第百七十九姉「ままままま待ってないです!」
「どうしました?」
「ななななななんでもないです・・・!(私には婚約者が!あぁ、でも!ドキドキドキドキ!)」
いいこと言った気がするんだが、なぜ寒気がするんだろう?
「なんか顔赤いですけど、大丈夫ですか?」
「だだだだだ大丈夫です!ききききき気を使ってくださってありがとうございます!(優しい!優しい!)」
今度は挙動不審になったぞ。
なんなんだよマジでこえーよ。
「もしかして暑いですか?」
「あああああ暑いといえば暑いです!」
「ふむ・・・(熱中症で倒れられても困るな。さきねぇとの待ち合わせの時間に間に合わなくなったら大変だし。)じゃあ、ちょっとそこのカフェで休憩しましょうか?ギルドは逃げないですし。」
「!?(カフェ!?そんなオシャレなところに私みたいな根暗女を誘うということは・・・これは噂に聞くデートというものでは!?都市伝説かと思ってたけど、本当だったのね!)」
「急ぐのであれば無理にと「いいいいい行きます!」あ、そうですか。」
手ごろなカフェに入る。
カラン♪
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「二名で。」
「ではこちらへ。」
店員さんに小さなテーブル席へ案内される。
「ごゆっくりどうぞ。」
「・・・さて、と。何飲みます?」
「え?(カフェなんて人生で一回も入ったことないから何があるかわからない!どうしよう!)ええっとぉ・・・お、おすすめで・・・」
「ふむ。じゃあ甘いもののほうがいいですかね。ミルクカフィでいいですか?」
「そ、それでいいです・・・」
「すいませーん!ミルクカフィ二つー!」
「承りました。」
さて、と。
「「・・・・・・」」
「(しかし、この格好・・・もしかしてメガネを取ったら美人だったりして。よくあるよくあるw)」
「(お、男の人に誘われて二人っきりでおしゃれなカフェ・・・!帰ったらみんなに自慢しちゃおう!あとナンパされたことにしておこう!)」
「お待たせいたしました。」
「ままままま待ってないです!」
店員さんがカフィを持ってきてくれる。
しかしこの子、どっからきたんだろう。
生まれて初めてド○ールに入った田舎の中学生みたいな感じだけど。
「じゃあ、いただきます。」
「?」
「あ、気にせずに召し上がってください。」
「あ、はい・・・」
不思議そうな顔で見られる。
ああ、そういやこの大陸には『いただきます』の文化はなかったんだった。
定食屋で食べる時に毎回『いただきます』『ごちそうさまでした』をやってたらいつのまにか冒険者仲間を中心に広まっていって、今では定食屋の常連客の大半は『いただきます』『ごちそうさまでした』をするようになってたからな。
「うん、甘くておいしい。濃厚なミルクがいい味出してますね。」
「・・・男性って、甘いものが苦手だと思ってました・・・」
「あーまぁ人によるんじゃないですか。私は甘いもの好きですよ?」
「そ、そうなんですか・・・(甘いものが好きな男性もいる!初めて知った!要チェックやー!)」
うん、美味しい。
この子の顔色も赤から回復してきたし、カフェを選んで正解だったな。
それからアルゼンについて話をすることしばし。(婚約者や復讐相手についてはあえて話題に出さなかった。巻き込まれても嫌だし。)
「さて、と。そろそろいきますか。」
「あ、お代を・・・」
「私が出しますよ。年上ですし、これでも冒険者としてそこそこ売れてるもんで。」
「あぅ・・・(奢り!年上の男性の奢り!優しい!嬉しい!やばい、今日は人生初が多すぎる!に、日記!帰ったらすぐ日記に書かないと!)」
俺がニコッと笑うと、俯く女の子。
あれ、キモキャラだと思われたか?
