第百六十八姉「でもオークとオークキングだったら、オークキングのほうが揚げる時カラッと揚がりそうじゃない?」
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「ありがとうございました~!またのお越しをお待ちしてま~す!」
最期に聞こえたのは、ウェイトレスさんの楽しそうな声だった。
「・・・ハッ!」
「グハッ!げほっ、げほっ・・・な、何が起きた!?敵襲か!?」
辺りを見渡すと見慣れたギルドの中だった。
目の前にはさきねぇの顔が。
「大丈夫ヒロ?」
「お、俺は一体?」
「覚えてない?熱中症で倒れたのよ?」
そ、そうだったのか。
今日は曇りだし、なぜかお腹らへんがコークスクリューを喰らったかのようにズキズキするがきっと気のせいだろう。
「ここまで運んでくれたんだね。ありがとうさきねぇ。」
「気にしないで。たった二人の姉弟でしょ?」
「さきねぇ・・・」
「ヒロ・・・」
「・・・・・・あのー、茶番だったら外でやってもらえませんかねぇ?」
振り向くとマリーシアさんが立っていた。
顔には『こいつらマジうぜぇ』と書いてある。どんまい!
「あ、マリすけちょうどいいところに。」
「この辺にオークっています?」
「オークですか?ここいらだとアルゼン西の荒野を抜けたところにあるノクターンの森くらいですかねぇ?」
「オークでノクターンとかエロいわね。」
「知らねーよ。」
転生豚なんていたらさきねぇの視界に入る前にぶっ殺してやる。
「でも、そんなにいっぱいいるわけじゃないので会えるかどうかは運ですねぇ。」
「あ、そこは絶対大丈夫なんで平気です。」
さきねぇがいるからね。あの姉、多分LUCK値カンストで人類最高値だからね。
「よーし、生息地もわかったことだし早速突撃よ!」
「おー!」
「ま、待ってください!お二人とも、オークのお肉は食べたことあっても実際に生きてるオークに会ったことないでしょ?どんなのかわかります?」
俺とさきねぇは顔を見合わせる。
オーク・・・オーク・・・
ほわんほわんほわんほわん(←空想開始)
そこには、女騎士が豚顔の男に襲い掛かられている姿が!
ほわんほわんほわんほわん(←空想終了)
「「くっ、殺せ!」」
「?」
『なんで?』って顔してるマリーシアさん。
様式美ってやつです。
「まぁ結局は二足歩行するブタでしょ?常識でしょ冒険者的に考えて!」
「あ、一応知ってたんですね。E級魔物ではありますけど、ゴブリンなんかより強いですから気を付けてくださいね。」
「ありがとうございます。じゃあいってきます!」
「ぶたにくーへい!へい!ぶたにくーくえーへい!へい!へい!」
「お裾分け待ってまーす!」
マリーシアさんの声援を背にオーク狩りへと出発したのだった。
「またのご利用お待ちしてまーす!」
「ありがとうございました。帰り道も気をつけてくださいね。」
「わっはっはっは!こちとら乗合馬車始めてウン十年のベテランでさぁ!心配ご無用!・・・でも、ありがたいねぇその言葉。他の冒険者もあんたくらい謙虚だったら嬉しいんだがねぇ、っと無駄口が過ぎた。じゃああっしらはこれで!」
「ばいば~い。」
ノクターンの森までそこそこ距離もあるため、送迎馬車を使って森の入り口まで運んでもらった。
まぁ正直歩いても数時間でつくんだけど、ノクターンの森に到着するにはアルゼン荒野を突っ切る必要があり、さきねぇが荒野の砂埃で汚れることを嫌がった結果である。
『チームが大所帯なので』とか『体力の消耗を避けるため』ではなく、『汚れるから嫌』で送迎馬車を使う冒険者なんてアルゼンクラスではまずいないだろうな。
セレブ!
