第二十七姉 「!?そ、それは、あまりにも、その、酷い仕打ちといいますか、その、厳しくないですか?」
お気に入り登録をしてくださっている方が20人になりました。
これからもブラコン姉の良さを広めるために頑張っていきたいと思います。
『第三章 冒険者ギルドにいってみよう編』の始まりです。
正直、この章で冒険者になれるのかとても不安です。
地の文を増やせばガンガン進むんですけど、それで書くとつまらないんですよね。いちゃいちゃできないし。
ですので、このままスロー&マイペースでいきたいと思います。
「「いってきまーす!」」
「ああ、いってらっしゃい。あ、魔物に気をつけるんだぞー!帰りは遅くならないようになー!荷物を忘れるなよー!あ、あと、お小遣いは使いすぎるなよー!」
どこの家族の子供さんの登校風景だって?
ノエルさんちの初月姉弟だよ!
「「ど~れみっふぁ~そ~らっしど~♪」」
姉も俺も上機嫌で歌っている。
もちろん手は繋いでいる。
気分は完全にはじめてのおつかいだ。
「いやーなんかちょっとドキドキするわね!」
「そうだな。初めて二人っきりで森歩くもんな。」
「もー、お姉ちゃんそういう意味でいったんじゃないのにー♪ヒロってば大胆!」
「え、二人だけで森歩くの初めてだから、魔物に注意しないとって意味じゃ・・・?」
「ちっ、わかってるわよ。ちょっと空気読んでもらえます?」
「え?・・・はい、すいません・・・?」
なんで今舌打ちされたの?おかしくない?
初めて街にいったあの日から一週間ほどが経過した。
その間、異世界の暮らしに慣れるため、毎日三人で街まで出かけ、色々なものを見たり聞いたりした。
その度に新たな発見があり、胸を躍らせる日々が続いた。
そんなある日のこと。
事の発端は今日の朝食後のまったりタイムの時。
ノエルさんの一言から全てが始まった。
「二人とも、ちょっと頼まれてくれないか?アルゴスのところにいってこれを届けてほしいんだが。」
「「・・・マジで!?」」
朝からテンションMAXになるさきねぇと俺。
届けてほしいってことは・・・
「ああ、この辺りには二人に勝てる魔物もいないしな。街にも慣れただろうし、そろそろ二人だけで街にいっても大丈夫だろうと思ってな。」
ノエルさんから外出許可が下りたぞ!
ねんがんの がいしゅつきょかが おりたぞ !
「いくいくいくいく!いやん、お姉ちゃんいっちゃうぞー!」
「・・・俺も当然いきます。喜んで。」
別にエロくない別にエロくない別にエロくない別にエロくない・・・
姉を見ると、ニヤニヤしながらこっちを見ている。
「あら~?なにかしら~?お姉ちゃん変なこといったかしら~?何を想像したのかしら~?」
「・・・別に。ただ、他の男の前で言ったらレッドカードだなって思っただけ。」
姉は『マジか!?あぶねーイエローくらいだと思ってたわー気をつけようっと』といった顔をしている。
さきねぇをエロい目で見られるのはすげーむかつくからな。
早く強くなって、姉に手を出そうとするやつらを全員フルボッコにしてやりたいぜ。
『姉が欲しくば、俺を倒してからにするがいい!』というやつだ。
まぁ相手が強くて俺を倒したとしても、俺を攻撃した男を姉が許すとは思えないが。
「さて、そろそろいいか?二人きりで外出するということで用意したものがある。」
「何かしら?ゴム的なものかしら?」
「ねぇ、なんか今日シモネタひどくない?とりあえずイエローカードね。2枚で丸一日口利かないから。」
「!?そ、それは、あまりにも、その、酷い仕打ちといいますか、その、厳しくないですか?」
「はぁ・・・お前たちが仲がいいのはわかったから、話を聞いてくれ。」
「「はぁ~い。」」
うちの母親は放任主義だったからアレだけど、なんかノエルさんのほうがよっぽど母親っぽいな。
「こほん。では、お前たちに渡すものがある。それは・・・武器と防具だ!」
「「!!!!!!!!」」
BUKI&BOUGU!
