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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第二十五章 熱戦、烈戦、超激戦!?嵐を呼ぶ美少女コンテスト!編
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第百八十四姉「なんか初めてヒイロくんにイラッとしたわ。」

新章で全五話です。そして完結まであと五日!

よろしくお願いします。

「ででででっでっでーん、ででででっでっでーん、でででででででででででーででででっでっでーん♪」


 なぜかシューベルト作『魔王』を口ずさみつつエアピアノを弾きながら街を歩くさきねぇと俺ともう一人。

 どう考えても酔っ払いかイケナイ薬を決めちゃってる人なのだが、住民たちはいつものことなので特に気にしている様子もない。

 この場で気にしているのは一人だけ。


「・・・あの、お師匠様。姉君は一体何をされてるんですか?」

「ん? ああ、ピアノをね。弾いてるんだよ。弾き語りってやつさ。」

「・・・・・・はぁ。」


 全く理解できていないクリス。

 これを理解するには日常的に接してないとちょっと無理があるから気にしないでいいぞ。

 そのまま三人で冒険者ギルドに入る。


「弟よ、弟よ!魔王の叫びが聞こえないの?」

「落ち着くんだ我が姉よ。あれはマリーシアさんが受付で白目になりながら居眠りをしているいびきだよ?」

「弟よ、弟よ!あれが見えないの?暗がりにいる魔王の娘が!」

「我が姉よ、確かに見えるよ。あれは受付で白目になりながら居眠りをしているマリーシアさんだよ?」


 今日もうちのお姉さまは絶好調です。




「カァツ!」

「ねてませんずっとおきてましたかったぶきやぼうぐはそうびしないといみがありませんよ!」


 ガルダじぃの叫びに慌てて起きるマリーシアさん。

 もうセリフが完全にモブじゃねぇか・・・


「全く。減棒するぞい。」

「そ、それだけはぁー!それだけはご勘弁をぉぉぉぉぉ!」

「やったれやったれ!」

「ほ。嬢ちゃんにヒイロに・・・クリスだったかの。よいところに来た。」

「こんにちわガルダさん。よいところというのは?」

「まぁついてくればわかるわい。」


 そう言って歩き出すガルダじいについていく三人+受付嬢。


「マリーシアさん、仕事は?」

「変わってもらいました!」

「・・・そう。」


 まぁいいけど。


 会議室につくと、ラムサスさんをはじめ職員の方があーでもないこーでもない言い合っていた。


「救世主を連れてきたぞい。」

「救世主?お、ヒイロくん!いいところに来てくれた!」


 ラムサスさんが笑顔で寄ってくる。

 ホモ疑惑がなければ良い人なんだけど・・・


「私は?」

「お前はいらん。」

「は?うるせーよハゲ。」

「は?ハゲてねーし。死ね。」

「ああ、ハゲじゃなかったわね。カツラだったわね。ぷ。」

「カツラでもねーし!地毛だし!」


 なんでこの人たちいっつも同じような悪口言い合ってんだろう。

 飽きないんだろうか。


「で、どうしたんですか?」

「実は前にやったナイト&シーフみたいな企画はやらないのかって問い合わせがけっこうきててね。色々考えてはいるんだが、どうしても手詰まりでね。ヒイロくんの意見を聞きたいんだ。」

「ギルド主催のイベントですか。う~ん・・・運動会とか?」

「運動会?」


 一斉に『何それ?』って顔をする異世界の住人たち。

 運動会ないんか。異文化コミュニケーションですね。


「ええ、アルゼンの冒険者で誰が一番走るのが速いかとかを競ったり、冒険者一丸となって何かをやったり。」

「良さそうだけど・・・それ、けっこう人使うよね?」

「まぁ多い方が盛り上がりますね。」

「冒険者も生活があるからあまり大勢は使えないんだよね・・・」

「なら少人数でできるイベントですか。うーん・・・」

「それと、できればあまり費用がかからないものが望ましいかな、と。」


 注文多いな。

 ギルド主宰ってことは冒険者ならでは、もしくはアルゼンの冒険者だからこそできるイベントか。

 それでいて低予算、場所も人もあまりリソースが割けないとなると・・・無理じゃね?