やっぱ慣れないことはするもんじゃないな。
落ち着いたところで再度ギルドを目指す。
すると。
「あら、ヒイロちゃんじゃない!」
「あ、おばちゃん。どうもです。」
大食い大会時にフランクフルトを提供してくれたおばちゃんから声をかけられる。
「この前はありがとね!今年はアルゼンのフランクフルト売上一位を狙っちゃうわよー!」
「無理しないようにね。」
「ありがと!・・・あら?」
おばちゃんが女の子を見つけると、ニヤッとした顔をする。
「すみにおけないねぇ。ほら、これあげるから食べちゃって!じゃあ邪魔物は退散しますかねぇ!おほほほほ!あ、いらっしゃいませー!」
適当なことを言いながらフランクフルトを二つくれるおばちゃん。
まぁこのおばちゃんは俺が姉命なのを知ってるから冗談混じりだ。
「あ、これどうぞ。」
「い、いいんですか?」
「ええ、もらいものですし。」
「あああありがとうございます!・・・あ、美味しい。」
「でしょ?」
フランクフルトを食べながらギルドを目指す。
「おぉ、ヒイロ様じゃ!」「おお、おお、ほんにヒイロ様じゃ!」「ありがたやありがたや~」
「ひぃ!?」
突然ご老人たちに囲まれキョドる女の子。
「おじいちゃん、腰はあれから平気?」
「ヒイロ様のおかげでこの通りですわい!」
「おばあちゃんはお孫さん元気かい?」
「ええ、ええ。ヒイロ様のおかげで痕も残らず元気に走り回っとります。」
「そりゃよかった。元気が一番だからね。」
「ほんにほんに。」
そのまま談笑することしばし。
ご老人たちに別れを告げる。
「すいません、お待たせしました。
「えっと、さっきのおじいちゃんたちは・・・?」
「腰を痛めたーとか孫が転んで怪我をーって人たちを回復魔法で治してたらいつのまにかあんな感じになっちゃったんですよ。さすがに様付けは恥ずかしいからやめてほしいけど。」
「・・・もしかして、無料でですか?」
「ん?俺が勝手に治したんだからそりょ無料でしょ。お金とったら押し売りじゃない。」
なんかびっくりしてるな。
この世界の魔法使いはどんだけがめついんだ。
「・・・(これが絵本に書いてあった無償の愛!実在した!ここに無償の愛は実在した!しかもよく見るとすごいかっこいい気がしてきた!こんな素敵な人が私のことを好きなんて!)」
ゾクッ。
「!?」
「どうしました・・・?」
「気のせいか。なんでもありません。」
今なんか背筋に冷たいものが走ったから、てっきり金髪な変態とか肉食受付嬢にでも狙われたのかと思ったが・・・
こりゃさっさとギルドにいってこの子を引き渡した方がいいな。
「あっと、やっとついた。ここがギルドです。」
「わざわざありがとうございました。私のようなイモムシみたいな女にこんなに親切にしてくださって、なんてお礼を言えばよいか・・・」
「いやいや、これもアルゼン魂ですよ。」
「はぁ・・・?」
よくわかってない女の子。
まぁそうだよね、俺もよくわかってないから。
とりあえずギルド内に入る。
お、暇そうな受付嬢B発見。
「マリーシアさーん!ちょっといいですかー!」
「あー?・・・あ、ヒイロさん!」
最初はめんどくせーみたいな顔をしていたが、俺だとわかると笑顔で駆け足だ。
ほんとダメだなこの人。
「あれ、お一人ですか?ムラサキさんは?」
「なんか女性冒険者の会とかいうのに参加してます。」
「あーアレねー。確かにムラサキさんがいれば盛り上がるかも。・・・ハッ!?ということは、今は正真正銘ヒイロさんお一人ということに!?よかったら今からデーt「えっと、こちらがマリーシアさんといって、ここのギルドの職員さんです。詳しい話はこの女性から聞いてください。」
なにか騒いでるマリーシアさんをスルーしてきょろきょろしている女の子にマリーシアさんを紹介する。
「よろしくお願いします・・・」
「よ、よろしくお願いします(暗っ!)。えっと、どんな御用でしょうか?」
「ある人物の居場所を突き止めて、身辺調査をお願いしたいんです・・・」
浮気相手の調査を探偵に依頼する奥さんみたいだな。
怖いのでさっさと退散するか。誰か知らんが、刺されないように気をつけてくれ。アデュー!
「居場所、ですか。そ、その人物の名前とかってわかります?」
「名前はわからないんですが、彼が言うには棍棒を武器に扱う水魔法使いで、お姉さんがとても好きな人物らしいです・・・」
・・・え?
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
少女の探している人物は一体誰なのか・・・実は、今回のお話の中で出てきています!読み返して探してみましょう!