ついに俺たち姉弟もファンタジー世界の住人になる時がきたか・・・
「どんな武器用意してくれたのかしら!エルエルレベルだったら『エクスカリバー』とか持っててもおかしくないわよね!」
「最初っからそんなもん渡されても困るだろ。でもその辺の王様よりは良いものもらえるんじゃない?俺は『はがねのつるぎ』と見たね。ゲームバランス的に。」
「相変わらず発想が地味ねー?あ、もちろん良い意味での地味よ?」
良い意味での地味ってなんやねん。
「いくつか用意してあるから好きなのを選ぶといい・・・まずは、これだ!」
「「おおぉ!」」
そこにあったのは、全身から『ハンマー!』というオーラを放つ金属製のハンマーだった。
図工で使うトンカチをでかく、長くしたような感じ。
「スレッジハンマーSPだ。重いが、威力は抜群だ。高い身体能力を持つ二人なら使えるだろう。持ってみなさい。」
「じゃあ私から!んっと・・・良い感じね。そこまで重くないし。はいヒロ。」
「よっとぅおっとぉ!?びっくりした!さきねぇが普通に持ってるから見掛け倒しかと思ったら、普通に重いじゃん!」
さきねぇに返すと、ブォォン!ブォォン!とすごい風切り音を出して素振りを始める。
お姉さまぱねぇっす。
持てないことはないが、コレを持って歩くのは苦だな。俺はパス。チェンジで。
「では次は、これだ!」
「「ぉおおぉぉ?」」
そこにあったのは木槌だった。でかい。餅つきで使う杵みたいな感じ。
国民的RPG5に出てくる愛くるしい茶色なあいつが持ってるやつだ。
とりあえず持ってみる。
「・・・なんかしっくりこねぇな。」
「私はパス。さっきのハンマーのほうがまだいいわ。」
「そうか。ではこれはどうだ!」
「「・・・・・・・」」
そこにあったのは、バットだった。野球で使うアレそのまんま。
先のほうに鉄でカバーがしてある。攻撃力アップのためだろうか。
「えっと、これは?」
「これは『スマート棍棒』だ。しかも、これは大森林の樹木を削りだし、さらにミスリル銀を溶かしたカバーで覆っている特別製で、軽いし使いやすいし持ちやすい。おすすめの一品だ!」
どうだ!といわんばかりに胸を張るノエルさん。
とりあえず持ってみる。
「ふむ・・・あー私無理。軽すぎ。木の枝振ってるみたい。ほい。」
「おう。・・・あ、これいいな。マジで使いやすい。」
スイングすると、ハンマーの重低音とは違い、ビュン!ビュン!と高音を発する。
「エルエル、そろそろ本命といきましょうよ。焦らさないでくだしあ!」
「え?終わりだが?」
「「え?」」
え?今なんて言った?
「・・・まず、ハンマーですよね。スレッジハンマーSP?」
「うん、そうだな。」
「次、大木槌よね?」
「そうだな、大木槌だな。」
「で、スマート棍棒?ですよね。」
「ああ。」
「で、次は?」
「ないよ?」
「なんで!?!?」「おかしいでしょ!?!?」
初月姉弟双方から抗議の声があがる。
「聖剣持ってきてよ聖剣!とりあえず私にふさわしい聖属性の武器を!」「はがねのつるぎは!?はがねのつるぎはないんですか!?」
「つーかなんで打撃武器だけなの!?おかしくない!?」「剣とか槍とか斧とか、ほら、あるじゃないですか!」
「刃物なんか振り回したら危ないだろ!!!!!!!!!!!!」
えーうそーん。
街の門番にでかい炎の蛇をけしかけたS級冒険者が何言ってんの?
「これだったら、触っても怪我しない!振り回さない限り危険はない!このへんの魔物には十分!」
「えーダサいー!やだー!」
「いつかは剣とか使うんですし、だったら今でも」
「だめ!あぶないだろ!わがままいうんじゃありません!それがいやなら外出はだめ!!!!!!」
その後もノエルさんを説得したが、無理だった。
結局俺たちのファースト武器はでかいトンカチとバットになった。
どうしてこうなった・・・
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ヒロくんのイエローカードは一枚は頻繁に出ますが、二枚目が出ることは永遠にありません。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




