第百五十二姉「「海だぁーーーー!!」」
累計100万PV突破となりました。やったね!
ムラサキさんも「さすが私!やはり時代は姉のようね!ぐへへ」とか言ってました。
こういったところが世界から『日本語は無駄に複雑だ』と言われると同時に『日本語ほど風情のある言語はない』と言われる所以である。
超どうでもいい話だった。
というわけで、他の冒険者たちは乗合馬車に乗ってるが、俺、さきねぇ、ノエルさん、ヴォルフ、カチュアさん、スレイ、クリス、そしてなぜかマリーシアさんの八人はノエルさんが借りたクッソ高い大型馬車に乗っている。
クエスト出発の集合場所で『なんかすげーヒイロに悪いな・・・』的な感じのヴォルフたちだったが、俺がノエルさんと一緒にこの高級大型馬車に乗って現れて
「よう、お前ら元気!?この天気、絶好の海開きだな!!」
とテンションアゲアゲで声をかけたら案の定ヴォルフがブチギレてて面白かった。
ごめんねヴォルフ。これもさぷらーいず!ってやつですよ。もしくは、ナーウ!
つーか、よく考えろよ。
さきねぇが俺をハブにしてどっかいくわけないじゃん。常識だろうが。
「つーかよぉ。だったらじゃんけんの作戦会議なんて開く必要なかったんじゃねぇのか?」
「え、だってこの裏技大技林使えるの俺とさきねぇだけじゃん。みんなで行きたかったんだよ、俺は。」
「む・・・」
俺の言葉にちょっと顔を赤くするヴォルフ。
お前は萌えキャラじゃないからデレてもかわいくねーよ?
「いやー涼しいですねー。氷魔法使いのヒイロさん最高でーす。」
「なんでこの女も一緒なんですかお師匠様。」
他人一切お構いなしに馬車の中でTシャツとハーパン姿で寛ぎ、俺の作り出した氷の近くに陣取っているマリーシアさんと、苦々しい顔のクリス。
クリスはマリーシアさんにヤクザキックをかまされて以来、苦手意識があるようだ。
「そういやスレイ。リムルちゃんはよかったの?」
「あーあいつバカなんでこの暑い中風邪ひいたんですよ。放置っすよ放置。」
「・・・あっそ。」
看病イベントとかルート突入に絶対必要なフラグなのに・・・マジでどうでもいい感じだな。
頑張れリムル!幼馴染属性は負け犬属性、なんて言われないように頑張るんだ!
馬車の中で女の子同士で話をしたり、男だけでユビスマをやったり、みんなでトランプをしたりしてまったりと過ごすこと数時間。ついに海辺へたどり着く。
早朝に出発したにも関わらず、お日様は空高く舞い上がりギンギラギンにさりげなく輝いている。
「「海だぁーーーー!!」」
「あ、こら!待たないか二人とも!」
ノエルさんの制止を振り切り、馬車から飛び出し真っ先に駆け出す俺たち姉弟。
一番海はもらったぁー!
あと数歩で海!といったところで、海中に赤いナニカが見えた。
お?珊瑚?
でも動いてるような?
すると。
ポンッ!
「いてぇ!」
何かが俺の体に当たった。
浜辺に転がったものを見ると、固まった泥団子のようなものだった。
「え、なにこれ。どっから?」
海に目をやると、ちょうど大量の魔物が上陸している最中だった。
その姿は・・・
「え、なにこれ。タコ?」
「タコにしてはキモカワイイというかなんというか・・・」
なんというか、リアルなタコではなく『子供が書いたタコ』みたいな、ずいぶんとデフォルメ化したタコもどきがうようよ出現していた。
やけに大きい口から次々にポン!ポン!と泥団子っぽい玉が打ち出される!
「さっきの砲撃の正体はこれか!?」
「ちょっと、すごい数なんですけど!イタッ!イタッ!」
俺とさきねぇはTシャツにショートパンツスタイルのため、普段よりも防御力が著しく低い。
さらに数十匹のタコもどきから放たれる砂の砲弾の前に撤退を余儀なくされた。
「「助けてー!」」
「アホかお前らは!魔物がいるから冒険者を雇ってんだろうが!そんな格好で突っ込むバカがいるか!」
ヴォルフの完全なる正論にグゥの音も出ない!
「敵は小型のタッコンヌが・・・たくさんだ。気合いれてけー。」
「「「「「はい!」」」」」
ノエルさんのやる気のない号令に従い、武装した冒険者が馬車から出撃し、陣形を組みつつ前進する。
か、かっこいい!冒険者かっこいい!
そしてあれがタッコンヌ焼きの原料、タッコンヌ!