「さて、では出発しますかね。」
「目標は最低でもオークキングレベルでいきましょう。サクッとでてきてくれると助かるわね。」
「最低で王級ってハードル高すぎでしょ。オークの王様がサクッと出てきたら怖いよ。どんだけ庶民派なんだよ。」
「でもオークとオークキングだったら、オークキングのほうが揚げる時カラッと揚がりそうじゃない?」
「あ、とんかつ確定なんだ。でも豚丼とかもよくない?」
食べる予定のオーク料理について熱い議論を交わす俺たち姉弟。
まだオークに会ってすらいないけどね。
これぞ『取らぬ豚の肉算用』!なんてなー。
「・・・お姉ちゃん、それ、あんまり上手くないと思う。」
「俺声出してないよ!?なんでわかった!?」
「お姉ちゃんをナメんなよ☆」
なんかもう俺とさきねぇの間に見えない神経が存在して繋がってる可能性すら出てきたぜ。
さすが俺のお姉さまや。
それから森の中を歩き出すも、なかなか魔物が出てこない。
さきねぇも暇そうだ。
「ちゃららーん!大陸名作劇場!『スーパー三匹の子豚大戦EX』!」
またなんか言い出した。
「あるところに三匹の子豚が!長男は藁葺き屋根の小屋を建て次男は木で一軒家を建て三男は親の金で石の要塞を作った!」
格差ありすぎ。
「そこに現れた地上最強の魔獣、狼!子豚神拳の伝承者である長男豚と死闘を繰り広げるが、ついに力尽き倒れかける長男豚!しかし!『待たせたな豚一兄さん!』『お、お前は豚二!?』なんとそこには子豚神拳の伝承者争いで競った次男、豚二が!兄のピンチに木のマイホームを放り出し駆けつけたのだ!」
まさかのバトルものなのかよ。しかも昭和60年代のジャンプレベルで熱い展開になったな。
「二匹の子豚の兄弟パワーによりなんとか狼を撃退するも突然の豪雨により崩れるガケ!落ちる豚二!『兄さん、俺に構わず豚三のところにいけぇ!後で必ず追いつく!』!その言葉を信じ、ただひたすらに駆ける豚一!」
シリアス展開ですね。つーかそもそも崖の近くに藁葺き屋根の小屋なんか建てるな豚一。
「どうにか豚三の要塞にたどり着いた豚一だったが、そこには多くの子豚兵が!『豚一にぃは何もしないでいいよ。狼程度、僕の軍勢だけでひねりつぶせるさ!』しかし次の日、子豚将軍が殺害されているのが発覚!『まさか、この子豚たちの中に狼が?』疑心暗鬼に落ちいる子豚たち!果たして、誰が狼なのか?」
唐突な推理ジャンル変更。しかもそれ狼やない。人狼や。
「完璧だと思っていた要塞の警備に唯一空いていた穴、それは空!狼はUFOに乗って空から侵入していたのだ!要塞の地下へと逃げる豚一と豚三!しかし、そこは迷宮と化しており、ダンジョンマスターになった豚二が二匹に襲い掛かる!『兄さんを倒して俺が子豚神拳伝承者にふさわしいことを証明してやる!』!」
超展開すぎて逆にワクワクしてきた!
「その時、突然あのペンギンが!」
「どのペンギン!?」
ガサッ
「「!?」」
どこからともなく現れたペンギンに思わず突っ込んだ時、草むらがガサる音が。
瞬時に臨戦態勢に移る。
「「コケー!」」
飛び出してきたのは、人間の子供くらいでかいニワトリたちだった。
こいつは確か・・・
「あー惜しい、一字違いだわー。オークじゃなくてホークが出てきちゃった。なんちゃって(笑)」
「いや、オオニワニワトリをホーク扱いはさすがに誇大広告で逮捕でしょ。」
オオニワニワトリは必ず二羽で行動することで有名な、(大きいことを除けば)ニワトリそっくりの魔物である。
「・・・乗りたくね?」
「えー乗れるー?大きいとはいえニワトリだよー?」
「鳴かぬなら、鳴かせてみせよう、ホトトギス。乗れぬなら、乗ってしまおう、オオニワニワトリ!」
「がんばれお姉ちゃん。」
やる気満々なさきねぇの瞳を見て止めても無駄だと悟った俺は、早めに終わることを祈って応援に回る。
「オラー!背中に乗せろニワトリどもー!」
「「コ、コケー!?」」
オオニワニワトリズも驚いている。
まさかいきなり背中に乗ろうとしてくるとは思わなかったんだろうなぁ・・・
「いたいいたいいたいいたい!つつくなニワトリの分際で!くそぅ・・・食らえ、ムラサキダブルラリアーット!」
「「コケー!?」」
こうして『美少女VS巨大ニワトリ二羽』という、伝説に残る変則プロレスが開催されたのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
スーパー三匹の子豚大戦EXは五分くらいで適当に考えたのに、書き始めたらノリノリで原稿用紙四枚分くらい書いてました。
でも頭おかしいと思われてもアレなので短くしました。




