第百五十七姉「言ってません!投げないで!タッコンヌ投げないで!」
感想いただきました。ありがとうございます。
まりさんは居酒屋のおつまみ料理は得意です!それ以外は微妙です!
お仲間発見たま○っち!みたいな顔をしていたマリーシアさんが信じられないものを見る目でさきねぇを見る。
どんな顔をしていたのかはご想像にお任せします。
「これなんすかムラサキさん!こんな美味い料理久しぶりに「久しぶり?」初めて食べましたよ!」
「そうでしょうそうでしょう!わっはっはっはっは!」
「まさか、お師匠様の姉君がこんなに美味しい料理を作れるとは。人は見かけによらないものですね。普段は明らかに頭がおかしい様子なのに。」
「クリボー、私にケンカ売ってる?」
「でもほんとに美味しいっすよ!このタッコンヌの食感もすごい良い感じで!」
「いや、決め手はこのソースだろう。これだけの味が出せるなら王都に店を構えても十分やっていける。」
「まぁまぁまぁま当然だけどね!この美少女パティシエ紫様にかかればこんなもんよ!」
いや、おかし作ってんじゃないからパティシエはおかしいだろ。
その間にも二人に盛った焼きそばはすぐになくなってしまった。
「食べたい人ー?」
「「「「「はーい!」」」」」
一斉に手を挙げる冒険者たち。
「よーし、じゃあ一列にならべーい!」
「「「「「はーい!!」」」」」
ふむ、しかし王都育ちの貴族のお坊ちゃまであるクリスがあそこまで褒めるなら、冒険者廃業したらお店を開くのもいいかもな。
多分メニューにラーメンとカレーと牛丼とうどんとやきそばと寿司が並ぶカオスな居酒屋になってそうだが。
「まさかムラサキさんが料理できたなんて・・・絶対できないと思ってたのに・・・」
「あれ、マリーシアさんも知らなかったでしたっけ?普段料理しないってだけで本気出したら俺より上手ですよ。」
「若くてかわいくて胸大きくて強くてヒイロさんという弟がいる上に料理上手とか・・・意味わかんないです。精霊王様、かの者に天の裁きを・・・」
目を閉じ祈りだすマリーシアさん。
「さきねぇー、マリーシアさんさきねぇが作ったやきそばなんていらないってー!」
「生タッコンヌでも食ってろ!」
「言ってません!投げないで!タッコンヌ投げないで!」
やきそばを焼きながらも料理用のタッコンヌを投げつけるさきねぇ。
しかもこっち見てないのに回避しようとしているマリーシアさんに全て当たっている。
千手千眼観世音菩薩か。
「炎天下の下、大勢で食べる美味しい食事もいいですね。欲を言えばもう少し涼しければ最高だったですけど。」
「確かに。俺たちにはこの暑さはきついな。」
「ふっふっふ。この俺に任せたまえ二人とも。この海で一大センセーションを起こしてやろう!」
「「?」」
よくわかってない獣人兄妹。
俺は魔法袋からこの日のためにアルゴスさんと一緒に製作した試作機を取り出す。
「じゃじゃーん!これぞ俺とアルゴスさんが共同開発した夏の定番アイテムの一つ!その名も『KG01』」
「・・・なにこれ?」
「これにですね。俺の魔法で作った氷の塊をガッ!とセットするわけですよ!そして下にはお皿!そしてー!」
KG01のハンドルを回す。
すると。
シャリシャリシャリシャリ・・・
「おお!氷の粒が落ちてくる!」「きれい・・・」
「まだまだぁ!うぉぉぉ!」
ハンドルを回しまくる。
シャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリシャリ!
「これにレア魔物いちごんから採れるいちごんシロップを、かける!ドバーッ!」
大量のいちごんシロップをかける。
しょぼい縁日でよくある、ちょっとしかシロップのかかってないやつなんて俺は許さない!
