第三十七姉 「よっ!世界一!ヴィーナスも裸足で逃げ出す美しさとかわいらしさ!人間の姿をしたブルーアイズ○ワイトドラゴン!」
ちょっと切ない展開は終わりです。
ここからはいつものアホできゃっきゃうふふなヒロくんとムラサキさんに戻ります!
姉さんが俺を抱きしめ、ひたすら謝り続ける。
違うんだ、姉さんはなんにも悪くないんだ。
悪いのは全部、何をやっても姉さんの足元にも及ばない、出来損ないの俺なんだ。
だから謝らないでくれ。
そう思っていても、涙が止まらず、何もしゃべれない。
結局、俺はそのまま10分近く泣き続けた。
やっと落ち着いてきた。
冷静になりあたりを見渡すと、ノエルさんやラムサスさん、マリーシアさんが心配そうに見つめていた。
恥ずかしいうえにかっこ悪いな・・・
「あの、すいません、ご迷惑をおかけしました・・・」
「その、ヒイロ、大丈夫か?」
「すいません、ちょっと取り乱しちゃいました。」
「そ、そうか。いや、しかし大したものだ!計測初期で魔法力Dはなかなかのものなんだぞ?」
「ほ、ほら!エルフの天才魔法使いエルエルだってこういってるわよヒロ!すごいじゃない!」
さきねぇが珍しく、積極的に俺のフォローにはいる。
「・・・ノエルさんは最初いくつだったんですか?」
「わ、わたしは・・・その・・・Bだ。」
「「・・・・・・」」
ぐすっと鼻水をすする。
「!?で、でもほら!エルエルはアレでしょ!?大陸史始まって以来の天才とかだったんでしょ!?」
「え!?いや、その・・・ま、まぁな!魔法が得意なエルフの歴代長老の中でも、私を越える才能の持ち主なんて・・・(少ししか)いなかったくらいだ!」
「ほ、ほら!だってよヒロ!」
「そ、そうだよな。エルフさんと比べても仕方ないよな。」
「そうよ!えっと、マリーシア?だっけ?あんたもヒロすごいと思うわよね!?」
急に話を振られ、ビクッとなるマリーシアさん。
「え!?ええ、魔法力Dなんてすごいですよ!一年で数人位しかいませんよ!」
「・・・一年に数人もいるんだ。」
もう一度ぐすっと鼻水をすする。
「す、すごいじゃない!あれよ、甲子園でいえば『なぜか毎年いる10年に一人の天才』みたいなもんよ!」
「・・・違うと思う。」
「そうだって!ねぇ!マリーシア?もそう思うわよね!?」
「え!?えっと、私、その『コウシエン』が何かわからないんですけど・・・」
「ボソッ(お前、空気読めよボケ。マジで。バカなの?死ぬの?ミカエルくんでてめぇの身長を十分の一にしてやろうか?ツブすぞ?私が許可するまでもうしゃべんな。)」
「・・・・(ブンブンブンブン!)」
マリーシアさんが真っ青になって首を縦に振る機械みたいになってる。
そろそろ立ち直んなきゃやばいなこりゃ。
「・・・よっし、じゃあ魔法力検査再開しますか!さきねぇがまだだしね!」
「う、うむ!そうだな!それがいい!」
「えっと、お姉ちゃん、遠慮したいなーなんて・・・」
「姉さん。」
「はい。やります。」
薄々、自分がかなりの魔法力を持ってるんじゃないかってことに気づいているようだ。
それを俺が見たらまた泣き出すと思ってるんだな。
全く、いつもはごーいんぐまいうぇいなくせに・・・かわいい人だ、ほんとに。
「そういえば、さっきのはなんでDだったんですか?メーターがかなり上までいったからてっきりAくらいはあるのかと・・・」
「ああ、メーターは実は二本あるんだよ。一本目は青、二本目は赤色に染まるんだ。」
「・・・なるほど、ノエルさんの説明を飛ばした俺の責任ですね。すいません。」
「いや、気にするな。・・・よし、ムラサキ、準備できたぞ。」
「・・・はぁ~い。」
さきねぇは困った顔をしながらハンマーを持つ。
魔物を殴りつけるときとは全く違った、へろへろな感じでスイッチにコツンと当てる。
すると。
パパパパパパパパパパパパパパパ!パパパパーン!
メーターは一瞬で一番上まで真っ赤に染まり、ファンファーレまで鳴り出した。
これは確実に・・・
俺は異世界組を見る。
ノエルさんは限界まで目を見開いている。
ラムサスさんは呆然としている。
唯一、マリーシアさんだけはあわあわと『装置の故障かしら!?』と裏で色々いじっている。
そして、さきねぇはまるで泣きそうな顔で俺を見つめている。
大丈夫、わかってたから。
「あ、あのねヒロ、これは、その「おめでとうさきねぇ!さすが俺の自慢の姉さんだ!」
姉さんにこんな顔をさせているのは俺だ。それはダメだ。
この結果に対して、負の感情が全くないといえばウソになる。
だが、嬉しいのもまた事実なのだ。
俺にとって、姉さんは太陽なのだ。
いつもすぐそばにあって眩しく輝き。
俺の人生に光と暖かさを与えてくれる。
けれど、近寄ることはできず。
触れようと空を飛ぼうとしたら、燃え尽きて墜落することだろう。
まるで、イカロスのように。
だから、俺の幸せは、姉さんが俺のことを必要としなくなるその瞬間まで、そばにいることだ。
「ヒロ・・・」
「よっ!世界一!ヴィーナスも裸足で逃げ出す美しさとかわいらしさ!人間の姿をしたブルーアイズ○ワイトドラゴン!」
「・・・ふっふっふ。はぁーはっはっはっは!我は救世主なり!」
完全復活!不死鳥のような再生力だ!
「まぁねまぁねまぁねまぁね!私だったらこの程度は余裕っていうか?むしろ相当低く見積もられてるんじゃないのっていうか?メーターに3本目があったら確実にSSSくらいは出てたわね!」
「さすが姉上!その剣はかの宮本武蔵を凌ぎ、その魔法力はあのマーリンすら恐れる!その加速力はデビルカーも真っ青で、その速度はトゲトゲ甲羅すら追随することを許さない!」
「「はっはっはっはっはっは!!!」」
さきねぇのテンションがやばいくらい高い。
そして俺もテンションがめっちゃ高くなってきた!楽しくなってきたぜ!
「みんなー!元気ー!?」
「いぇぇぇぇい!」
「今日は私のために集まってくれてありがとー!」
「いぇぇぇぇい!」
「頑張って歌うから、楽しんでいってねー!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
「では、一曲目です!勇敢なお姫様と、夢見る女の子の歌です!聞いてください!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
突然開催された『初月紫の異世界ファースト単独ゲリラライブinアルゼン』。
後に、各国の王族からライブ開催要請がくるほどの大人気となり、冒険者としてだけでなく、歌姫としても大陸史に名を残すことになるのだが、それはまた、別の話。
そして、幸運にも第一回ライブに参加できた者たちは、約一名(実の弟)を除き、何が起こったのか理解できず、呆然としていた。
そりゃそうだ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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