第四十四姉 「思い込みは大事ってことね!『うちの姉がこんなにかわいいわけがある!』みたいな!」
大変申し訳ありませんが、今回は説明回です。
残念ながらいちゃいちゃもアホ会話もほぼないです。
魔法の特訓にはいりますが、魔法に関して辻褄があわない部分があっても優しくスルーして生暖かい目で見守ってくださると助かります(笑)
魔法の詳しい理論なんて次の章からは出てこないと思うので・・・
こんな目にあいつつも、濡れた姿でケンカをする美少女二人を眺めることに心底幸せを感じる俺だった。
いやぁ、今日は死ぬにはいい日だぜ!
・・・別にMじゃないよ?
「全く、ムラサキは本当に仕方のないやつだ・・・。」
「えー、絶対エルエルのほうがしょーもないってー。」
「「それはない。」」
結局あれから30分近くはギャーギャーやっていた。
女性は二人でも姦しいとはこれいかに?
お、今うまいこと言った気がする。
「・・・はっ!なんでやねん!」
「?どうした?」
さきねぇがいきなり空に向かってツッコミを入れた。
「いや、今何か突っ込まなきゃいけない気がして・・・」
「いや、意味がわからんが。」
「いつものことです。気にしない気にしない。」
くっそ、伝わっていたか。
「さて、二人とも、大分リラックスできただろうから、そろそろ授業を始めようか。私から教えを受けられるなんてそうそうあることじゃないからな?すごいんだぞ?」
「よろしくお願いします!」「うぃーむっしゅ!」
魔法袋から椅子を三つ取り出す。
木陰の下で青空教室(魔法使いバージョン)開催だ!
「魔法を扱うに当たって、重要なものは魔法力と魔法量だ。だが、それ以上に必要なものがある。わかるか?」
「・・・精神力ですか?」「愛ね!」
「・・・『創造力』だ。」
「「創造力?」」
さきねぇと顔を見合わせる。
はじめて理解不能な異世界用語に出会ったぞ。
想像力とは違うのか?
「魔法を使うには『魔法を使う』という思いが必要なんだ。魔法をどんな形で具現化し、発動させるか、それを創造力という。これが適正を持っていたとしても魔法使いになれない理由と、属性によって魔法の覚えやすさ・使いやすさの違いが現れる理由になる。」
「「はぁ・・・」」
やばい、意味がわからない。
「そうだな、例えばグミーが目の前にいるとしよう。魔法なしで火を使って倒せといわれたら、どうする?」
「そりゃ燃やすでしょ!」「・・・もしくは火のついたたいまつで殴るとか。」
「そうだな。火では倒せたな。じゃあ土でならどうする?」
「投石で余裕!」「ふむ、じゃあ俺は・・・落とし穴、とか?」
「うん、倒せたな。じゃあ水では?」
「えっと、氷で殴る?」「・・・水没させる、くらいしか思いつきません。」
「氷は上位魔法の氷がある。水じゃないからダメだな。・・・では、風で倒せといわれたら、どうする?」
「「・・・・・・」」
風で倒す・・・
RPGの魔法なんかだと、風刃とかあるけど、実際に風のみで倒せって言われたら難しいな。
風のすごさはしってるが、それは台風などの大規模な災害だ。
その台風ですら死傷者が出る場合は、付随する事態、例えば川の氾濫とか、物が飛んできて、とかだよな。
風が直接殺すわけじゃない。
自然現象のカマイタチだって軽症らしいし、そもそもカマイタチなんて見たことがない。
あれ、無理じゃね?
「・・・わかっただろう?これが火や土が使いやすくて、風が使いにくい理由だ。風で敵にダメージを与えるという『想像』ができないだろう?つまり、攻撃魔法を『創造』できないんだ。」
「つまり、『その魔法を使って、結果どうなる』という『想像』ができてないと、魔法は発動しない=創造できないっていうことですか?」
「そういうことだ。逆に『想像』さえできれば、好きなように魔法を創造できる。火球や火炎王蛇も、結局は同じ『火』をどういう形にして『創造』するかという違いだけだ。もちろん威力や消費魔法量は全く違うがな。」
「ふ~ん。わかったような、わからないような。」
「いきなり理解されてもビックリするよ。それに、実際やってみればそんな簡単なものではないからね。人間族で早いやつなら二、三週間くらいで普通は数十週間、長いと、永遠に使えない。」
「永遠って・・・」
つまり、センスってことじゃねーか!