「・・・ふぅ。言いたい事は山ほどあるが、とりあえず今はタッコンヌの殲滅が先だ。いいな。」
「「はい・・・」」
海水浴姿の上に飛竜のローブを羽織り、俺たちも(タッコンヌの)砂砲弾が飛び交う戦場に舞い戻ったのだった。
「で。何か言うことは?」
「「ごめんなさい。」」
あれからなんとかタッコンヌの大群を撃退し撤退させることに成功した。
そして、数十人の冒険者の前で正座させられている俺たち姉弟。
浜辺の砂の上なのでやばいくらい熱い。
「いいか?これはあくまでクエストだ。まずはベースキャンプを作る。バリケードを構築し、安全地帯を確保したのち、周囲の探索にうつる。これは基本。冒険者の基本だ。お前たちのさっきの行動は基本を逸脱していたな?その結果、他の冒険者たちを危険に晒した。お前たちが死ぬだけなら単なるバカな冒険者が二人いた、で済む話だ。しかしお前たちのせいで他の冒険者が死んだら一体どう責任をとるつもりなんだ?そもそも~」
「まぁまぁノエル様。二人だって反省してるみたいですし。それに、忘れてらっしゃるかもしれませんけど、二人はまだ冒険者歴一年未満の新人ですよ?俺たちだって特に怪我負ってるやつもいないし、今回はそのへんで許してあげましょうや。」
いつまでもも続くかと思われたノエルさんの愛の説教をラウルさんが止める。
ラ、ラウルさん・・・!単なるセクハラ飲んだくれ親父じゃなかったんですね!
「しかしだな・・・」
「で、でも、ここにいる全員、いつもムラサキさんとヒイロさんに助けられてるっす!」
怯えながらもスレイから援護射撃が。
周りの冒険者たちも『まぁしゃーねぇな』『たまには俺らが助けてやってもいいんじゃね?』『いつもお世話になってるものね』『新人にグダグダ言うのも先輩冒険者としてなさけねぇしな!』と暖かいお言葉が。
くぅぅ、みんなの優しさが目に染みる。ちょっと泣きそう。
「・・・はぁ。全く、甘い冒険者たちもいたもんだ。昔だったらつるし上げた上で目隠し投げナイフの的だったものだが。」
今の時代でよかった。
浜辺から少し離れたところにベースキャンプを作ることになった。
のだが・・・
「≪大地砦≫!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
ノエルさんのスーパー土魔法により大地がせり上がり、たった数分で四方を強固な土壁で覆われたキャンプ地、というか小規模な砦が作られる。
墨俣一夜城もびっくりですね。
「さて、あとはこの砦内に大部屋をいつくか作ればいいかな。」
「あ、お手伝いしますノエルさん。」
ノエルさんが巨大なコンテナボックスのような大部屋を土で作り、その中に俺が魔法で氷柱を作り出す。
十数分でひんやりとした快適部屋が四つ作られた。
「みなさん、どうぞー。」
若干ひき気味に砦の中に入る冒険者たち。
「きょ、居住スペースがもうできてるぞ・・・」
「つーかすげぇ涼しい!なんで!?」
「こ、氷の柱だ!中に氷の柱が立ってる!」
「こんな快適な特別クエスト初めてだな・・・」
冒険者たちも興奮気味だ。
こんなもんで名誉挽回できたかしら?
「よし、日が暮れる前に見張りや食事番などを決めるように。部屋は男部屋が二つ、女部屋が一つ、多目的部屋が一つとなっている。馬車は馬ごと奥に入れれば良い。各自荷物を置いたのち、準備にかかれ。」
「「「「「はい!」」」」」
ノエルさんの号令で一斉に動き出す冒険者たち。
こうやって見ると、ノエルさんすげーな。貫禄が半端ない。パないの!
5名ずつのチームをいくつか作り、見張りや料理、火の番などを決めていく。
ちなみに俺とさきねぇとノエルさんは別枠だ。
そもそも俺とノエルさんは特別クエスト受注組じゃないしね。
さきねぇも当初は他の人たちとチームを組む予定だったのだが、どのチームからも『ムラサキさんを制御する自信がない』と言われ、結局いつもの仲良しノエル一家チームになった。
最近俺のことを『ノエル様とムラサキさんを巧みに操る猛獣使い』みたいに呼ぶ人がいるが、あながち間違っているわけでもないのが怖いぜ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
今回は珍しく初月姉弟が敵の物量作戦により敗北。
と思ってたらクマさんだったりラムサスさんだったり四天王の風の人だったり、ムラサキさんけっこう負けてた!びっくり!