 チラッと横をみると流れるような美しい黒髪を靡かせ勝ち誇っているさきねぇと、ぐぬぬ顔のマリーシアさん。

 相変わらずうちのお姉さまの黒髪はキューティクルすなぁ。

 かわゆすかわゆす。


 その時、俺に天啓が舞い降りた。


「・・・ミスコン。」

「ミスコン?」

「そうだ、ミスコンやりましょうよ!アルゼン冒険者で一番の美少女を決めるんですよ!広場に舞台を用意すればいいだけだから予算も大してかからないし、人件費も節約できるのでは!?」

「ふむ、なるほどのう。男連中はまず食い付くだろうの!」

「幸いにして、アルゼンには大陸一番の美少女と大陸二番の美少幼女がいます!これを活かさない手はないですよ!」

「・・・ちなみに一応聞くけど、その大陸一番の美少女って誰なのかな?」

「俺のさきねぇに決まってるじゃないですか!ドヤァ!」

「ドヤァ!」


 二人仲良くドヤ顔する俺たち姉弟。


「なんか今初めてヒイロくんにイラッとしたわ。」

「え、私はけっこうカツラ支部長にイラッとしてるけど。」

「お前にはしょっちゅうだよ。」


 にらみ合う姉と支部長。

 よく考えると、大企業の支店長にアルバイトがケンカ売ってるようなもんだよな。

 俺のお姉さまは怖いもの知らずやでぇ。


「でもこれ以上ない案だと思うけど?参加者もいるし。」

「ふむ・・・お主以外に誰か参加者の心当たりはあるのか?」

「まず私でしょ、エルエルでしょ、ちゅーべえでしょ? あとは・・・クリボーでしょ?」

「「「・・・え?」」」


 俺とマリーシアさんとクリスの声がハモる。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!なぜそこにボクの名が挙がるんだ!」

「いいじゃん。盛り上がるって!」「私は!?」

「盛り上がる盛り上がらないの話じゃない!ボクは男だぞ!」

「でも最近はけっこう需要あるっぽいわよそういうの。」

「知るか!」「なんで私の名前は挙がらなかったんですか!?」


 ゲキおこなクリスだが、周りは全員『・・・アリだな!』みたいな顔しとる。

 そして誰もがマリーシアさんをスルーする。


「・・・お前は誰だ?」

「む?」

「お前は誰だと問うている、クリス・ウル・クリフレッド!」

「!?」


 さきねぇがなんかかっこいいこと言い出したぞ。


「天下に名高いクリフレッド家の人間ともあろう者が、やる前から恐れをなして逃げるのか!」

「な、なんだと!」

「由緒正しいクリフレッド家に名を連ねる者ならば、どんなものでも一番を目指すべし!違うか!」

「そ、それは・・・」


 え、そこ考えちゃうの。


「歴代のクリフレッド家の人間でミスコン一位になった者はいないだろう。ならば、お前がそれを成すべきではないのか!そしてクリフレッド家の歴史に華を添えるべきではないのか!」

「・・・・・・」


 いや、美少年がミスコン出て優勝しちゃったら、華を添えるっていうかむしろ汚点を残すんじゃないのか。


「勝負よ、クリボー!」

「・・・・・・・・・わかった、受けてたとう!」


 受けてたっちゃったー。


「お師匠様、見ていてください!ボクはクリフレッド家の名にかけて必ずや優勝してみせます!」

「・・・・・・そう。頑張ってね。」

「はい!」


 いい笑顔のクリス。

 まぁ本人がいいならいいか。面白そうだし。


「これで三人確保、と。あとはカチュアさんか・・・出てくれるかな。」

「ぼるきちがなんとかするでしょ。」

「どうかな~。」


 シスコンという人種は難しいものでして、自分の姉or妹がいかに素晴らしいかを語るのが大好きな反面、自分の姉or妹が周りからチヤホヤされるのがムカツクという二律背反。


「あとはギルドのほうで女性冒険者に声をかけておくよ。いやーしかしヒイロくんがいると事務仕事も捗るしイベント企画なんかもサクサク進むし、なんとも頼もしいもんだ!」

「それは私の弟だからね!当然でしょ!」


 俺、なぜかギルドの書類整理だったり経理の手伝いだったり臨時の受付やったりしてます。

 だってギルド職員が数人がかりで何時間もかかる仕事量を俺一人でも余裕でさばけるんだもん。

 まぁこの世界基準で考えれば、俺とさきねぇは王侯貴族以上の教育を受けてきたことになるからね。

 日本のすごさを改めて認識しました。

 それでもこの前極秘内部資料を渡された時はキョドったけど。

 俺、職員じゃないですけど?


「とりあえず細かい調整とか詳しい内容とかはこっちで頑張るから、日程とか決まったら連絡するよ。」

「御願いします。じゃあ今日はこの辺で。」

「ムラサキ嬢も助かったぞい。」

「この程度、私たちにかかれば余裕のよっちゃんいかよ!」


 会議室を出る俺たち三人。


「今日はどんな依頼受けようかしらね?」

「ボクはお師匠様が受けるものならなんでも大丈夫です!」

「せっかく三人いるし、普段いかないようなことでもいこうか。」


 今日の予定を話しながらギルドカウンターへ向かうのだった。

 ちなみに、マリーシアさんは黙っていたわけではなく、会議中ずっと『私は!?私は参加しちゃダメなの!?ねぇ!?』を繰り返していたが、誰も相手にしなかっただけです。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


果たして誰が優勝するのか。そして、マリさんは出場できるのか!?

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