第百五十四姉「でーでん。でーでん。でーでんでーでんでーでんでーでん・・・」
詠唱がテキトーすぎるというド直球な感想をいただきました(笑)
ヒロくんと作者がテキトーだからね。仕方ないね。
最終話を書こうと思い執筆開始。
200文字程度書いたあたりで泣きそうになり、開始数分で執筆中断!
自分の作品好きすぎだろ私!!
俺の結界魔法によってパキパキとコテージ全体が氷に包まれる。
透き通った氷の向こうには何かをギャーギャーわめいているヤローどもと、こちらを向き親指を立てているヴォルフの姿。
俺もグッ!と親指を立て返し、その場を去った。
「終わった?」
「終わったよー。けっこう疲れたけど、まぁ水張るくらいならなんとかなるっしょ。」
「おっつー。ヒロも一緒に入る?」
「はいひっかけー。これで入るー!って言ったら『お姉ちゃん以外の女の裸が見たいの!?』とかいってキレるくせに。」
「ハハハ、こやつめ。わかってるじゃない。」
大浴場にいくと、すでにノエルさんが窪地を作っていてくれた。これに水入れてあっためたら普通に温泉だな。
「大丈夫だったかヒイロ。しかし氷の結界か。やるな。魔法量のほうは大丈夫なのか?」
「ええ、強度はかなり低く創造したんで。あくまで『簡単には外に出れない』と思わせればいいだけですしね。」
「策士ね、ヒロ!」
「ふふふふ、異世界の徐元直と呼んでくれ!」
「なぜ徐庶・・・」
そんな会話をしつつ、風呂場に巨大な≪水球≫をだばだば投げ込む。
さすがにけっこう疲れるな。
なんとか水を張り終えると、ノエルさんが火魔法で一瞬にして温度を適温まで上げる。
文字通り火力がある人はいいなー。俺、いつになったら魔法力Cにあがるんだろ。今度ギルドで計ってみようかな。
ノエルさんが湯に手を入れ、温度の最終確認をとる。
「さて、こんなもんでいいかな。ヒイロ、ご苦労だったな。ゆっくり休むといい。」
「はーい。では皆さん、いいお湯を~。」
初月緋色はクールに去るぜ。
と思ったら。
「・・・ヒイロさんも一緒にはいりません?」
「・・・え?」
何言ってんのマリさん。
「・・・ヒイロくんなら、まぁ別に?」「・・・うん、紳士だしね。」「お姉さん一筋だし。」
「!?」
女性冒険者さんたちからもそんな声が。
なぜか女風呂に入っていい雰囲気になっている、だと・・・!?
どういうことだ何が起こっている!?こういうのはハーレムラブコメ系イケメン主人公だけの特権だったはず!!
いつのまにか俺はパラレルワールドに迷い込んでいたのか!?
「でーでん。」
「!?」
俺が突然の出来事にキョドっていると、さきねぇがある音楽を口ずさむ。
この音楽は・・・
「でーでん。でーでん。でーでんでーでんでーでんでーでん・・・」
「姉シャークがくるぞぉー!」
俺は走って逃げ出したのだった。
結局一人でキャンプ地の門番をやること一時間。
女性陣の入浴も終わったようで男性陣と交代になった。
「はーい、この中に一人裏切り者がいまーす。そーれーはー?」
「「「「「ヒイロくんでーす!」」」」
「うるさいなー。こんな僻地で風呂はいれたんだからそれで許してよ。」
ヤローどもの醜い嫉妬は困るわ。
「つーかそんなんだからあんたらモテないんだよ。」
「お、言ったなヒイロ。んじゃヒイロ先生にモテるための秘訣でも教えてもらおうじゃねぇか。なぁみんな!」
「「「「「さんせいでーす!」」」」
「クッ・・・」
まずい、なんだかんだいって俺も彼女いない暦=年齢!
助けを求めてヴォルフに視線をやる。
「お先~。」
「逃げんなヴォルフぅ!」
「いや、ほら。俺モテねぇからよ。じゃあな!」
クソがぁぁぁ・・・
そうだ、俺には弟子にしてイケメン王子、クリスがいるではないか!