「完成!ウイヅキ名物、かきごおり!」
「す、すげぇじゃねぇか親友!」「美味しそう・・・!」
周囲の冒険者も俺のかきごおりに釘付けだ。
「どーぞ。」
「い、いただきます。」「はー・・・すげぇなこれ。」
かきごおりとスプーン二個をヴォルフとカチュアさんに渡す。
おっかなびっくり口に入れる二人。
「・・・うまっ!?」「甘くて美味しい!」
「海で食べるかきごおりは格別だからね!」
「くぅぅぅ、生き返るぜぇ!!」「氷なのにふわふわしてます!!」
ヴォルフだけでなく、カチュアさんまでいつも以上にテンションが高い。
「ヒイロくん!俺にもそれくれ!」
「あ、ラウルさんずりー!」「私!私も食べたい!」「俺もそれくれ!」
「あいよー。いっぱいあるから押さないでねー。」
それからはただひたすらに焼きそばを焼くさきねぇとかきごおりを作る俺なのだった。
「さて、お腹もいっぱいになったことだし、そろそろかしらね!」
「いっちゃいますか姉上!?」
飛龍のローブの下でゴソゴソやってるさきねぇ。
そして。
「とぅ!」
「キャー!姉さん素敵ー!」「「「「「ブーーーーーッ!?」」」」」
さきねぇがローブをかっこよく放り投げると、水着に包まれた素敵ボディを惜しげなく晒す。
その姿を見て一斉に吹き出す冒険者たち。
かなり前にも話したが、この世界には水着というものはない(第四十二姉参照)。
薄着ではあるが服を着て水に入るのが常識である。
その常識から照らし合わせれば、さきねぇの格好はもはや痴女の領域であろう。
ほとんどの男が鼻血を噴き出し熱い砂浜に倒れこみ、女性も顔を真っ赤にしてさきねぇをチラ見している。
「ヒロ!青く輝く海に向かってダッシュ!」
「よっしゃー!」
俺もローブと服を脱ぎ、ハーパン姿で海に向かい駆け出す。
「いっちばーん!うおーつめてー!ちょう気持ちいい!ね、さきね・・・」
隣を見ると、一緒に海に飛び込んだはずのさきねぇがいない。
どこだ?
パパパパパパパパパ!
音のするほうを向くと、さきねぇが海面を走っていた。
「なにそれすげぇ!」
「あーはっはっはっは!ムラサキ流忍法!≪右足が沈む前に左足を出して、左足が沈む前に右足を出すの術≫!」
「すげぇぇぇ!さすが俺のお姉さまや!」
「もっと褒めていいわよヒロ!オーッホッ」
ジャボン!
ブクブクブクブク・・・
シーン
「さきねぇぇぇぇぇ!」
高笑いの途中で海に沈んださきねぇを引き揚げる。
「大丈夫!?」
「う、迂闊だったわ。まさか魔力切れで走ってる途中で寝てしまうとは。」
「海面を走ってる途中で居眠りして溺死とか意味わかんないからやめて!?もう今日は奥義も忍法も禁止!危ない!」
「へ~い。」
ザブザブと水を掻き分け、浅いほうへ移動する。
「よーし、くらえ!」バシャ!
「キャ!やったわねー!そりゃ!」バシャ!
「倍返しだー!」バシャバシャ!
「だいかいしょー!」バシャーン!
二人の世界に突入し、お互いに水を掛け合う。楽しいのぅ。
そのまま水を掛け合ったり『捕まえてごらんなさぁい!』ごっこをして海を満喫する。
休憩の為にいったん砂浜に戻ることに。
「ふぅ~。」
砂浜に腰を下ろし周囲を見渡すと、他の冒険者たちも海に浸かりにきているようだ。
もちろん服を着て、だが。
さきねぇと遊ぶのに夢中で全然気がつかなかったぜ。
すると、マリーシアさんを先頭に、数人の女性がこちらに近づいてくる。
「ヒイロさーん!どうですかこの服?似合ってますか?」
「よかったら一緒に遊びませんかー?」
「私も水の掛け合いっことかしてみたですぅ!」
「・・・・・・」
そぉっとさきねぇの顔を覗き込むとイノキ顔になっていた。
そしてズンズンと女性陣に近づく。
「な、なんですかムラサキさん。なんで無言で近づいてくるんですか?なんかアゴが突き出てますけど、え、何!?何されるの私!?」
さきねぇは両手でマリーシアさんの腰をガッ!と掴むと、そのまま頭の上まで持ち上げる。
力持ちですね。さすが俺の姉さんですね。
「ねぇ、まりすけ。ゼロ戦って知ってる?もしくは回天でもいいけど。」
「し、しし知らないですけど、絶対良い感じじゃないですよね!?」
「ウォォォォォォォ!」
「ギャァァァァァァ!助けてヒイロさーん!ヘルプマイプリーンス!」
「怪我しないようにねー。」
マリーシアさんを頭上に掲げたまま、海に向かい猛ダッシュするさきねぇと絶叫するマリーシアさん。
ああ、人間ロケットか・・・悪くても打ち身くらいだろう。
・・・さきねぇ投げた・・・あーマリーシアさんが空飛んでる・・・落ちた。すごい水しぶき。
そして爆笑してるさきねぇと水死体みたいに浮かんでるマリーシアさんとびびってる冒険者たち。
なんかファミコンのく○おくん思い出しちゃったよ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
はい、今回も19章終わりませんでしたね。
というか、かきごおり食べて海で泳いで終わりましたね。
なんなんでしょうねマジで。私バカなんですかね?