やめてくれよ、俺美的センスとか全くないんだからさ・・・
「私なら楽勝そうねー。」
「だろうね・・・俺は厳しいかも。」
「まぁ、実際やってみよう。説明しながら実演するから、あとで真似してやってみなさい。」
「「はーい。」」
ノエルさんが椅子から立ち上がり、少し先にある岩に目をやる。
そして目を閉じ、手を岩に向ける。
「最初は目を閉じたほうがいい。集中できるからな。そして、想像するんだ。『私の手のひらに火の玉が出来る。大きさはこぶし大くらい。』。」
すると、ボッ!と音がして、ノエルさんが言ったとおりの火の玉ができる。
「この時目を開けるが、驚かないこと。『そこに火の玉があって当然』と思わなければいけない。驚いて『まさか本当に火の玉がでるなんて!』と魔法の存在を疑ってしまったら、創造は失敗する。」
「思い込みは大事ってことね!『うちの姉がこんなにかわいいわけがある!』みたいな!」
「思い込みっていうか、事実だし?」
「いやん、もう、ヒロってば~!このシスコン千葉県代表め~!」
「集中!!!」
「「はい・・・」」
怒られた。
ノエルさんが目を開ける。火の玉は消えない。
世界最高クラスの魔法使いなんだから当然といえば当然だが。
「ちゃんと話を聞きなさい。大事なところだぞ?そして、もう一度『想像』するんだ。『この火の玉は真っ直ぐに飛んで、前方の岩にぶつかり燃え上がる。』と。最後に、魔法の名前を発音して『創造』する。火球!」
火の玉はまっすぐに飛んでいき、岩にぶつかる。
ボン!と音がするが、岩は黒くコゲているだけだ。
「今のはわざと威力を落としてある。私が全力でやったら岩どころか、このあたり数十メートルが吹っ飛ぶからな。」
「「おぉ~!」」
俺たちはパチパチと拍手を送る。
やっぱ魔法かっこいいな!
ノエルさんもドヤ顔だ。
あの人、初めてあった時、それを俺たちに向けてたのか。
そりゃ一瞬で死ぬ気配も感じ取れるわ。
「一番難しいのは、最初の『創造』だ。『何もないところから炎を出す』のが難しい。『何もないところから炎がでることが当然!』と思わなければいけないからな。」
「うわー、めっちゃ私向きじゃん。やってみていい?」
「何が起こるかわからないからダメ!今日はヒイロの訓練だ。ヒイロ、とりあえずやってみなさい。失敗して当然だから、あせらなくていいぞ。」
「わ、わかりました。ま、魔法名はどうすれば?」
「ああ、魔法名は言わなくても創造できるが、言ったほうが創造しやすいな。まずは初級魔法の水球でいいと思うぞ。さきほど私がやったことの水版だな。」
「わかりました!」
ノエルさんとさきねぇが俺から少し離れる。
よーし、やるぞー!
「ボソッ(エルエル、正直な話、どれくらいで出来るようになると思う?)」
「ボソッ(・・・少なくとも、数十週間はかかるだろうな。実は、『どれだけ魔法に慣れ親しんでいるか』で習得時間はかわる。魔法のない大陸からきたのだったら、一年かかってもおかしくないし、最悪魔法は使えないかもしれん。)」
「ボソッ(そっか。・・・ん?でも、それって「あ、あのー。」
俺は話をしているさきねぇたちに声をかける。
「!?ど、どうしたの?」
「わ、わからないところがあったか?」
「いや、あの・・・できたんですけど。」
「「は?」」
俺の手のひらには、水の塊がふよふよ浮かんでいた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
昨日今日とまた評価を入れてくださった方がいらっしゃったようで嬉しいです。
正直震えました。ありがとうございます。
緋色君も紫お姉ちゃんもノエルおばあちゃんもとても喜んでいました。
『創造力』はイメージとメイクの二つが必要(複数形)という感じでつけた造語です。本編には全く関係ありません。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