なぜか一人だけバスタオルを巻いて人工温泉に入っているクリスに声をかける。
「クリス、お前が非リア達にモテる秘訣を話してあげなさい。」
「はぁ・・・しかし、何もしなくても男も女も勝手に寄ってくるものでは?」
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
モテ王子クリスの容赦ない言葉に打ちひしがれた俺たちは、その日、涙を堪えながら床につく。
悪気はないんだろうが、ああいうところが友達のいない理由なんだろうなぁ・・・
そしてなぜか『クリスが近くにいるとすげーもにょる』という男が続出し、クリスの貞操が危険だったために俺とクリスとヴォルフで川の字に寝るのだった。
次の日の早朝。
日差しが強いため、女性陣は道の整備へ、男性陣は浜辺で魔物退治という分担になった。
道の整備っていったって、雑草はノエルさんが焼いちゃうだけだからすげー楽そう。
さきねぇはコントロールミスって林が大炎上する可能性があるので魔法は使いません。つーか使わせません。
それに対してこっちは・・・
「あちぃ・・・」
早朝にも関わらず、まるでさきねぇのように空気を読まずにサンサンと降り注ぐ日差しに文句をつけつつ、タッコンヌを始末する俺たち。
とはいえ、俺は唯一の回復要員(兼、製氷機)として後方の木陰で待機しているけど。役得役得。
しかし、タッコンヌの砂砲弾攻撃と暑さにやられたために、次々に≪聖杯水≫を求めて列を作る冒険者たち。
さっさと倒してこいよ!と言いたいが、この暑さだからなぁ・・・
「ヴォルフーだいじょぶー?」
「はぁ、はぁ・・・俺、自分の出自に誇り持ってるけどよ・・・こういう時だけはホントなんで獣人に生まれたんだろうって思うわ・・・」
「この程度で弱音を吐くとは、D級冒険者の風上にもおけんな!」
「俺もD級だけど?」
「お師匠様は別です。」
「ならよし。」
ケモナーレベル2でちょっとふっさりとしているヴォルフは暑さですでにグロッキーだ。
しかもカチュアさんもそばにいないから今にも死にそうになっている。
でも俺もさきねぇと離れ離れの遠距離恋愛中なのを我慢してるんだから、お前も頑張れ!
(注 数百メートルしか離れてません。)
しかし、なんでクリスはこんなに元気なんだろうなぁ・・・意味がわからないよ。
その時。
「う、うわぁーーー!」「なんじゃこりゃぁーーー!」「た、退避ぃーーー!」
タッコンヌを駆逐していた冒険者が大声を上げながらこちらへ逃げ出してくる。
ちっ、なんか出たか。しゃあねぇ、俺の出番のようだな。
体育座りをやめ、よっこいせっと腰を上げ海を見る。
すると。
「・・・でかいな。」「・・・ああ、でかいな。」「・・・すごく、大きいですね。」
海の向こうから上陸しようとしているのは、一軒家くらいの大きさがある巨大なタッコンヌだった。
「なんだよあれ・・・勘弁してくれよめんどくせぇ・・・」
「しかし、あのでかさはやべぇな。」
「確かに。お師匠様、ノエル殿や姉君を援軍として呼んだほうがいいのでは?」
「せやな~・・・ん?」
ちょっと待て。
俺の日本人として、オタクとしてのDNAが警鐘を鳴らしている。
海、美少女、水着、タコ・・・
このワードの連鎖から予想される展開は!!
「・・・ヴォルフ、クリス。援軍はなしだ。俺たちだけであのタコを倒す、いや・・・殺すぞ。」
「・・・俺たちだけでか?」「殺す、ですか・・・?」
俺の体から溢れる強い殺気にちょっとビックリしているヴォルフとクリス。
「いいか、よく聞け。俺の故郷に伝わる書物があるんだが、それに載っている魔物とあのタコが酷似しているんだ。」
「そ、そんなに危険なやつなのか?」
「奴の名は・・・おそらく、エロタッコンヌ!」
「「・・・エロタッコンヌ?」」
うさんくさそうな顔をしているバカヴォルフとバカクリス。
何もわかっちゃいない・・・
「ああ、やつは基本的に攻撃はしてこない。その代わり、美しい女性の水着を剥ぎ取り口に含むのが趣味の驚くほどの変態だ。」
「・・・まさか!?」
「そう、そのまさかだ。もし援軍を呼んだら、やつは確実に美しい女性を襲うだろう。」
「つまり、俺のカチュアを・・・?」
「そう、俺のさきねぇを、俺の尊敬するノエルさんを、お前の妹であるカチュアも。やつに水着を剥ぎ取られ、裸を周囲に晒すことになるだろう。」
マリーシアさんは・・・どうだろう。ギリギリセーフかもしれんが。
「殺ろうぜヒイロ・・・アイツ、ぶっ殺そうぜ・・・!」
「わかってくれたか親友よ・・・!」
「お師匠様がそう言われるのであれば、ボクも喜んで修羅となりましょう!」
体中から殺気を迸らせる俺とヴォルフと、よくわからないながらも気合を充実させるクリス。
こうして、男たちの命と誇りと魂を賭けた聖戦が開戦されるのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
故郷に伝わる書物は葛飾北斎のアレです。
う、薄い本じゃないんだからね!




