をお待ちいただけたらとても嬉しく思います。
それでは。




